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最期をデザインする人求む


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記事:まるける(ライティング実践教室)
 
 
「ぶっちゃけ、死ぬのはそんなに怖くないでしょ?」
「うん、そうなのよ」
祖父も祖母も、驚くほど清々しい顔でそう答えました。
 
先日、祖父母の実家に帰省しました。
地方に暮らす祖父母とはコロナ禍の影響もあり3年ぶりの直接対面でした。
その間に世間では東京オリンピックがあり、家族内では従姉妹に子供ができました。
祖父母としては「五輪を2度見るまで」や「曾孫が生まれるまで」と言った目標が達成でき、
人生の中でやり残したことはもうほとんどない様子でした。
 
そんな時に、医師として3年前から働き始めた私が帰省しました。
ここぞとばかりに始まった「膝が痛い」「血圧が高い」といった健康相談のついでに、
冒頭のような質問をしたので、この答えにはあまり驚きませんでした。
 
しかしその後、いつもは気丈な祖父がポツリと続けた言葉は意外でした。
「いずれは死ぬという覚悟をもっていても、いざ急な危険が迫ったら逃げたくなるのかもな」
この答えを聞いて、私はハッとしました。
 
祖父母は2人とも80代を過ぎていますがとても元気で、地元でヨガの教室を開いているほどです。
10年程前から尊厳死に興味を持って、安楽死は難しくても積極的な治療は望まないと兼ねてより家族に伝えていました。
それでも、最期の時間を想像すると苦しみや痛みに対する恐さが必要以上に大きくなってしまうのだと、
医療者として働く間に麻痺していた当たり前の感覚に気付かされました。
 
 
医師として働いていると、あまり死を悲観していないお年寄りが意外と多い気がします。
しかし、「どう死ぬか?」を自分ごととして考えたり家族と話し合う機会はやはり少ないです。
遠からぬ死を意識することは多いはずですが、家族は話したがらなかったり、そもそも死について話す機会が日常で少ないからだと思います。
冒頭ほどのストレートな質問ではないですが、入院する時に本人に急変時の救命治療希望を聞くと、
「もう苦しいことはしないでほしい」
と、積極的な治療は望まないお年寄りもある程度いる印象です。
 
一方で、本人が認知症や重症の病気で意思表示をできない時、治療方針は大抵家族に委ねられる。
自分ではない親や家族の方針となると、心理的負担がとても大きくなるのは想像に難くない。
入院とは体調を良くすることを目指して行うが、中にはよくならない方もいる。
救命行為や根本的な病気を治すという意味での、積極的な治療をしないという選択が
本人の意思を確認できない中ではとても重い選択になってしまう。
疼痛や呼吸困難といった苦しみを取り除くことも医療的に重要な治療と説明はするが、
一般的な感覚として「何も治療していない」と感じしまうのも無理はないだろう。
 
誰しも最期の時は来ます。
しかし多くの場合、死は突然はやってきません。
病気や障害が重なり、徐々に身体が弱っていく中で意思表示も難しくなることも多いでしょう。
今の日本では、健康寿命と平均寿命の差が10年もあります。
だからこそ、人生の最終段階でどのように過ごすか繰り返し話し合っていくことが大切です。
その考え方から生まれたものがACP(advanced care planning)です。
日本では「人生会議」という愛称がつけられました。
人は死ぬ前に人生の走馬灯を見ると言われますが、決して本人だけではありません。
その人の最期に関わる人達みんなが人生を振り返り、「その人らしい最期」を考えるからです。
私も医師として最期に関わりますが、人生の大先輩の走馬灯を本人や家族と振り返りなが最期を考える時間は
まさに人生の集大成の会議だと感じます。
 
だからこそ、最期の時間は美しくあってほしい。
医師としてその時間に関われることにとても誇りを感じますが、
実際は本人の意思を確認できなかったり、家族の中でも認識が違ったり、一筋縄ではいきません。
医師として道筋を提案することもありますが、拭いきれない違和感があります。
 
彩豊かなはずの人生の最期の時間が、少数の専門職と家族だけでモノトーンで語られてしまう。
本人も家族も悩んでしまう最期の時間を、一緒に悩める人はきっともっと居ていいはず。
それは長年の親友だったり、地元で良く話すお節介さんだったりするかもしれない。
思い残した話を聞いてくれるお坊さんや、大切な写真を編集するデザイナーが欲しい人もいるでしょう。
祖父母との会話を経て、働きながら感じていたモヤモヤが、アイデアに変わりました。
 
人生の大先輩たちの最期の時間。
本人や家族、その人を知る人達と人生を振り返り、
その人らしい人生の文脈で最期の時間に彩りを添える。
そんな仕事、すぐには創れないかもしれないけれど、
最期の時間を考える時はもっと色んな人に相談してみたら世界は少し良くなるかもしれません。
 
 
 
 
***
 
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