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一人っ子アイデンティティ


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記事:峰岸亜衣(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
「一人っ子ってわがままなイメージ」「甘やかされて育ってきたんでしょ?」
 
一人っ子だと言うと、世間からの風当たりが強い。
大人になった今は直接的に悪いことを言われることはなくなったが、「あ……へぇ」という反応をされるのはなぜなのか。
 
きょうだいの面倒を見てきた長男長女は「面倒見がいい」人が多い。
真ん中っ子は確かに「仲裁するの上手い」よね。
末っ子こそ甘やかされて育っているのでは?! 「甘え上手」で羨ましい。
一人っ子は「わがまま」って。他に何かないのか。
 
 
一人っ子サイドから主張したいことだってたくさんある。
一人っ子のアイデンティティは「わがまま」ではないことを。
とはいっても、きょうだいに憧れを抱いてきた人生を。
 
 
 
「お下がりの体操服」
小学校の頃、これは最も強いワードだった。
新品よりもお下がりがかっこいい。「1」を上から無理やり「2」に書き換えてるあの体操服を見ると羨ましくなった。
一生まっさらな体操服しか着れないなんて、なんてもったいないんだ。自分が着た後、誰にも着られることなく雑巾になるしかない布を哀れに思った。
 
中学では、年の差が1か2のきょうだいと在籍が被るとそれはもう高ステータスだった。
「誰々の妹、弟」。上がいるだけで下の子のカーストに加点されるのだ。
 
地域のクラブ活動などもやっておらず、上級生との関わりがなかった私が特に苦労したのが部活選びだ。
「お姉ちゃんの友達が部長だからテニス部入る」
「クラブチームの先輩も多いし女バレかな」
 
元からコミュニティができているのは嫌だなあ……文化部のほうがゆるいと聞くけれど、がっつり運動したいし……。
そうして選んだのがクラブチームなどがない女子ソフトボール部だった。
 
中学時代は特に女子の上下関係が激化する時期。ソフト部は噂には厳しいと聞いていたが、体育のソフトボールは得意だったしと入部を決めた。
しかし、恐れていた事態は入部まもなくから始まった。
 
「●●さん、3年の●●先輩の妹でしょ?」「●●さんのお兄ちゃんと同じクラスだよ!」
ウワー!!在籍被り2人もいたわ!!
 
違う小学校出身で家族構成を知らなかったが、新入部員5人中2人が在校生に兄・姉がいる子だった。
時代にそぐわない言葉を使うならば、2人は言うまでもなくあきらかな“エコヒイキ”を受けていたし、私を含めた3人に対する先輩からのあたりは今だったら完全アウトな言動・行動のパラダイスだった。正直思い出すのもきつい。
初めて身近にできた「年齢の近い人間」に恐怖を感じ、私の中で「先輩は怖い生き物」という感覚は、しばらく消えることはなかった。
もはやきょうだい云々の問題でもないが、エコヒイキの引き金は家族構成だ。私にもきょうだいがいたらこんなことにはならなかったのかな、なんてことを何百回も考えた。
 
 
「きょうだいゲンカ」は憧れだった。
一人っ子は喧嘩の仕方も、仲直りの仕方も分からない。
「ごめんね」「いいよ」
という仲直り方法は、確かドラマで見たような。
友人と喧嘩した次の日に普通に話しかけたら無視されたのは、そのフローをすっ飛ばしていたからだと気づいたのはその少し後だった。
同時に、「ごめんね」と言い出すのがどれだけ照れくさいことかも知った。
 
日常で物を取り合う場面もなかった。
親にだめだと言われれば手に入らないし、いいよと言われれば手に入る。
「欲しかったものが他の人の手に渡っている」ということを目の当たりにすることがなかったためか、この状況には今でも耐性がない。
これがグッズ収集の執念につながってしまったのだろうか……。
 
こうした一人っ子環境から、形成されたと思われる性格は確かにある。
よその事情は分からないが、一般論ではお兄ちゃんお姉ちゃんは下の子を優先してあげなさいと言われてきたのだろうし、真ん中は上下どちらのこともよく見ている冷静な子が多いだろう。下は上の良いところ、悪いところを見て育っているだろうから私が考えるに一番お得なポジションだ。
だから、何番目に生まれたかによって「こういう性格が多い」と定義されるのも分からなくはない。
 
それならば。一人っ子は身近でそういう経験ができないのだから、「わがまま」ではなく、「研究家」と言ってもらいたいものだ。外の世界での立ち振る舞いを、周りを見ながら自己流でやってきたのだから。
 
 
大人になり、それぞれが独立していけばきょうだいの影響は小さくなってくるが、やはり「妹に結婚先越されたわ〜」「甥っ子が生まれてもう叔父さんだよ」という話は、きょうだいがいる人にしかできない。
甥っ子、姪っ子というワードはこの先私の人生には出てこない。体操服、きょうだいゲンカときて、今の憧れは「叔父さん・叔母さん」だ。
 
そうはいっても、きょうだいをなにがなんでも羨んでいるわけでもない。
今は今で満足しているし、いないならいないで楽だわ……と思うことも多々ある。
逆に「一人っ子が羨ましい」とも言われる。
結局「隣の芝生は青く見える」だけなのだ。
 
 
まあでもやっぱり、自分の子どもにはきょうだいをつくってあげたいかなあ……。
 
 
 
 
***
 
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2023-01-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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