外国で爆弾テロに直面した私を、ツイッターが救った
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記事:大橋秀喜(ライティング・ゼミ 10月コース)
「ツイッターがなかったら、アウトだったかもね」
短期留学で訪れたタイの首都・バンコク。私たちはあの日、ツイッターで流れてきた情報をもし見ていなかったら、近くで起きた「爆弾テロ」に巻き込まれていたかもしれない。
2015年8月17日夜。私は日本人の同級生数人と一緒に、バンコクの市街地にいた。そこは、パトカーと救急車が街を埋め尽くす異様な光景。当時大学3年だった私に、ピンチは突然訪れた。実は、目の前のその異様な光景は、爆弾テロの現場だった。しかし、私たちは聞こえてくるタイ語の言葉が分からないため、「目の前で何かが起きているが、爆弾テロだということに気づかない」という危険な状況だった。そんな私たちを救ったのは、日本の知人によるツイッターの「リツイート」だった。
タイへの短期留学は、私にとって初の海外渡航。通っていた大学は短期留学にかなり力を入れていて、十数人のグループで留学して、現地学生と交流できる短期留学プログラムが用意されていた。タイ・香港・マレーシアの3カ国から選ぶことができ、私は「タイ」を選んだ。現地での授業は「英語」を使うので、「タイ語」が分からなくても大丈夫、というかなりハードルの低いプログラムだった。
留学2日目、8月17日の夜。私を含む5人で、バンコクの繁華街でムエタイを観戦していた時の出来事だった。なんだか、すぐ近くの道路が騒がしくなったことに気づく。大声で何かを叫んでいる人もいる。パトカーや救急車の数がやたらと増えていき、サイレンがいつまでも鳴り続ける。どうしたのか。しかしバンコクでは、日中もサイレンがいつも鳴っていたことを思い出す。私たちのグループは海外経験が少ない学生が多く、「こういう、サイレンがうるさい状況って海外では普通なのかも・・・?」という、ぼんやりした結論に至ってしまった。この状況がピンチを招いた。
そんな時、同級生の男A君が何気なくツイッターを開く。
「バンコク繁華街で爆発 テロとの見方も」
A君の知人B君が、報道機関のこの速報記事をリツイートしていた。「テロ」という二文字に、体がぞわっとする。嫌な予感がした。爆発音は聞こえていなかったのだが、記事を読むと、爆発が発生した場所は、私たちがいるこの場所のすぐ近くだと分かった。つまり、先ほどからパトカーや救急車のサイレンがうるさかった理由は、目の前で起きていた騒がしい出来事が、おそらく「テロ」だからだ。A君は、今まで聞いたことのないような声を出して、私たちにスマホの画面を見せてきた。「テロ」という言葉はテレビのニュースや、教科書だけの話だと思っていたが、今ここで現実として直面してしまった。
「とにかく逃げよう」「どこに?」「こんなことありえる?」「みんな、落ち着こう」
慌てる人がいて、それを落ち着かせる人がいた。集団で行動していたことが私たちにとって救いだった。みんなが不安になる中、私たち学生を取りまとめる大学の職員から連絡が来た。「まだ何か起きるかもしれない。すぐにそこを離れてください」という指示だった。そこからは私もパニックになっていて、職員の指示通りに帰ることができたが、どうやって移動したか、などの出来事をあまり覚えていない。
現場は観光名所だったため、外国人を含む不特定多数の人々を狙った事件かもしれない、との見方があった。そのため留学中の移動は公共交通機関を使わず、原則「車」での移動になった。パニックになった同級生たちの心も次第に落ち着き、短期留学は無事に続いた。
「ツイッターがなかったら、アウトだったかもね」
事件から数日経って、A君は私にそう言った。確かにそうだ。もしもあの日、何も知らずにあの現場に近づいてしまえば、さらなる別の爆発に巻き込まれた可能性がある。
この爆弾テロの体験は、ただ「すごく怖かった」という話ではない。
私にとっては、非常時に情報を「届けること」の大切さを痛感した出来事だった。
実は、A君の知人であるB君が、爆弾テロの速報記事をリツイートしたのは、A君のことを心配していたからだったらしい。つまり、B君の思いやりが、私やA君、そのほかの同級生みんなを救うきっかけになったのだ。本当にピンチの時、私たちの命を守ってくれたのは、大きな避難所とか、最強の防弾チョッキとか、ヘルメットなどではなかった。手のひらにある、ほんの小さな「スマホ」に届いたリツイートの情報だった。
危険なことに巻き込まれた時、その場で正確な情報をつかむか、逃すか。これがその後の運命を左右することがある。例えば東日本大震災や、さまざまな豪雨災害を思い出してみても、非常時の情報収集がカギになる。だからこそ今、どこに逃げればいいのか、今すぐどんな行動をすればいいのか、という情報を即座につかんで行動する必要がある。
非常事態に巻き込まれた大切な人を、守りたい。
そんな時には、どうか、私がタイで体験したこの話を思い出してほしい。あなた自身が、大切な人へ情報を届けることで、その人を救える場合がある。例えばLINEで「大丈夫?」という言葉を届けてあげることも大事だ。そして次はあなたの思いやりによって、誰かを救うことができれば、と願う。
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