運転免許証の写真にこだわったら警察用語を知ってしまった話
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記事:上平恭代(ライティング・ゼミ12月コース)
「では、明日14時に○○駅の交番前で接触しましょう」
その電話口の男性が聞いたことない言い回しをしたので、私の耳は一瞬フリーズしてしまった。
先日、運転免許の更新に行った時のこと。
前回、免許センターで撮影された写真があまりにもひどかったから、今回は見合い写真顔負けのものを撮ってもらい、私は鼻息も荒く必要書類と一緒に持ち込んだ。
免許証の写真は、一定の条件を満たせばその写真を使って免許を作ってもらえることが分かったので、評判のいい写真館を丹念にリサーチし、人生初エリアまで出かけ、かなり高いお金を払ってわざわざ撮ってもらいに行ったのだ。
ここの写真館の何がいいって、別料金にはなるけど、オプションで画像を修正してくれるところ。ちょっとくらいのしわやシミ、片方だけ下がった口角だって画像加工アプリでチャチャっと直してもらえる。美肌にだってなれるし、眼ヂカラだってプラスしてくれる。
私みたいに外見にコンプレックスがある女子には、とても心強い味方なのである。
自分史上最強の写真を手に入れて、この時の私は免許証のできあがりが楽しみで仕方なかった。
しかし、申請窓口から不穏な流れになる。
免許センターの申請用紙には「写真の表面に触らないように提出すること」と記載があったにも関わらず、窓口の人が私の写真をベタベタ触っていたのだ。汚されないかめちゃくちゃ不安になったけど、その場でクレームする勇気もなくて、ただ黙って見ているしかなかった。
私は原付一種のゴールド免許ということもあって講習はすぐに終わり、番号が掲出され、受け取り窓口で氏名と生年月日で本人確認して、できあがった免許を渡された。その場で写真をちらりと見たけど、手続きが無事終わってほっとしたのと、その免許センターがとても辺鄙な場所にあるので、駅までの帰り道と電車の乗り継ぎを調べるのに気が行っていて、その時は全く気付かなかったのだ、写真の異変に。
帰宅し一息ついてから、できばえを確認するべく免許を取り出し写真をじっくり見ると、私の顎にあるはずのない黒い点が付いている。完全にほくろに見えるし、結構な大きさだ。
爪で表面をこすったが取れない。
薄めたエタノールでも取れない。
これ絶対、内側にゴミ入ったんじゃん! 窓口の女があんなにベタベタ触るから!!
同時に、その場できちんと伝えなかった自分、免許センターで受け取った時すぐに気が付かなかった自分にも無性に腹が立った。
この写真で5年も過ごすことは耐えられそうもない。
とはいえ、ふだん運転は全然しない私にとっての免許証は、年に数えるほどしか出番のない身分証明書の役割でしかないし、パスポートみたいに10年も使うものじゃない。
どうるする私、我慢する?
そんな葛藤をしばらくしたけど、意を決して免許センターに電話した。
私の予想では
「申し訳ないけどどうしようもないです」
または
「作り直してもいいけど、お金かかります」
のどちらかだと思った。だけど折り返しの電話で対応してくれた男性の
「こちらのミスなので、作り直して最寄りの駅まで持って行きます」
という思いがけない返答に驚く。
えー! 免許センターのフォローすげーな!
少しのやり取りのあと、その電話口の男性から出たのが冒頭の
「では、明日14時に○○駅の交番前で接触しましょう」
という言葉だった。
意味は分かったけど耳なじみがなさ過ぎて、考えるより前に「接触?」と聞き返してしまった。
「あっすみません。交番前で落ち合いましょうってことです」
年代なのかもだけど、今どき「落ち合う」もあまり使わないよね、と思いながら、私は通話終了のボタンを押した。
わざわざ来てくれなくても、宅配でも良かったけど、免許証だからきっと、担当者による直接の本人確認が必要だから手渡しになったんだろう。
この人きっと警察から免許センターに出向してる人なんだろうな、などと推測する私。
警察って独特の言い回しするもんね。
私は相手の男性の顔を知らなかったけど、待ち合わせ当日、交番前にいたたくさんの人の中から、その人をすぐ見つけることができた。特に目立つ格好をしてたとか、外見が際立ってたとかじゃなかったけど、中背だけどがっしりしてて、なんというか動きや目線、体つきに隙がないのだ。警察官だろうという私の推測は確信に変わる。
「□□さんですよね?」と迷いなく近づいたらすごくびっくりしてた。
私はほくろが付いた免許証を取り出して「ここにゴミが」と説明し、相手にも確認してもらった上で手渡し、相手から新しい免許証を受け取り写真を確認して、丁寧にお礼を伝えてその場を後にした。
「落ち合う」を日常で使いそうな年代の人ではなかったけど、職場環境なのかな。
今回の免許更新、いつもより手間も時間もお金もだいぶかかったけど、めったにできないおもしろ体験だったのは間違いない。
***
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