不便もたまにはいいんじゃない?
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:Hero(ライティング・ゼミ12月コース)
クリスマスを近々に控えたある日、当日夜から翌日に向けての天気予報を見て、私は思わず頭を抱えた。私の住む地方では珍しく、大雪が降るとの予報が出ていた。しかも大雪警報のおまけつき。この時期に自動車のタイヤをスタッドレスタイヤに変更することをやめたのは、転職により、通勤で自動車を利用することがなくなったから。とはいえ、心療内科や歯科への通院、クリスマスの食材の買い出し、娘や息子の保育園への送り迎えなど、日々の生活の中で自動車を利用しているシチュエーションは多い。これは困ったことになった、とその時は思ったのだ。
予報を裏切ることなく、雪は降り始め、夜の間にあっという間に道路に積もり始めた。窓から眺めると、近くの登り坂で雪道に苦しんでいると思われる自動車を早くも見つけることができた。これはもう翌日以降、自動車を使わない生活をすることは確定だろう。
翌日は朝一番で月2回通っている心療内科への通院があった。月2回しかない通院と積雪が重なってしまうなんて、なんていう不運なんだろう。そう思いつつも、大事な書類を書いてもらう必要もあるので、かわりになる公共交通機関での手段を調べることにした。30分に1本ではあるものの、バスがあることが分かったので、バスに乗って向かうことにした。
「こんな雪の日なので、路線バスのダイヤも乱れているに違いない」
妻からのアドバイスを聞き入れ、時刻表よりもかなり早めにバス停へと出発する。その結果、遅れていた先発のバスにちょうど乗ることができ、バス停での待ち時間を結果的に減らすことができた。バスに乗っている間は、気になっていた調べ物をしたり、好きな音楽を聴いたりと、有意義な時間を過ごすことができた。音楽はともかく、調べ物などができるのは、他人が運転してくれ、目的地まで行き届けてくれるバスならではの時間だったようにも思う。そうそう、バスについては、精神障害者手帳を取得しているため、運賃が半額になる。そういう意味でも、なんだか、少しお得感を感じて移動をすることができたのだ。
子供たちの送り迎えも、珍しく歩いて向かうことになった。気温0℃と寒い中、歩いて向かうには、しっかりとした防寒が必要だ。ニットキャップに手袋、ウインドブレーカー。自動車移動の時には必要としなかった防寒具たちを準備するきっかけになった。これもひとつのきっかけ、と考えれば悪くないな、よしよし。運動不足がちな私が歩く機会ができたのも、悪くない材料のひとつだ。行き帰りの道、子どもたちがしっかり歩いてくれたことにも気付けた。大きくなったなぁ、と実感できるいい機会になったように思う。
次はクリスマスに向けた食材の買い出しに向かうことになった。妻に聞くと、最寄りのショッピングセンターが無料の送迎マイクロバスを運行していることが分かったので、それを利用することになった。どうやら、団地内の8~10か所程度が停留所になっていて、一定時間の間隔(だいたい1時間に1本くらいの間隔)で運行しているようだ。私たちが住む地域を含む3つのルートに向けて提供されているものらしかった。買い物の時間をバスの運行時間とうまく調節できれば、行きも帰りも無料でバス移動することができる。決まった時間のなかで、クリスマスに食べるチキンやピザ、ケーキの材料などを買い進める。時間が決まっている分、無駄な買い物をすることがなく、本当に必要なものだけを見る時間に特化できた、といえるかもしれない。バスの中では、クリスマスケーキを販売しているケーキ屋さんについて、情報交換をしている利用者の姿を見ることができた。その会話の中に、いつの間にか自分も入っていく。些細なことではあるが、自分が地域の中で生きているのだ、という実感を、こういった会話の中から得られたような気もする。
雪が降ってから、まる2日。大雪警報も解除され、晴れ空が続き、無事に道路の雪が溶け、いつもの通り、自動車を使う生活が始まった。クリーニング屋へ向かい、その後、食品スーパーに向かう。この2日間、足を伸ばせなかった洋菓子屋さんにも行って、大好きなお菓子を買うことにしよう。やっぱり自動車を使う生活は圧倒的に便利で、離れられそうにない。でも、この2日間で感じた不便さは、なんだか心地よく、たまにならあってもいい気がした。
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