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「聞く」ではなく「聴く」を!


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:TOMOMI(ライティング・ゼミ8月コース)
 
 
「ほらね。やっぱりママの言う通りにしかならないじゃん。俺の話は聞いてもらえない。
だから、話し合ったってムダムダ!」
「ちゃんと話は聞いてるよ!」
「いや、聞いてない。自分の思うようにしようとしてるだけじゃん。だから話し合いなんてしたってしょうがない!」
 
数か月前、息子から、お小遣いが足りないから値上げしてほしいと言われた。
高校生の彼は、毎日部活が終わってからそのまま塾に行く。
お腹がすくのでコンビニでパンを買ったりする。
週末も、部活からそのまま塾にいくので、コンビニによったり、外食したりしている。
その食事代はお小遣いと一緒にわたしているが、一か月結構な金額になる。
家計的にも厳しい。弁当にしてくれないかと言ったことがあったが、友達も一緒なのでできないと言われた。
 
ママ友に、お小遣いの金額を聞いたことがある。
その金額を聞いて「うちはあげすぎかも」と内心ずっと思っていた。
 
「毎日のコンビニ代がたりない。友達はもっともらっている」
「とても今の小遣いでは一か月やれない」と言われた。
「今のお小遣いは周りとくらべても結構高い金額だよ。
毎日〇円×週7でやってほしい。たりないなら、塾前用の弁当をつくるよ」
と私は答えた。
それに対し、「土日の昼食代もたりないんだよ。ラーメンの替え玉したら、1食1500円はかかる」と息子。
「ママのランチ代でも1500円は高い。そんな金額を毎週払えない!」と私。
どちらもおれないまま、こんなやり取りがしばらく続いた。
そして、彼は冒頭の言葉を私に吐き捨てるように言い、部屋へ行ってしまった。
相当怒りながら……
 
その後は「もう話したくない」と言われ話し合いをしてもらえない。
かといって、お小遣いを渡さないわけにはいかないし。
なんとか、結論をだしたい。
 
しかし、どうしてうまく話し合いができないんだろう?
いつも彼を怒らせてしまう。
いったい何がいけないのか?
お互いが「話し合ってよかった」と到底思えない後味悪い結果となってしまう。
うまく話し合いたいのに……
 
彼の発言の中に、「俺の話は聞いてもらえない」という言葉があった。
私は、彼の話を一生懸命聞いていた。
しかし、彼は聞いてもらっていないと思っている。
この差はなぜだ?
 
本やネットで調べるなかで「聞く」と「聴く」の違いを知った。
「聞く」とは、音や声が耳にはいってくることを指していて、受動的な状態。
「聴く」とは、音や声がもっている意味を理解しようと「注意深く聴く」状態で、能動的な行動。
 
つまり私は、彼の話を、聞いてはいるが、聴いてはいなかったのかもしれない。
 
人との関係性の大部分をつくるのは会話だ。
いい関係をつくるためには、日ごろからいい会話をしているということが重要になってくる。
会話で大事なのは「話す」ことよりも「聴く」こと。
人間は常に自分を理解してほしいと思っている。
だから話を聴いてもらえるとうれしい。
感情を共有し、寄り添ってもらえることで、理解してもらっていると感じることができるし、そこから信頼や安心が生まれて、心をひらいてくれる。
 
今思えば、私は、彼の思いを共有しよう、理解しようという気持ちで聴いていなかった。
彼がはなしている最中、無意識に話の中身をジャッジし、
次に自分が言うことを考えながら聞いていた。
「今の金額でもお小遣いをかなりあげている」
「お小遣いをもっともらっている友達の話は、きっと一人や二人のことだろう」
「値上げは無理。やりくりしてほしい。」
そんなことを考えながら。
そして、彼が話終わるとすぐ、否定し自分の意見を言ってしまった。
あたまから否定されたら、話したくなくなるのも当然。
せっかく彼は思いを言葉にしたのに、共感すらしてもらえず、すぐ私に否定されてしまった。
どんな意見を言ったとしても、温かく聴いてくれる人にしか安心感はうまれない。
彼に安心感をあたえる話し合いをしていなかった。
 
そういえば、私も似たような思いを経験したことがある。
夫との会話で「話を聞いてるの?」という言葉を、私はよく口にする。
私がしゃべった後の夫の反応はまるで私の話を聞いていないように思えるのだ。
しかし、内容を聞くと、一応、夫は聞いているようだ。
なのに、私には話を聴いてもらっている感覚はなかった。
まるで、よそごとを考えながらいい加減に話をきいているような態度。
私がはなした後の返事も、「うん」とか「そうだね」の一言で返される。
理解してるのかどうかわからない反応。
そんな会話が不満だった。
 
聴き方ってコツがいるのかも。
「君の話に共感して理解しようとしているよ」と安心感を与える聴き方がコミュニケーションでは必要なのだと感じた。
 
そこで私は本を参考に、「聴く」ことを徹底することに決めた。
一番大事なのは、理解しようとしながら話を聴く。
そして、自分の意見をおしつけたくなる気持ちを押さえて、とにかく黙る。
さえぎらない。
訂正や否定はしない。ジャッジもしない。
自分の意見へ誘導しようとしない。
彼が、「どう思う?」と聞いてきたときに初めて「私はこう思うよ」と言って
自分の考えを話す。
 
もう一度、頼み込んで、なんとか話し合いのチャンスをもらった。
失敗はしたくない。
 
息子は、私への不満を強い口調で言い始めた。
いつもなら反論したくなり、彼の話をさえぎってしまうところだが、今回はじっと黙って聴くことに集中。
私への不満を共感しながら聴いていると、だんだん口調が落ち着いてきた。
「俺もすぐおこっちゃうもの悪いけど」とボソっと言った後、
お小遣いのことを静かに話し始めた。
こんな落ち着いた話し合い、初めてだった。
いつもケンカ腰だったから。
 
「で、どうなの? あげてくれるの?」と要求理由を話した後、彼は私に聞いた。
ここで初めて私の考えを言った。
「お小遣いが足りないのはよくわかったよ。それは、足りないね。友達とも外食したいよね。じゃあ、〇円くらいはどうかな?
世の中にはできることとできないことがあると思うんだけど、お金はに関してはできないことにはいるの。
使いたいだけ使えるものではないと思う。
なるべく、あなたの考えに近づけてあげたいけど、うちではこれぐらいが限界なの。
私も節約するように頑張るから、一緒に協力してくれないかな?」
否定せず、お願いしてみた。
 
すると、怒らず「わかった」という返事が返ってきた。
びっくりだ。
彼の話を否定せず、ジャッジせず、理解するぞという思いで話を聴いたら、言い合いのない話し合いができた!
彼に、「私の理解しようという姿勢」が伝わったのかも。
 
人間関係をよくし、コミュニケーションをとろうと思ったら、「聞く」ではなく「聴く」ことを心がけようと決めた出来事だった。
 
 
 
 
***
 
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2022-11-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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