2022年最後の挑戦、水風呂訓練が私に教えてくれたこと
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:赤羽かなえ(ライティング実践教室)
なんだか最近、周りの人がサウナ、サウナと騒いでいる。
「サ活、知らないの?」
息子に知ったような顔で言われると、ちょっとムッとする。
「サウナと水風呂に交互に入ると最後には整うんだよ」
隣に座っていた夫もニヤニヤしながら私を見ていてますます置いて行かれるような気分になる。
「あんた、水風呂なんか入れるの?」
むきになって息子に投げかけると、得意げな返事がきた。
「入れるに決まってんじゃん。気持ちいいよ。しばらくすると身体がふわっとあたたかくなるから」
いっぱしの口を聞きやがって。言葉の裏にできるもんならやってみ、という空気が流れていて、さらに悔しさを掻き立てられた。
実は、私、水風呂に入れない。
元々身体が冷えやすい、ということもあるけど、なんで身体が暖かくなったのにわざわざ冷たい水の中に入らなければいけないのか意味がわからない。色んな所で、温冷を繰り返すのがいいというのは聞いたことがあったけど、やってみようとは思えなかった。
けれど、息子の知っている世界を知らないのはなんだかシャクにさわる。幸い、年末年始にサウナと水風呂に入り放題の宿に泊まっていたから滞在中に克服したい。2022年の締めにくだらない目標を立て、私の水風呂への挑戦は始まった。
まず、サウナに入って一人作戦会議だ。どうして私は水風呂が苦手なんだろう。自問自答してみると、寒いということに対して苦手意識があることに気づく。とにかく、つめたいとか寒いとかそういうことが嫌だ。そこに不安や恐怖心すら感じる。その心が水風呂への敷居をめちゃめちゃ高くしていた。
次に実際に今の実力をはかってみる。水風呂から水を汲んで足にかけることはできる。水風呂に腿くらいまでつかることも……頑張れば、できる。でも、上半身に水をかけたり、身を沈めたりしようとすると、とにかく緊張して体中に力が入る。
1日目はサウナで徹底的にそのメンタルと向き合うことにした。水は冷たい、でも水は怖くないと言い聞かせてみる。思ったよりも体が抵抗しているのがわかった。細胞と細胞の隙間に恐怖心が埋め込まれているような感覚で、私、前世で水にまつわるトラウマでもあったんだろうか、と思うくらい。その日はどうにも気が進まなかったので、とりあえず、腿下だけ水に浸かってOKということにした。
2日目の午前中は、ゆっくりとお風呂に入ることができたので、十分に身体を暖かくしてから、水風呂にトライしてみることにした。まずは昨日のように腿下だけ水に浸かる。昨日よりは嫌な感じがしない。よし、いい調子。もう一度身体をよくよく温め直してから、肩から水をかけてみよう。
手桶を傾けると、水が肩から背中をつたって言った。
「ぎゃっ」
周りに人がいなかったからいいけど、かなりの悲鳴が自分からこぼれた。はずかしっ。息子の小馬鹿にしたような笑い顔が浮かんだ。なんのこれしき。逆の肩から水をかけたときには、小さなうめき声で済んだ。ヨシ、大進歩じゃないか。両肩に水をかけることができた。そのままの勢いで風呂のヘリをまたぐと間髪入れずに「えいやー!」と叫びながらしゃがみこむ。
「うおおおお」
自分の中に小さいオッサンがいるのかもと疑うくらいのうめき声がもれた。めちゃくちゃダサいけど、とりあえず水の中に肩までつけることができた。とりあえず10秒だけ数えて、飛び出した。サウナに戻って座る。
おっしゃー。やった、やったぜ! ガッツポーズしそうな気持ちを鎮めて、自分の身体をチェックしてみる。
冷たく締まっていたところからあたたかくなる感覚が妙に気持ちよかった。細胞が動くのを体感しているようだった。
しかし、1回できただけでは意味がないよな。そもそも、水をかけたり、浴槽に入ったりする時にあんなうめき声をあげるのとか、美しくない。
そこから、サウナと水風呂の往復が始まった。2回目にかけ水をした時には、恥ずかしいうめき声はでなかったし、1分も浸かることができた。呼吸を合わせるとそんなに冷たさを感じないかも……息を吸って吐くときに水をかけたり、水の中に身を沈めたりして試してみる、やっぱり呼吸意識すると入りやすいという実感がある。繰り返しているうちに、細かな温度の変化にも気づくことができた。新しく水が足されるとひんやりして、恐怖心が出てくる。横に別の人が入って来るとふんわり温かく感じる。ゆっくり呼吸をすると筋肉が緩んで身体がふわっと温かくなることもわかった。これが息子の言っていた水の中で温かくなるってことか。逆に身体に力が入りすぎていると冷たさが身に染みる。
翌3日目の最初はまた気が進まなかったけれど、2日目よりは思ったよりも早く水になれることができた。数日繰り返すうちに、すっかり慣れることができた。今や、かけ水も水に浸かることも、上手く呼吸を合わせながら、優雅にこなすことができる。見よ、このセクシーな手つきを! もはや、私が数日前まで水風呂に入れなかったなんて誰も思うまい。
こうして、私の2022年最後の挑戦が終わった。なんの役にも立たない自己満足な挑戦だけど、できなかったことができるようになること、その過程で気づいたり感じたりすることが日々の生活に新しい風をくれるような気がする。
さあ、2023年最初の挑戦は何にしようかな。サウナルームの明かりでキラキラと照らされる蒸気を眺めながら、ニヤリと笑うのだった。
***
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