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私の子育てにおける魔法の言葉

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:沖ノ島大輔 (ライティング・ゼミ12月コース)
 
 
「こむちゅぶ」
 
この言葉のおかげでここまで無事にたどり着くことができた。
 
今日は息子の成人式。
 
と同時に私が父親になって20年がたつ。
 
子育てには悩みがつきもの。
夫婦喧嘩の一因であったりもする。
 
子育ては親になってみないとわからないことだらけだった。
 
逆に、こんなふうにして、親に育ててもらったんだと、毎日が気づきと感謝の連続だった。
 
子供が生まれた瞬間にふつふつ湧く親としての自覚、そして多くの親が願うこと。
 
「幸せな人生を歩んでもらいたい」
 
しかし気がついた時から何かが違ってくる。
 
こんなに、してあげてるのに。
こんなに、思ってるのに。
こんなに、あなたの幸せを願っているのに。
 
子供の幸せを願うあまりに、自分が成し遂げられなかったことを、子供にしつけようとしていた。
英語が話せるように、インターナショナルスクールに通わせ、
音感が良くなるように、ピアノを習わせ、
文武両道な大人になるために、剣道を習わせ、
歯並びに悩まないように、歯医者に通わせ。
 
全てはこの子のために。
 
この子のためにならと、費用も惜しまず、働いて、稼いで、自分のことは後回しに、最善を尽くしてきた。
 
しかしだ。
 
一向に、英語は話せない。
一向に、ピアノが上達しない。
一向に、剣道が上手くならない。
一向に、歯磨きをしないで寝る。
 
なぜだ。
 
なぜなんだ。
 
こんなにつくしてあげてるのに。
こんなに費用をかけているのに。
こんなに自分は我慢しているのに。
 
苛立ちが隠せずに子供や妻に声をあげることも増えてきた。
 
そんな時に、出会った言葉がある。
 
たった1文字、おがつくだけで違うんだよ。
しつけとおしつけは。
 
はっとした。
 
子供の幸せを願ったしつけは、しつけではなく、いつしかおしつけになっていた。
 
自分ができなかったこと。
自分ができたらいいなと思うこと。
 
そんなことをただ子供におしつけて、そして、自分の思い通りにならないことを責めて追い込む。
 
気がつけば、親の期待に応えられない子供、親の顔色をうかがってばかりいる子供を育てていた。
子育てのゴールは、自立した大人に成長させること。
親はゴールに向けて一緒に応援、サポートするのが役割。
 
それはわかっている。
でも、それが思うようにできない。
 
おしつけのしつけをしていた自分を攻め、仕事も家庭もうまくいかない自分が情けなくて途方に暮れた。
 
「もう、どうでもいい。好きにしろ!」
 
そんな無責任な気持ちになっていた。
 
ん? いや、待てよ。
 
自分の人生なんだから、自分の好きなようにすればいい。
 
人生は決断の連続だ。
 
自分の意志で選んで、行動して、たとえそれが失敗であっても、お父さんは、1番の味方だから、好きなようにやれ、と見守るだけでいいのかもしれない。
 
そうだ、息子の好きにさせてみよう。
 
当時我が家では、キムタクのフレンチレストランを舞台にしたドラマの影響で、フランス語がちょっとしたブームだった。
 
食事をするときは「ボナペティ(どうぞ召し上がれ)」
返事をするときは「ウィ」
お礼を言うときは「メルシィボークー(どうもありがとう)」など、
 
フランス語圏で仕事をした経験がある私は、日常会話の中にフランス語を織り交ぜていたのをいいことに、とっさに自分の気持ちをフランス語で表現してしまった。
 
「お父さん、ゲームやっていい?」
 
「こむちゅぶ(お好きにどうぞ)」
 
「お父さん、アイス食べていい?」
 
「こむちゅぶ(お好きにどうぞ)」
 
ん? と不思議な顔をしていた息子とは裏腹に、ん?これはいいかもとすらっと出てきたこの一言に、ときめいた私。
 
「こむちゅぶ」
フランス語でお好きにどうぞという意味を持つ。
 
「自分で決めなさい」「好きにすればいい」と言う日本語だと、少し角が立つニュアンスになるが、この表現はなんとも柔らかい。
 
この言葉は、私の子育てにおける魔法の言葉になった。
 
それに対して、息子はこの言葉が嫌いだったみたいだ。
私の口からこの言葉が発せられると自分で決めなくてはいけないもどかしさ。
でも、その言葉の裏には、自分の人生は、自分でデザインしろ、という親の愛情がたっぷりと込められているということを理解しながら成長した。
 
全く運動音痴な私と妻の子供でもあるにもかかわらず、自分の希望で中学校では野球部に入部し、キャプテンまで務めた。
小学校でも中学校でも体育祭では応援団長。
高校は甲子園にも出場する強豪校へ一般で入部。大学では自らが監督となって草野球チームを作り、青春を謳歌している。
 
全て息子が自分で決めたこと。
 
親である私たち夫婦の予測する未来はそこにはなかった。
 
「こむちゅぶ」と言う言葉が、未来を変えてくれた。
わくわくとドキドキと楽しみでいっぱいで、子育てをひと段落させることができた。
 
成人となったこれからは、さらに自分の足で、人生を歩むことになる。
 
仕事、結婚、子育て、待ち受ける未来はどんなものになるのか、誰にもわからない。
 
ただ決断に迷ったときは「こむちゅぶ」この言葉で乗り越えられるはずだ。
 
息子よ、成人、おめでとう!
 
 
 
 
***
 
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2023-01-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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