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強制言葉を提案言葉に変えるだけで心が楽になる


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:宇野惠美子(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
「自分で決めたことなのだから、最後まで責任もって頑張って続けないとダメよ!」
 
これは、むかし中学1年生だったわたしに母が言ったセリフです。
 
当時、イヤイヤ剣道を続けていたわたしは、「もう剣道辞めたい、剣道部を退部したい」と母に告げました。答えはNO! 理由も聞かずにNO! そもそも、剣道部への入部を決めたのは自分ではなく、親に強制的に決められたようなものでした。
 
幼いころのわたしは、消極的で自分の意見を言えないとても暗く大人しい性格でした。母はそんなわたしを変えようと、わたしが小学3年生の時に、近所にある剣道場へ強制的に連れていき、「今日からお願いします」と、わたしの意思を確かめることなくそう決めたのです。当時のわたしは母に何も言えず、母の思いの通りに剣道を習うことになってしまいました。
 
正直剣道は、好きではありませんでした。とてもハードな練習と、厳しい先生と先輩たちにおびえてばかりでした。いつも「声が小さい!」「気合が足りない!」「もっとかかって来い!」などと怒られてばかりでした。それでも母に反抗しないわたしは、イヤイヤではありましたが、小学校を卒業するまで剣道場に通い続けました。
 
本当はバスケットボールをしたかったわたしは、中学に入り、バスケットボール部に入りたいと母に伝えました。けれど、結局わたしは剣道部に入っていました。母に「高校生になったらやめていいから、中学の間だけは剣道を続けなさい! せっかくずっと続けてきたのだから、せめて初段は取りなさい!」と言われたからです。
 
けれど、中学1年生、思春期の子どもにとって、親の言うことを素直に聞き親の言いなりになるなんて、そう簡単にできることではありません。入部して数か月後、わたしは勇気をだして母に言いました。
 
「もう剣道辞めたい、剣道部を退部したい」
 
けれど、速攻却下され、冒頭のセリフを言われました。そして、イヤイヤ剣道は中学を卒業するまで続きました。
 
そして、長い年月が経ち、わたしは中学1年生の子どもを持つ母親になりました。
 
息子の部活選びは単純で、「友だちの〇〇君、卓球部に入るんだって! だからボクも卓球部に入る!」と、卓球の「た」の字も知らず入部を決めました。他の部を見学せず、練習内容などを考慮せず安易に決めた部活。
そして、始まってすぐに判明したことは、
 
新任の顧問は、前学校の卓球部を市内一の強豪に育て上げたとても厳しい敏腕先生ということ。
土日祝祭日関係なく、部活があるということ。
練習時間の30分前には練習場に到着していないと遅刻扱いされて怒られるということ。
 
卓球に興味もなく、特に好きでもなく始めたものだから、ハードで厳しい練習に音を上げたようで、ある日、帰宅するなり「もう卓球辞めたい、退部したい」と曇った表情で言いだしました。
 
それを聞いて、わたしが言った言葉は、「自分で決めたことなのだから、最後まで責任もって頑張って続けないとダメよ!」でした。
 
言った後、『あれ、これって……』と、過去に母に言われたセリフを思い出しました。
 
『わたし、母と同じことを言っている』
 
中学生のわたしは、その言葉を母に言われてすごくイヤだったのに、それと同じことを息子に言っていたのです。
なんとも不思議な感覚でした。親に言われたイヤな言葉を子どもに言ってしまっている自分。
 
『自分で決めたからには最後までやり抜かねば!』
『自分との約束を破るな!』
 
と息子に言いたかったけれど、過去の自分に言うようで、なんだか気が引けてしまいました。もし中学1年生のわたしがこれらの言葉を言われたら、きっとムカつき腹を立てるだろうと思ったからです。
 
最後までやり抜く力や、約束を果たすということは大切なことですが、けれど、それって、考え方によっては相手を苦しめてしまうセリフになってしまうかも知れません。捉え方によっては、追い込んでしまう言葉かもしれません。そう思ったわたしは、別の言葉を必死で考えました。
 
『人生は選択の連続、いつでもどのタイミングでも選択し直していいのではないか』
『1回の決断で、もうそこから逃れられないっていうのはとても重くしんどいことではないのか』
 
まるで、中学生の頃の部活を辞めたい自分を肯定し、擁護するかのようなセリフが頭に浮かんできました。そして、いきなり否定で始めるのではなく、理由や意見を聞いて提案してみようと考えました。
 
否定と強制言葉は、相手を苦しめてしまうネガティブワードです。
心を軽くする言葉選びとして大切なことは、
「それはダメ!」と突き返すのではなく、「そうか」と受けとめること。
「こうしなさい!」と強制言葉ではなく、「こうしてみたら」と提案言葉で返すこと。
 
そして、息子にこう声を掛けました。
 
「毎日しんどいのに頑張って練習して、すごいね! 例えば、習い事があるときは早退したら? あと、日曜日は家族で過ごしたいから休んだら!」
 
すると、予期していなかった意外な言葉に一瞬『あれ?』というような表情を見せ、「あ~、そうやね! それで頑張ってみる!」と、安心したかのような晴れやかな表情で、前向きな返事を引き出すことができました。
 
根性論や、歯を食いしばって血のにじむ努力をすることも大切ですが、人によっては、ゆる~く楽しめる程度で、自分の調子で歩んでいくのも必要なことではないかと思います。
やる気を無理やり引き出そうとするのではなく、やってみてもいいかと軽やかな気持ちにさせて、フットワーク軽く取り組ませることも、時期や場合によってはいいのではないかと思います。
 
今でも息子は卓球部に所属し、自分のペースで練習に取り組んでいます。選手候補ではありません。試合では負けてばかり。先生には目をかけてもらえていません。けれど、辞めることなく活き活きと部活に参加し、毎日「ただいま!」と明るく元気よく帰ってきています。
日曜日は休んでもイイよと言ったにも関わらず、今では練習2時間前に友達と試合するからと朝早くから練習に出かけています。
 
自分で納得し、自分との折り合いをつけ、自分の加減で、上手く自分と付き合えているようです。
 
もしもあの時、母が、剣道を辞めたいと訴えた中学1年生のわたしの気持ちを受け止めて、提案言葉をかけてくれていたら、イヤイヤ、渋々、毎日気が重かった3年間の剣道生活を少し前向きに捉えられたのではないかと思います。そして、剣道を嫌いなスポーツに分類せずに済んだかもしれません。
 
もし、あなたの周りの誰かが何かを辞めたいと言い出したら、その思いをダメだと否定せず肯定し、強制せず、こうしてみようかと提案してあげてください。晴れ顔になれる方法を選んで、心を楽にしてあげてください。
 
 
 
 
***
 
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2022-11-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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