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囲碁を打ち「会話」を知る


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:村人F (ライティング実践教室)

名古屋天狼院の囲碁教室にて初めての対人戦を終えた私は、もはや考えることすらできない頭で驚いていた。
ここまで疲れるものなのかと。

やっていることのレベルは低い。
初心者同士の対局だからだ。
相手は幼稚園の時以来であり、私も最近アプリでルールを覚えた程度である。
おそらく上級者にとっては笑ってしまうような内容だろう。

それでも脳を酷使してひねり出したのである。
次の一手を打とうにも理屈がわからないから考えるキッカケすらない。
しかしAIとは違って目の前は生身の人間だから雑にしては失礼だし、なにより負けたくない。
こういう思いを胸に脳をフル回転させ続けたのである。

だが結果は私の負け。
途中から悟っていたので覚悟はできていたが、改めて結果を突きつけられると辛いものがあった。
この疲労感は直前までやっていた8時間労働の2倍以上になっていた。
ただ一方でフルマラソンを終えたような心地よい感情を覚えたのもまた事実だった。
やはりこれは、現実世界でちゃんと相手に向かい合い対局したからなのだろう。
アプリで打っている時はここまでの高揚を感じなかったのだから。

考えてみれば、最近はネット上でのやり取りばかり続いていた。
友達とSNSで話はするが、会うことはほとんどない。
職場の打ち合わせもリモート形式だ。
しかも顔を映す必要のない会社だから、ひたすら声だけで進行されるわけである。
こういった無機質なコミュニケーションだけをずっと行っていた。

だからこそ囲碁を打ちながら実感したのである。
現実世界でのやり取りが想像以上に濃密なのだと。

なぜなら心構えが明らかに変わるからだ。
AI相手なら平然にできた途中でやめる行為も目の前に人間がいる状態では決してできない。
相手を直接感じるからこそ、コミュニケーションにかける敬意も段違いに上がるのだ。
それゆえ脳の酷使具合も比例して高まるわけである。

しかしこの事実は同時に画面越しの行為がどれだけ雑だったのかを逆説的に示している。
考えてみればスマホでやっていることは全て、本気度が足りていないように思う。
囲碁を打つ時も本を読む時も動画を見る時もそうだ。
どんなことをしても片手間という感じがしてしまう。

SNSでも同じだ。
目の前に相手がいないから、どうしても軽い気持ちでの交流になってしまう。
そのせいで目の前にいたら決して言えないような酷いことも平気で投稿できてしまうのだ。

もしかしたら全員がスマホを持つこの時代のせいで、私たちはいつの間にか現実での生き方が下手になってしまったのかもしれない。
そういう危機感が私の中で強く湧き上がってきた。

だからこそ囲碁なのだ。
なぜなら現実世界において、最も密なコミュニケーション手段だからだ。

例えば次の一手を打つためには様々なことを考えなければならない。
自分がどういう状況に置かれているか。
相手の狙いは何か。
複雑すぎる局面の中で、これらを数手先まで読み進める必要がある。
この処理量は日常生活で行うレベルを遥かに超えているだろう。

しかしよく考えてみると、これらは通常の会話でも意識すべき要素である。
勝利を目指すように、話す時も何らかの戦略を立てたほうが好意を持たれやすい。
相手を考えなければ成立しないこともそうだ。
そのため囲碁とコミュニケーションの心得は、実はかなりの側面で一致していたのである。
だからこそ教室でも受講者同士ワイワイ盛り上がれたのだ。

「この場面はどう置けばいいの?」
「その手があったか!」
ただ石を置きあうだけなのに心からの言葉が紡がれるのは、目の前の相手に全力を尽くしているからこそである。
これこそ数千年にわたり囲碁が愛されてきた理由なのだろう。

そしてこの囲碁を現役のプロ棋士である柳澤理志6段に教えてもらえる。
戦っている姿を見てもらいアドバイスを頂ける。
そのうえ現実世界で直接戦うことができる。
これほどまでに充実したコミュニケーションの修行の場は他にないだろう。

それが近所の名古屋天狼院にできたのだから、身体の持つ限り通い続けることこそ礼儀だろう。

まだ初心者レベルだから伝えられるのは拙い言葉しかない。
しかし先生、そして他の受講生と共に歩んでいけばもっと豊かな表現を身につけられるはずだ。
その先に画面越しでは絶対にできない、生身だからこそのコミュニケーションがある。
この期待を胸に、囲碁教室に励んでいきたい。

***

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2022-12-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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