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ドタバタ出産体験 ㏌ アメリカ


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:林ゆり(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
「先生、出産するときは何泊入院しますか?」
 
「基本的には2泊だよ。あと、今は出産の立ち会いが旦那さんだけ、入院中は家族と面会禁止だからね。急に陣痛がきた時に上の息子さんを誰に預けるか事前に決めておいてね」
 
長男を日本で出産した時は産後5泊で退院した。それでも体的に全然回復していなかったし、24時間いつでも相談にのってくれる助産師さんたちと離れるのが心配だったし、5泊でも足りないと思っていたのに、2泊しか入院できないなんて大丈夫だろうか。しかも今回は2人目だから状況がさらに異なる。
 
「上の子と2泊も離れたことないから、パパに頑張ってもらわないと……」
 
「そういうことなら、コロナで制度が変わったから産後24時間で退院することもできるよ。そっちのほうがよければ教えてね」
 
「……!? わかりました。夫と相談してみます」
 
アメリカで現地の病院で出産すると決めてから、通院中日本とアメリカの違いを感じることは何度かあった。
長男のときはひとりの担当医に妊娠中から出産まで診てもらっていたが、こちらは通常の診察も出産の時も、3人の先生がローテーションでみているため、出産当日どの先生にあたるか分からなかった。
日本では通院するたびにエコーで赤ちゃんの姿を確認して、大体のサイズを毎回教えてもらえたが、こちらは赤ちゃんのエコーは通っているクリニックとは別に、超音波技師がいる総合病院を予約していかないといけないので、通常の診察では心音を確認するのみだった。
他にも、日本にでは出生前診断はオプショナルで、胎児自身の遺伝子を検査するが、こちらは胎児だけでなく父親と母親の遺伝子検査も行い、今まで知らなかった自分の遺伝子に関する説明を受けるなど、いろいろと長男のときと違いはあったが、受け入れられる程度の違いだった。
 
しかし、産後24時間での退院オプションがあると満面の笑みで説明された時はさすがに衝撃的だった。出産で受ける体へのダメージは交通事故並みというのに、24時間で退院できる人なんているのだろうか。後日友人にこの話をしたら、元々助産師をやってた妊婦さんで1日で退院した知り合いがいると聞いて納得した。
夫には相談するまでもなく、私は2泊を選んだが、それでも2泊で退院しなければいけないことに不安を感じていた。
 
息子を誰に預けるか問題は、予定日の3日前から住み込みで義母が手伝いにきてくれることになったのと、義母が来る前に陣痛がきた時は家族ぐるみで親しくしてもらっている日本人のお友達に預けさせてもらうお願いをして、準備を進めた。
 
予定日が近づくにつれてソワソワしながら過ごしていたが、無事に義母が到着し、予定日2日超過の日曜日の朝から陣痛が始まり、午後3時頃陣痛の間隔が10分おきになったところで先生に電話をして、息子を義母に託して夫と病院に向かった。
 
出産用の部屋で着替えを済ませ、ベッドで数分おきにやってくる陣痛の痛みに耐えているときに、助産師さんが質問票を持ってやってきた。
 
「今まで手術した経験はありますか?」
 
「No」
 
「薬で何かアレルギーはありますか?」
 
「No」
 
淡々と質問をする助産師さんの英語は、普段使わない医療系の単語が混ざっているので知らない単語も多く、私の英語力ではニュアンスで推測して答えなければならない質問もあった。
最後の方で、血液に関する質問をされた。はっきり分からなかったけど、血液に関する病気をしたことがあるかってことかなと推測し、また「No」と答えた。
 
「ちょっと待って、本当にNo?」
 
横で聞いてきた完全バイリンガルの夫が慌てて口を挟んできた。
 
「もしもの時に輸血をするかどうか聞かれてるけど、本当にしなくていいの?」
 
「え、するする!やっぱりYesです!」
 
危うく出血多量になっても輸血はしない、と自信満々にお断りするところだった。夫に命を救われた瞬間だった。
そしてこういう大事な場面では、分からなかった時は憶測で返さずに聞き返さないとダメだと反省した瞬間でもあった。
 
その後のお産は順調に進んだ。
早くてあと6時間、もしかしたら12時間以上かかる可能性もある、と言われていた中、先生もびっくりの3時間の安産で、出血多量になることなく無事出産することができた。
2人目だから体が覚えていて子宮口の開きも早いし、いきむのも上手だし、みんなあなたみたいに産めればいいのに、と助産師さんに大絶賛された。
 
産まれたてほやほやの我が子を胸に抱いた時は、無事に産まれてきてくれたことにホッとし、これまでの緊張の糸が切れて自然と涙が溢れた。
次男の泣き顔は長男そっくりだったが、泣き声の大きさや泣き方は全然違って、子どもの生まれ持った気質は産まれた瞬間から現れるんだなと感じた。
 
産後2泊での退院は体力回復の面ではやっぱり全然足りなかったけれど、入院中長男とテレビ電話をしたり、いい子で頑張ってるよと夫から報告を受けたりすると、病室で赤ちゃんと2人でいるより、家に早く帰りたい気持ちが勝った。
 
帰宅してからは、布団スタイルのマットレスから一人で起き上がることができなかったので、しばらくソファー生活になったり、長男のお世話や遊びで安静にしてられなかったりもしたけど、夫と義母のサポートのお陰で、少しずつ回復することができた。
 
輸血を断るという日本語だったら絶対間違えない答えをしてしまい、危うく命を危険にさらすところだったけれど、アメリカでの出産でも母子共に健康に安産で産むことができ、息子の誕生に涙し、家族で喜びを分かち合うことができた。2泊だろうが5泊だろうが、大した差はなかった。赤ちゃんとの新生活は家族一丸となって支え合う必要があるので、結果的に早めに家族と合流できてよかった。
 
このとき産まれた次男はあっという間に生後5ヶ月が過ぎ、寝返りをしたり下の歯が生えてきたり順調に成長している。
子どもの成長はあっという間で、これから成人するまで色々な場面に遭遇し、どんどん新しい記憶に塗り替えられていくはずだ。だからこそ、ママはアメリカであなたを産むときこんなことがあったんだよ、と教えてあげられるように、この時の記憶はこれからもずっと大事にしまっておこうと思う。
 
 
 
 
***
 
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2022-11-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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