メディアグランプリ

心をちょっと楽しくしてくれる、植物の話


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記事:星有希(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
「草はぜんぶ抜いときました!!」
 
ハウスクリーニングのおじさんに爽やかに告げられたとき、私はちょっとだけがっかりした。
 
そうだよね、抜かないでくださいって、言わなかったもんね……!
普通、抜きますよね……!
 
 
 
昨冬、私は引っ越しをした。
集合住宅の1階で、小さな庭が付いている。
内見に来たとき、庭には雑草が生えていた。背丈が1メートルはあるワイルドなものもいた。
 
もう1年以上もずっと空室だったというその部屋の庭で、人知れずのびのびと育っていた植物たちに、私はなぜか心惹かれた。何枚か写真に撮り、実際にその家に引っ越すまで、たまに見返したりして、再会を楽しみにしていた。
 
ハウスクリーニングのおじさんの計らいで、引っ越してきたときには、庭は土だけになっていた。最初は少しがっかりしたが、結局引越し後のドタバタで、庭のことはいつの間にか気にかけなくなっていた。
 
 
 
でもある日、何気なく庭に目をやったとき、私の心はときめいた。ポツリポツリと、土から新しい芽が出ているのだ。控えめに花をつけているものもある。
 
なにこれ、可愛い……!!
 
当時私は、第一子の育休中だった。毎日話し相手もおらず、何か癒しを渇望していたのだろう。すぐに、庭の植物たちの観察がちょっとした楽しみになった。アプリで名前を調べたり、植物に関する本を買って読むようにもなった。するとある本に、こんなことが書いてあった。
 
 
 
「野山のない都会では、空き地の雑草や、家々のガーデニングが、虫を育み、鳥を育み、都会の生態系を循環させている」
 
 
 
つまり、私の庭の植物も、そこらへんの道路のコンクリートの隙間から生えている草も、ぜんぶ、それぞれが実はつながっていて、この千葉県市川市の生態系を形成しているということなのだ。ちょっとした、でも、壮大なドラマである。そう考えると、すべての植物が、極めて大切に思えてきた。
 
こうして私は、そこらへんの雑草をジロジロ見ながら歩く人になった。場所によって生えているものが全然違って、季節によっても刻々と変化していって、全く飽きない。もし自分が写真や絵が得意だったら、この姿を記録に残しておきたいと思うほど、それぞれがなかなかに絵になる。
 
 
 
 
実は、それまでの私は、緑のある生活に憧れながらも、観葉植物を片っ端から枯らすタイプの人間であった。いろいろ買ってみるのだが、我が家に到着するとすぐに、どんどん元気がなくなっていき、やがて枯れてしまう。
 
でも、雑草を愛でるようになってから、そんな状況にも変化が訪れた。私なりに、植物とうまく付き合うコツが掴めてきたようなのだ。あまり枯れなくなり、調子に乗ってさらにどんどん数を増やすが、それでもほとんど枯れない(たまに枯れる)。
 
一般常識のレベルかもしれないが、私なりに発見したコツとは、例えば次のようなものである。
 
真夏の直射日光は耐えられない植物が多いので、朝日だけが当たる場所か、日陰に移すほうが安全。
一見枯れたようでも、ダメ元で水をあげ続けてみると、新しい葉が出てきてくれることがたまにあるので、すぐに諦めない。
無理に土を使わなくても、水に挿しておくだけで元気に生き続けられる植物が意外と多い。水はヌメヌメし始める前に、週2回くらい替えれば大丈夫。
植物が元気かどうかは、新しい葉が出ているか、水に挿している場合は、真っ白な新しい根が出ているかで判断するのが簡単。新しい葉や根が出ている場合は、今と同じお世話を続けていけば基本大丈夫。
 
これらのコツを実践している今現在、植物たちは皆元気そうにしてくれている。こうして私は、家の外でも中でも、植物を観察したり、育てたりすることを楽しむ日々を送れるようになった。
 
 
植物が隣にあっても、人間社会における日々の悩みごとや疲れが解消されるわけではない。観葉植物の世話するのは、もちろん多少手間でもある。それでも「あ! 新しい芽が出てる!!」「あ! 綿毛ができてる!!」「あ! めっちゃ勢力圏拡大してる!」「あ! アブラムシの家族が住み着いてる!」と小さな発見に気を取られてるうちに、どんなときも、ちょっとだけ楽しい気持ちになれるのがいい。
 
植物の魅力に気付くきっかけを与えてくれた、今は亡き、初代の庭の雑草たちに感謝したい。きっと今庭に生えている草も、初代の雑草となんらかの形で繋がっているはずだから、大事にしたい。そしてその循環は、これからもずっと続いていくのだ。
 
いよいよ冬も本番だ。それぞれのやり方で冬を越えていこうとする植物たちの姿を観察しながら、私も日々、変化を続けるような人間になりたいと思う。
 
 
 
 
***
 
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2022-12-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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