メディアグランプリ

地球に似た「その星」


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記事:mumi(ライティング・ゼミ12月コース)
 
 
「その星」は地球と非常によく似ている。
「その星」の存在に気づいていない人もいる。
「その星」の住民は一見すると不幸にも見えるが、人一倍楽しんでいるようにも見える。
 
「あれ、mumiが注文した料理まだ来てなくない?」
「大丈夫、私そういう星だから。ちょっと店員さんに聞いてみるよ」
 
友人が何言ってんだ、こいつという顔で私を見ている。
でも、私からすると「よくあることなんだ」でも「ツイてないよね」でもない。
「その星」にいる宿命だからに他ならない。
 
「星」について思い返した時に、思い浮かぶ一番古い記憶は、幼少期に家族5人で
ファミリーレストランに行ったときのこと。
注文した料理が続々と届く中、ふと隣を見ると母の料理だけが到着していない。
「ご注文のお料理はお揃いでしょうか?」まさかお揃いでないとは夢にも思っていないであろうその店員は、抑揚のないトーンで言葉を並べる。
ただでさえ休日で混み合う時間帯の勤務とあって、彼はひどく疲れて見えた。
「あら、また私のだけ来てない。みんな先食べててね」と母は慣れた様子でそんな彼に注文の確認を依頼する。母の言葉に焦った店員は急にスイッチが入ったかのように頭を下げ、そそくさとキッチンへ消えていった。
当時の私は、お腹すいてるのにお母さんかわいそう。店員さん忘れちゃうんなんてひどい。なんて思いながらハンバーグを頬張ったものだ。
買い物に出かければ母の頭に鳩のフンが落ち、レジではお釣りを間違えられている。
「あれ、なんかお母さんてこういうこと多いなあ」子どもながらに意識するようになった。
 
成長するにつれてその意識も次第に強まっていき、「もしかして私もお母さんと同じ星なのかも……」と確信することとなった。
 
お冷に虫が、サラダに髪の毛が入っている
新学期に配布された教科書が破れている
新しいコンタクトを開けると入っていない
12個入りのチョコが11個しか入っていない
遠足で支給された唐揚げ弁当に唐揚げが入っていない
注文した料理と異なるものが運ばれてくる
試着した商品を購入すると会計時に全く別の商品を渡される
年中無休が売りのお店に「臨時休業」の張り紙がされている
紅茶にレモンをお願いするとミルクが付いてくる
 
 
数をあげればキリがない。
まるでコナン君じゃないか。
コナン君いるところに事件あり、mumiのいるところにハプニングありといったところだろうか。
旅行の同行者には必ず事前に説明をしておく。「私はこういう星だから巻き込んでしまうかもしれない」と。私が先にあげた目に遭う分には問題なく、なんなら「慣れてる私でよかった」と思うのだが、同行者がそんな目に遭うとなればそうもいかない。
「私のせいでごめんね」なんて言わせたくないし、せっかくの楽しい旅行で不機嫌にでもなられたら元も子もない。すべてはこの星の下に生まれた私がもたらしてしまうものなんだと、不審がられながらも熱弁した日の記憶が懐かしく蘇る。
 
 
 
星の住民であることを自覚してからというものの、自然と話し方が変わるようになった。
ここまで来ると、逆に自分が「持ってる」人間なんじゃないかと面白くなってしまったのだ。それは私が女子高生の頃であれば、メールでの表現が
「聞いてよ⤵(涙)」から「聞いてよ⤴(笑)」に変わっていたと思われるくらいに。
いつのまにか単なる愚痴から一笑いとれるネタに昇格していた。
始めは「なんで私ばっかりこんな目に……」なんてふてくされていたというのに不思議なものだ。何もない日々が続くと心なしか寂しさを感じ、あるいは「あれ、なんか今日何もないけど上手くいきすぎてない?この後大丈夫かな?」なんて不安さえ抱いたりする。いつのまにか私の人生とその星は切っても切れない関係になっていたのだ。
 
ふと最近、星の宿命を感じる出来事が少ないことに気づいた。
あ、姓名判断してみよう。結婚して名字が変わるとなんか変わるって聞いたことあるし。
こんなの中高生の頃に好きな人の名字を組み合わせてきゃっきゃして以来じゃないかな、なんて思いながら「姓名判断 画数 無料」で検索する。
かつて小学生おなじみの宿題である、自分の名前の由来を母に聞いた。あまり満足する回答が得られず当時の私は面白くなかったのだが、確かあのときの説明に「どう頑張っても名字の画数が悪いから、名前はすごく良い画数にしたのよ」なんていうエピソードもあったはずだ。
ふむ、改めて見てみようじゃないか。
母の言葉に偽りなし。旧姓の名字は「凶」、名前は「大大吉」だ。
家庭運が凶なのは痛いところだが、総画は吉におさまっているのでまあまあといったところだろうか。
さてさて新姓はというと……。なんと凶がひとつもない!それどころか家庭運・総画とも大吉へ大出世しているではないか。なんとも思いがけず嬉しい気持ちになった。
まあ、これが星にまつわる出来事に影響をもたらすものなのかどうかはわからないが、諸説あるうちの一説くらいにはできそうだ。
 
私としては、わざわざまだ気づいていないその星の住民を探してまで星の存在を伝えるつもりはないのだが、もし「聞いてよ⤵(涙)」の人に出くわしたなら、先住民として「この星もそう悪くないよ」と伝えたい。「あ、また面白いネタ見つけた」くらいに思えるようになれば「聞いてよ⤴(笑)」への道のりはもう開けているのだから。
 
そんなわけで、M78星雲でもイスカンダルでもない「その星」に私は愛着を持っている。
気づいてしまった人には特別な星になりうる「その星」を人一倍楽しみたいのだ。
 
 
 
 
***
 
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2023-01-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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