メディアグランプリ

今日見たもので、明日のあなたがつくられる


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:小野汐里(ライティング・ゼミ京都会場)
 
 
「ロシアとアメリカがたたかいをしました」
(……!?!?)
小学1年生の娘が「これ、わたしが、かいたんだよ」と教えてくれた作文を軽い気持ちで読んだ私は、ひっくり返りそうになった。
 
それは国語の授業で「おはなしをかこう」というテーマで、書かれたものだった。先生がクラス全員の考えたお話を、毎週お便りにして紹介してくれていて、私は読むのを楽しみにしていた。
大抵のおはなしは、見本のお話のテンプレートに沿って書かれていて、「むかしむかしあるところに」から始まり、「◯◯太郎」(好きな食べものの名前が入る)、または「◯◯姫」が旅立ち、敵を倒すというストーリーだ。子どもらしいアレンジが加えられていて、他の昔話のエッセンスが加えられていたり、可愛い動物やおいしそうな食べ物が登場したりして、読むと心が和むのだった。「一体、我が娘はどんなお話を書いたのだろう?」とワクワクしていた私は、娘の作文が載ったお便りを持って帰ってくるのを心待ちにしていたのだ。
 
冒頭は良かった。
―むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんがすんでいました。おばあさんが川でせんたくをしていると、子ネコがながれてきました。
 
「ふむふむ、大好きなネコが主人公なんだな。娘らしいな」子どもの作文を読むと、どんなことを考えているのか垣間見えたようで嬉しくなる。ほっこりした気持ちで読み進める。
 
―(中略)子ネコは大きくなってりょこうにでかけました。そのかえり、この国のびょういんがきにいり、びょういんにいることにしました。
 
「国?村じゃないんだな」外国のおとぎ話もよく読んでいる娘のことだから、洋風な話になっていくのだろうか。
 
―(中略)アメリカとロシアがたたかいをしました。アメリカはまけつづけました。たたかいつづけ、びょうきになってしまった人たちをたすけるため、くすりやごはんをどっさり入れて、たすけたい人をあつめました。みんなでふねにのりこみました。
 
「このネコは、アメリカ人(いや、アメリカ猫)だったのか……」
いや、そんなことよりも、なんだか雲行きが怪しくなってきた。大勢のクラスメイトは桃太郎に準じた昔話を書いているのに、どうして娘は戦争の話を書くんだろう。何か心に悩み事があるのだろうか……急に娘が心配になってきた。心当たりを探してみるが、毎日楽しそうにしているし、それらしい原因を思いつかない。それにしても、この壮大な話を娘はどうやってまとめるんだろう。続きが気になって仕方ない。心に浮かぶ様々な疑問を抑え込み、読み進める。
 
―(中略)子ネコは、そこでアメリカの人たちの「ちょう」になろうとおもいました。
 
「ちょうは、蝶? いや、長? 大統領になるという意味だろうか」
内容は戦争の話だが、娘はまだ小学1年生である。ひらがなだらけの作文が、意味を汲み取るのを余計に難しくさせ、さらに困惑を深めることになった。
それにしても、目の前のけが人を助けながら、国の未来を見据えて決意をする子ネコの勇気に胸を打たれる。すっかり話に引き込まれている自分がいる。
 
―(中略)なん日かたつと、へいわがおとずれました。子ネコは、校ちょうとして、大きなびょういん学校をつくりました。
 
「なるほど、看護学校の校長になったんだな」
 
―子ネコは「これで、へいわになりましたね」と、いいました<完>
 
終わった。娘に気になって仕方なかったことを聞いてみた。「どうしてこのお話を書いたの?」と。「このおはなしをもとにかいたんだよ」と本棚から取り出したその絵本は「ナイチンゲール」だ。登場する国名は違うけれど、ストーリーはそっくりだ。なるほど!と合点がいった。その頃、娘は伝記を読むのが好きで、なかでもナイチンゲールの話を気に入り、何度も繰り返し読んでいたのだった。
 
よく、あなたの体は、あなたの食べたものでできているという話を聞く。だから、食べ物の選び方に気をつけましょう、という話だ。これは、「思考」にも当てはまるのではないかと思う。インプットした視覚や聴覚等の情報が、思考となり、アウトプットの素になるのではないだろうか。娘にとっては、その時一番身近で、これをぜひ取り入れたいと思ったストーリーがたまたま「ナイチンゲール」だったのだ。今日見たもので、明日の私がつくられる。毎日そうもいかないけれど、なるべく美しいものや楽しいものを見聞きする時間を取り入れたい、と決意した思い出深い出来事だ。
 
 
 
 
***
 
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2023-01-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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