メディアグランプリ

ガラにもなく流行りの漫画を読んだら、冷たい水が手のひらを流れる感動を知った話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:丸(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
トレンドに鈍い人生を送ってきた。
 
漫画とかアニメとか、誰かから「これすごくオススメ!」と教えてもらうと「ふーん、チェックしてみようかな」という気に一瞬はなるが、家に帰るとすぐに忘れてしまう。
 
そもそも「流行ってるから」という理由で追いかけること自体、なんとなく抵抗がある。
どちらかというと、まだ無名なものを見つけて、後から古参ぶりたい。
ましてや課金が必要となると、なおさらハードルが高くなってしまう。
 
そんな流行遅れ・硬派気取り・ケチの三拍子がそろった私だが、最近珍しく興味を持って追いかけている流行りの漫画がある。
 
あらすじはこんな感じだ。
 
主人公はかつてイケイケのヤンキーだったが今はさえない毎日を送る26歳。
彼は中学時代の元カノ(そして人生で唯一の彼女)が暴力団の抗争に巻き込まれて亡くなったことを知り、やりきれない気持ちになる。すると、ひょんなことから12年前、つまり中学2年生の自分にタイムリープ! このときはまだ中学生だった暴力団幹部に接触を図り、彼女の運命を変えようと頑張る。
 
不良系漫画にサスペンス要素が加わったちょっと目新しいジャンル。
そう、『東京卍リベンジャーズ』である。
 
物語のカギをにぎるのは、12年前の渋谷でブイブイ言わせている暴走族「東京卍会」。
そして、カリスマ総長である金髪オールバック少年、マイキーだ。
 
マイキーは圧倒的にケンカが強い。強すぎてもはや“核弾頭”と称される蹴りが特技で、 “無敵のマイキー”として恐れられている。
 
「パーのダチやられてんのに、こんなかにヒヨってる奴いる?」
「いねえよなぁ!!?」
というマイキーのあおり文句はとても有名である。
「明日仕事なのにヒヨってる奴いる?」といった使い方がSNSでバズったからだ。
 
私がこの漫画を手に取ったきっかけは、お笑いから始まった。
 
コント番組で芸人たちが特攻服を身にまとい、「○○なのに、ヒヨってる奴いる?」と大喜利を始める。
トーク番組で、明石家さんまがマイキーの格好をして登場する。
音楽バラエティ番組の生演奏で、コスプレダンサーがアニメ主題歌(髭男)を踊り、良い曲であることを知る。
 
極めつけは、Instagramの美容師アカウントが、黒髪ショートの女性の写真と一緒に「#闇落ちマイキー とのオーダーいただきました!」と投稿しまくる。
 
そんな風に、各種メディアでさまざまなマイキーに遭遇するうちに、だんだんと「マイキーってどんな人なんだろう」「『東京卍リベンジャーズ』ってどういう話なんだろう」という気持ちがふくらんでいった。
 
自分の視界に繰り返し入ってくるマイキーを、これ以上無視できない。
重い重い腰をあげ、ついに私は漫画を手に取った。
 
 
 
 
 
そしてハマった。
最初は試し読み1巻から始めたところ、どうしても続きが気になって少しずつ、少しずつ……と購入していったら連載に追いつき、気がついたら毎週水曜0時はマガジン掲載誌をアプリでチェックするまでになっていた。
 
一体何が私にそうさせたのか?
考えてみると、理由は主に3つあると思う。
 
①マイキーのカリスマ性
 
まず、言うまでもなくマイキーの魅力である。
喧嘩が強くて天真爛漫な顔の良い少年(なお映画版では吉沢亮が演じた)、好きにならずにはいられない。
 
主人公と友達になってからは、授業中に他校からやってきてズカズカと教室に入り込み、「遊ぼうよ♡」と笑顔で連れ出す。
あぁ、私の学生時代にも、こんな風に日常とか当たり前をぶっ壊してくれる圧倒的な存在が欲しかった。
 
