できない自分を知ることは最高の気づき
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:リンダダ(ライティング・ゼミ12月コース)
「せっかく支社長になったのに、自分には向いてないな……」
3年前、40代前半のとき、支社長になった。強い昇進欲があったわけでもない。営業職というプレイヤーで実績を残してきた自負はあった。プレイヤーでの実績経験を積むと、次はマネージャーになるというのがうちの会社のセオリーだ。40歳を過ぎたあたりから、マネージャーという職が視界に入ってきた。「そろそろお鉢が回ってきそう」というような、どちらかというと、後ろ向きな受け止め方。学級委員に候補した生徒が「やったぁ、学級員になれる!」というような意気揚々とした気持ちでは決してなかった。
営業職というプレイヤーは文字どおり個人としての力だ。もちろんチームプレイに徹するのは大前提であって、個人として成果を挙げることが、組織に貢献することになる。個人として実績を挙げることは、会社に利益をもたらすことである。だから迷うことなく「個人としての力」を伸ばせばいい。すごく簡単なことだった。
実は、3年前、支社長に昇進する前に会社を辞めようとしていた。「していた」というより、「退職の意志」を上司に伝えたことがあった。結果として、心の底から信頼していたその上司の言葉によって、退職を取り下げることになったのだが。
「支社長を経験してから辞めても遅くないだろ。まずやってみろ。経験積めるぞ」の言葉に納得してしまって、ついには退職を撤回した。
コーチングスクールや起業コミュニティに入り準備していた。自らの意志でキャリアを選択し、会社員という枠に縛られずに自由に生きていく。そんな生き方がしたかった。そして、そんな生き方をする同世代を増やすことができたらいいなと思っていた。コーチングやキャリアコンサルタントとして独立したい、そんな思いがあったわけだ。
おそらく、その信頼していた上司でなければ、勢いそのまま退職していたであろう。
退職しなかったもう一つの理由は、独立したあと、稼いでいくことができるのか、という不安があった。本音をいえば、こちらの不安がとても大きいものだったのかもしれない。自由に生きていく、自由に生きていく人を支援していく、その思いだけで収入を得て「本当に自由な生活」が手に入るのか? 自分に対する自信のなさがあったのだ。
営業職というプレイヤーから、支社長というマネージャーになることは、キャリアの大きな転換だ。あの“信頼できる”上司が言ったように、マネージャーを経験してからでも会社を離れることは遅くはないかなと判断して、退職撤回。そしてマネージャーとなった。
3年目となる今。包み隠さず率直な思いを打ち明けると「せっかく支社長になったけど、自分には向いてないな……」という気持ちだ。なぜそう思うのか?
大きくふたつ理由がある。ひとつは、部下からの評価が低いということ。多面評価制度で毎年チームメンバーが上司を評価するのだが、自分が自分につける控えめな評価よりも、部下からの評価がさらに低いのだ。コミュニケーションのすれ違いが生じていたのだろう。
もうひとつの大きな理由。それは人を育てる楽しさよりも苦しさのほうが大きいということ。対象がチーム全体であれば進捗をみることでうまくいっているのか、うまくいっていないのであれば、課題を解決して推進していけばいい。対象がその「人」となると、そうはいかない。その人がもつ経験、スキル、特性に加えて、価値観や感情、思考パターンひいては生まれ育った環境によって、成長するスピードがちがうのだ。
組織、チームを対象とするのと、「人」を対象にするのとはまるで異なる。今まで、自分自身がチームプレイヤーとしていかに成果を挙げて、組織に貢献していくか、という視点とはまるで異なる。グランドに立つ選手から、スタジアム全体が見渡せる席に座ってチーム全体を俯瞰する。それと同時に、選手ひとりひとりを成長させていくという二つの役割を担わなければならない。チームマネジメントは得意なほうだが、人の育成という点ではどうにも四苦八苦。苦労が多い。
3年前、マネージャーとなる前の、いちどは退職を決意した自分に言いたいことがある。
「マネージャーになって自分の弱みを知ることができて、よかったじゃないか」
矛盾していると指摘されるかもしれない。部下からの評価も低いし、人を育てる楽しさも味わえていない。けれども、マネージャーになってよかったと思っているのだ。
自分の弱みや苦手なことは、体験を通じてのみ知ることができる。頭のなかで過去を回想したところで、弱みというのをくっきりとつかむことはなかなかできない。弱みは直視したくないから。体験を通してつかんだ、その「弱み」はふたをしたくてもできないもの。
その弱みを弱みとして、くっきりと認識できるということは、「本気を出せばできるかもしれない」という可能性をひとつ削っていることになる。本気を出せばできる、という可能性を削るには、本気を出してもできなかったという失敗からしか得ることができない。
なぜなら、何かを成し遂げるには弱みを克服することではなく、強みを発揮することにあるから。できない自分を知ることは、成功に一歩近づくことになる。
3年前にマネージャー職とならなければ、もしかしたら一生、自分の弱みに気づけなかったかもしれない。仕事をするということは、自分を知るということ。できない自分を知ることは選択肢を削り、成功の道を開いていくことなのだ。
だから、3年前に戻って退職を決意した自分に言いたい。マネージャーになってできない自分を味わってみなさい。できない自分を知ることは、最高の気づきなんだよ、と。
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