メディアグランプリ

私と鳩の100日間戦争


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:深山(ライティング・ゼミ12月コース)
 
 
ヤツらがベランダに住み着いたことある方なら共感してくれるだろう。
ヤツらはくるっぽーくるっぽーなんてかわいい声で鳴かない。
ヴーヴーと地の底から響くような声で鳴くのだ。
 
2022年春、引越してきたばかりの頃ベランダに鳩がきた。
「お、鳩きた!」
と、のんきに眺めていたあの頃の自分を蹴り飛ばしたい。あの時すぐにベランダに出てあいつを追い払っていたら、100日間も戦争することなかっただろう。
鳩はすぐ、うちのベランダに来るようになった。ベランダにくるだけならまだしも、子犬か? というような大きさの大量のフンを落としていくようになった。うちのベランダには鳩除けのネットがついていたが、風が強い地域に住んでいることもあり一部破れていた。おそらくここから入ってきたんだろうと思い、管理会社に修繕を頼んだ。ネットの修繕はすぐに対応いただいた。ネットを修繕は専門の業者の人がくるんだろうなと思いきや、普段着の地元のおじいちゃんだった。おじいちゃんも業者だとは思うが、服装や話し方の地元感が強く、大丈夫だろうか……と少し心配していた。その心配が的中したのか、強風でネットが外れたり破れたりして2度ほどネットの修繕を依頼した。
 
ネットの修繕がひととおり完了して
「これで一安心!」
と思っていたが甘かった。ネットは隙間なくしっかりと張られているのに、いつの間にか鳩は居る。そして大量のフンを落としていく。
「なぜだ……」
よく観察していると、鳩は隣のベランダから入ってきていた。隣のベランダとの仕切りの下に、隙間があった。特に排水溝の部分には鳩一匹が余裕で通れそうな隙間があって、そこから入ってきているようだった。その隙間から何気なしに隣のベランダを見てみると、そこには……大量のフンがあった。ひっ! と声がでた。おそらく鳩は、隣のベランダが汚くなったからうちのベランダに引越そうとしているところなのだろう。なんて迷惑な引越しだ。
 
そこからは、管理会社に隣のベランダの鳩対策を依頼した。隣人は鳩を気にしていないようで、ネットが破れたままで、フンの掃除もしていないようだった。隣のベランダが汚くて作業をできる状態でなかったため、ネットの修繕はすぐには対応できないと言われた。そんな時、ネットを修繕してくれたおじいちゃんが「2Lのペットボトルを隙間に置くとええよ」と教えてくれた。私はすぐに近くのコンビニで2Lの水を2本買い、隣のベランダとの隙間に置いた。その日の夜、隣のベランダに鳩が帰ってきた気配がしたあと、カツカツとおそらくペットボトルを突ついている音がした。しかしそこからは入ってこれないようだった。
 
「勝った……」
そう思うのはまだ早い。鳩はなんとしてもうちのベランダに入ろうと、ネットにバサバサッと体当たりをしてみたり、うちのベランダの手すりに止まってみたりと付きまとっていた。極めつけは隣のベランダとの仕切りの上に器用に乗り、こちらを見ている……(この時点はもう鳩と目が合うことがストレス大)。仕切りの上にもネットが張ってあるため入ってこれないものの、わざわざおしりをこちら側に向けてうちのベランダの方にフンを落とされることもあった。もうノイローゼになりそうだった。なんでここまでうちのベランダに執着するのか。もういいじゃん……。許して……。そんな気持ちだった。
 
その頃の管理会社へのメールを見てみると、もう本当にお願いします、朝方から鳴き声や羽音が聞こえてストレスなんです、と必死だった。隣人も憎らしく、もう一緒にベランダの掃除をしましょう! と直接言いに行くしかないのか……と思っていた。
 
そんな時、ネットを修繕してくれたおじいちゃんから電話がきた。内容は隣のベランダのネットを修理すればいいの? あなたの家じゃなくて? という確認だった。そうですと返事をすると、次の日の早朝に隣のベランダのネットの修繕にきていたようだった。その時、非常に鳩が騒がしくなぜか悲痛な鳴き声をあげていた。
「え、もしかしておじいちゃん、鳩殺した……?」
と思うような騒がしさだった。直接現場を見ていないため、私の邪推にすぎないだろう。その日以降、鳩の鳴き声は聞こえなくなった。
 
こうして私と鳩の100日間戦争は幕を閉じた。
 
さて、ここからは後悔と反省も含めて鳩対策を書いていこう。
まずは初動が大事だ。ベランダに来ているのを見たらすぐに行動に移そう。
「あああああ!」
と叫びながらベランダに出ていこう。鳩を驚かしてこのベランダは危険地帯だと知らしめる必要がある。鳩は帰巣本能が非常に高い。一度住み着いてしまったら最後、ちょっと驚かしたくらいでは一瞬逃げるがまた戻ってきてしまう。
 
もうすでにベランダに住み着いてるよ……という人は、物理的にシャットアウトするのが効果的だろう。鳩除けネットでベランダを隅から隅まで覆うことが重要だろう。隣のベランダとの仕切りの下にスペースが開いている場合、水の入ったペットボトルを置こう。鳩は5cm程度の隙間があれば入ってきてしまうと言われている。徹底的に物理的なシャットアウトを心がけよう。物理的な対策が難しいよって人は100均にある水鉄砲で追い払おう。これがなんと、物理的なシャットアウト以外では一番効果が高かった。ただ、ずっと使っていると鳩が慣れる可能性があるので注意だ。
 
他にもインターネット上には様々な対策がある。ローズやハッカの香り、ハーブ、スプレーやジェルタイプの忌避剤、鳥よけのトゲトゲなど。個人的な経験で言えばこのあたりの対策は全く効果がなかった。悲しいことに。鳩が来た時にベランダのドアを開けて「あああああ!」と驚かす作戦も、やり始めた当初は効果があったがしばらくすると、「あら、また来たわね」というような顔でスルーされてしまう。また、他の部屋の人からやばい人と思われてしまうので多用はできない。
 
この件以来、道端で鳩を見るたびに、ひっ! 鳩め! 寄ってくるな! という気持ちと、私も隣人のように暖かい目で鳩の居住を許せたら共存できたんだろうか……という気持ちで複雑な感情になる。
 
皆さんと鳩の戦争が起きないことを心から願っている。
 
 
 
 
***
 
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2022-12-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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