一方で、マイキーには暗い運命がつきまとう。主人公がなんとか悲劇を防いだはずの未来で、マイキーの瞳は光を失い、どんどんやつれていく。行く末が気になって、というかマイキーのことがただ心配で、ひたすら読み進めてしまう。
 
②主人公とその彼女が一途
 
主人公が何度過去をやり直しても、彼女は未来で命を奪われてしまう。
ヘタレで喧嘩の弱い主人公は毎回絶望しながら、涙を拭いて立ち上がり、自分よりもはるかに強い相手に立ち向かっていく。
彼女はタイムリープのことは知らないものの、主人公の必死な姿に何かを感じ、自分なりに主人公を守ろうとする。
 
主人公の弱さと強さ。ふたりが思い合う気持ちの強さ。
このふたりの結末を見届けなければと、そう思わずにはいられない。
 
③それ以外のみんなも一途
 
ところで、この『東京卍リベンジャーズ』。
主人公は過去と未来を行き来するので、「過去であんなことしていたあいつが、未来ではあんなことに……!?」という劇的ビフォーアフターを何パターンも見られる。
 
そして悲しいことに物騒な漫画なので(サスペンス×不良漫画の宿命である)、抗争の果てに命を落とす登場人物もいる。「死に別れ」を経験する登場人物が後を立たない。
 
敵も味方も、絆がある。
物語が進もうと、彼らは変わらず仲間の死を悼み続ける。
 
尊敬する先輩を失った後輩は、12年後も亡き先輩の影を追いかける。
主人公の活躍で未来が大きく変わっても、気持ちはまったく変わらない。
それは髪型に、職業に、生き方に、さまざまな形で表れていく。
 
そのひたむきさに、私は目をそらすことができないのだ。
 
……?
 
ちょっと待って。
ここで、自分の中のセンサーが反応した。
 
こういうことって昔あったよな。
 
そうだ、これってあの人に似てないか?
 
小学生の頃にこっそり兄のゲーム機を借りて遊んだ野球ゲームのヒロイン。主人公が他の女性と結婚した挙句、崖から転落して死んだ後もヒロインはまだ主人公のことが好きで、ため息をつきながら墓参りするシーン見て私も好きになったんだよな。
 
 
ということを考えていたら、頭の中で声が響いた。
 
 
「私と先生、まさか前世でも一緒だったってこと!?」
「前世だと? ハッ、聞いて呆れるわ。お前ら平安の昔から、何回夫婦になれば気がすむのだ!」
 
 
それは、何年か前に見た映画。
主人公とその妻が、前世どころか前々世、前々々世、その前も毎回夫婦だったことを恋敵から暴露され、悪態をつかれる場面である。「そんなこと言われてみてぇ〜」と心底うらやましく思ったのだ。
 
これ、全部同じだわ。
 
何度生まれ変わっても、もう一度君に会いたい。
どんな世界線でも、やっぱり君を愛してしまう。
 
的なことが私、好きなんだ。
 
今世では結ばれないとわかっても、やっぱり気持ちは変わらない。
運命を超越した永遠の愛的なものが、大好物なんだ……!
 
硬派を気取っていた私にとって、それはヘレン・ケラーが初めて水を認識して「Water!」と叫んだときくらいの驚きだった。
 
昔好きだったゲームも漫画も映画も、全部バラバラの「点」として存在していた。
共通項を見出せるとは思っていなかったし、そもそも見出そうという発想もなかった。
「この作品のこの部分がツボ」。
そんな好みは、一見ランダムなものの寄せ集めに見えて、「線」でつながっていたのだ。
 
まさかサスペンス系ヤンキー漫画を読んでいて、自分の萌えポイントに気づくとは思わなかった。
 
流行りのコンテンツを追ってみたら、自分の理想や好みの解像度が高まった。
そういう経験ってありますか?
 
漫画『東京卍リベンジャーズ』は、11月16日に完結を予定している。
既刊30巻。
もしかすると、読めばあなたの好みの解像度も高まるかもしれない。おすすめです。
 
 
 
 
***
 
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2022-11-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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