農作業は人の魅力をあぶり出す
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:エミーオ(ライティング・ライブ京都会場)
この秋からよく農作業に出掛けるようになった。知人の田んぼや畑を手伝いに行ったり、工作放棄地を提供してもらって仲の良い友人たちと一緒に耕したりしている。田んぼでは稲刈り(手刈り)と畦塗り(田んぼの縁を泥で塗り固めて水が漏れ出さないようにする作業)、畑では大豆の収穫とその脱穀を手伝った。工作放棄地の再生では、はびこる笹の根っこをへとへとになりながら除去し続け、群生するセイタカアワダチソウを抜き去り、ようやく土を畝の形に整えて畑らしい見た目になってきたところで栽培はこれからである。全くの素人と家庭菜園を少し経験しただけのメンバーしかいない農業初心者集団だ。いや、農「業」とつけるのもおこがましいだろう。仕事にする予定はなく今のところレジャーのように楽しんでいるだけなのだから。
そう。農作業は楽しいのだ。貴重な週末を費やすに値する楽しさがそこにはある。しかし一人ではその楽しさは半分も享受できないだろう。一人でやる農作業は瞑想的だ。黙々と体を動かし、土と向き合う。それはそれで雑多な思考にまみれた現代人には気持ちのよい体験だろう。余計な考えごとをしなくて済むので結果、頭がスッキリする。しかし私は複数人のグループで取り組む農作業を強くお勧めする。できれば男女混合グループで行うとより趣が増す。誤解を恐れずに言うと、農作業は合コンやマッチングの場になり得る可能性を秘めている。
まず当前のことだが農作業には力がいる。鍬やスコップを扱い自然の一部、土と対峙しなければならない。硬いこともあれば水分を含んで重いこともある。ここでまずその人の筋肉の躍動とある程度の器用さが窺える。学生時代のスポーツ歴など質問しなくても農機具を扱うフォームを見れば一目瞭然である。男女問わず、土に鍬を振り下ろす姿には生命力が表れる。耕すことは食べること、生きることに直結する行為だからだろうか、生命力があるということはセクシーであることとイコールだと思う。人が土を耕す姿はその人の魅力を存分に語ってくれる。
次に、農作業に「こうすれば絶対にうまくいく」というような正解は用意されていない。自然を相手に試行錯誤してその土地のその場所、その作物での正解を探していかなければならない。過去の経歴や肩書きなど全く役には立たず、自然界の織りなす様々な状況を感じ取り打開策を見出さなくてはならない。人間としての知恵、生き残っていく力のようなものが試される。想定と違った事態が起きた時、使いたい農地に頑固な笹の地下茎がはびこっていた時、それならどうしようと考えられるか。調べて学んで解決策を提案できるか。またそこに協調できるか。人のそんな力量や器が垣間見えるシーンにも事欠かない。
また、農作業は単調な作業の繰り返しが多いため、途中で飽きることも出てくる。そこでどう立ち回るか。飽きても黙々と動くのか、ポジション交代を試みるのか、熱心に撮影をしているフリをして休憩するのか。飽きた時、疲れた時、人間性が分かりやすく表れる瞬間である。一方、自分が疲れた時にかけられる気遣いの言葉や交代の申し出なども印象に残りやすい。
このように、グループで農作業をするとよく知らない人のことでも否応なしに見えてきてしまうのだ。それも取り繕いにくい素の部分が。ただ作業をしているようで、全身で自己紹介をしているようなものなのである。ただ、よほどのサボり癖や楽をしてやろうという腹でもない限りは、その人の好ましいところ、魅力が見える場合が多いので心配しないでほしい。
農作業には予め用意された正解はないが、ゴールはある。強制的な終了としては日没や雨だが、その日の目標を決めて作業するので、それが達成された時点がその日のゴールである。例えばこの範囲の草刈りをするとか、畝を何本作るとか、この範囲を収穫するだとかそういったことだ。ゴールがあるということは達成感を共有できるということである。作業が大変であればあるるほど良い。達成を迎えた時、都会では見せない笑顔を繰り出している可能性が高い。みんなで喜びを分かち合い、記念撮影でもすれば心の距離はさらに縮まるというものである。
昼休憩で一緒に食事をとることも大きなポイントだ。気候の良い時期なら青空の下で休憩したい。青空の下で体を動かし汗を流す。最高の笑顔とともに。人の魅力は全開にならざるを得ない。着飾った魅力ではない、丸裸のそれである。もっと仲良くなりたいと思う前に、仲良くなってしまう。気づいたら人として好きになっている。もしかしたら異性としても……。その確率はすこぶる高いのではと私は踏んでいる。
私たち日本人の多くは古来より農耕とともにあった。農作業に勤しむ異性の姿に惹かれ、その末に子孫を儲けた人々が多くいたことは想像に難くない。私たちのDNAには農作業をする異性からその人の本質と本来の魅力を見抜く能力が刻まれていると言っても過言ではない気がする。農作業は実際に合コンであり、畑はマッチングの場だったのかもしれない。
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