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いざというときの接近戦闘術


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:三好 健(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
「オイッ、コラッ! 動くんじゃねえぞ!!」
「……す、すいません。ごめんなさい」
「か、金だ。はあ、はあ……。金を出せば逃がしてやる」
 
呼吸が荒い。
僕の呼吸も。あいつの呼吸もだ。
 
僕を脅すあいつの声は、荒い呼吸をなんとか抑えようとしながらも、抑えきれない酸素への欲求が、勝っているようだった。
 
ゴリ……
僕の背中に、固い何かが当たった。
さっきあいつが手に持っていた、黒い武器だろう。
 
僕の額から汗が流れ、眉を超えて目に入った。一瞬視界が曇る。
ギュッと目を少しの間だけと閉じ、また開いた。
 
念のため言っておくが、これはフィクションではない。
 
「歩け」
背後から聞こえるあいつの声は、少しずつ落ち着いてきているようだった。
 
僕のシャツは汗で濡れている。気のせいか、シャツがとても重く感じた。
僕自身の呼吸も、整いつつある。
 
僕は歩かない。
 
……で、こういうときは、どうすりゃいいんだっけか。
疲労で回らない脳みそを、なんとか無理矢理回そうとする。
こういうときの対処法を、僕は知っている。
 
僕は、イスラエル式接近戦闘術を学んだことがあるのだ。
その名は「クラヴマガ」。
 
学んだきっかけは、夜勤明けのハイテンションかつ低思考能力から生み出された華麗なるノリだった。
 
まだまだ身体に無理の利いた20代の若かりし頃、僕はIT系の仕事をしていて、夜間の作業も頻繁にあった。
夜勤明けとは不思議なもので、異常な食欲と、よく分からない性欲と、何でも買えちゃう物欲が入り交じり、このまま永遠に起きていられるんじゃねーの、というほどのハイテンションを維持しながら、コンビニでしこたま買い込んだ弁当やら菓子パンやら炭酸飲料という即脂肪に変換されるメニューを大量に胃袋へ流し込みつつ、テレビで映画を見ていた。
 
その映画は「イナフ」。
 
ストーリーを要約すると、ジェニファー・ロペスが演じる主人公が、DVを繰り返すマジ胸クソ悪い旦那をボコボコにする、というお話である。
 
蛇のようにしつこく、凶悪なクソ旦那から当初は逃げ続けていた、めちゃくちゃ美人なジェニファー・ロペス。しかし、このままでは現状を打破できないと悟り、僕のジェニファーは(あ、僕のではなかった)は、格闘術の師匠に戦い方を学ぶのである。ここで学んだのが、クラヴマガなのだ。
 
戦うジェニファー・ロペスに一目惚れをした僕は、クラヴマガとはなんぞや、を知るためにネット検索。
すると、なんとクラヴマガを教えてくれるジムがあった!
これも何かの縁であろう。即、見学の予約をした。別にジェニファー・ロペスに会えるわけでもないのに。なんという行動力! 夜勤明けって怖い。
 
ところで、クラヴマガとはどういった格闘術であり、護身術なのか。
世にある多くの護身術と比較したときに、クラヴマガの特徴を挙げるとしたら、これにつきる。
 
「明日襲われるかもしれない人が生き延びるための護身術」
 
普通の護身術、たとえば空手にしろ合気道にしろ、日々の鍛錬が物を言うのであり、一朝一夕には身につかない。それが面白みでもあるのだろうけれど。
でも、「明日襲われるかも」という人に、「10年学べば強くなるよ!」は遅すぎるのである。
 
身近に争いがあったイスラエルという環境ゆえに生み出された、戦闘術であり、護身術なのだ。
今日教わったことにより明日を生き延びる可能性が高められる、そのくらい即効性がある。
 
ではなぜ、即効性があるのか。
 
想像して欲しい。
あなたは夜道を歩いていた。街灯はあれども、ほぼ真っ暗である。しかも、そのときあなたは耳にはイヤホンをしていて、聴覚はシャットダウンされていた。周りの気配も感じることはできない。
そのとき唐突に、背後から首を絞められた!
……そんなとき、人はどういった行動を取るか。
 
反射的に、首に手をやるだろう。
手で締められているのか、紐でやられているのか、問わず。まずは反射的に手を首にやるはずだ。
 
スポーツに疎い人間であっても、必ず「反射」はある。
この「反射的に」というのがクラヴマガの特徴なのである。
反射的に首に手をやった、その後からどうするか、そこから先をクラヴマガでは学ぶことができる。
 
しかし、クラヴマガで教わる一番重要なこと。
それは、逃げること。
 
謝って済むのであれば、あやまれ。
金を払って済むのであれば、金を払え。
 
……そう教わる。
 
そして次に、こうも教わる。
どこかに連れて行かれそうになったら、付いて行ってはいけない。今その瞬間よりも、状況が良くなることはあり得ない。
 
人気のいないところ、車の中、部屋の中。いずれにせよ、相手に従い状況が好転することは奇跡に等しい。
 
「歩け」
僕の背後のあいつにこう言われても、ついて行ってはいけない。
 
今置かれている状況は、こうだ。
僕は直立している。相手は背後にいる。相手は銃を持って、僕の背中に押しつけている。
 
「ポケットに財布があります」と僕。
「いいから歩け!」
 
僕は右足を軸に、上半身ごと身体を背後、つまり相手の方に回転させつつ、左腕の前腕で背後の銃の銃口を、自分の身体から外す。銃口から銃の弾が向かう線を「ファイアライン」という。そのラインが自分の身体に掛からないように銃をずらす。
そのまま、自分の左腕で、相手が銃を持っている右腕を抱え込み、自分の右手で相手の服の襟をつかみ、右の前腕で相手の鎖骨のあたりを押し、距離を維持する。
腰は低く、右足の甲で相手の股間を蹴り上げる。堅い感触があった。
次は右の膝を、相手の腹部にたたき込む。
相手が怯んだ隙に銃を奪い、僕は奪った銃の銃口を相手に向けた。
呼吸が荒くなる。
 
「はい、じゃあ交代!」インストラクターの声だ。
 
僕はあいつと目配せしながら、握手をした。お互い、呼吸が荒い。
そしてゆっくりと、あいつが僕に背中を向けた。
僕は、赤いテープの貼ってある銃口を、あいつにむけた。
 
赤いテープは、それが本物の銃ではないことを意味している。
 
「ぶっ殺すぞ! コラ!!」と僕。
 
 
 
 
***
 
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2022-11-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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