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人生はたくさんの「ドリル」

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:いのくち聖子(ライティング・ライブ福岡会場)
 
 
少しだけ泣きそうになったが、泣かない私がいた。
いや、泣いている場合じゃないと思ったのである。
「ドリル」が私を強くしたんだろう。
 
泣きそうになったのは何故だろう。
負けず嫌いだったから?
これまでの自分を否定されたみたいで?
無駄な努力だとも受け取れたから?
 
あの時のなんとも虚しくて悔しい気持ち、忘れない。
 
10年くらい前になる、当時ゴルフに夢中でパート代は全部ゴルフ関係に費やして、家事もそこそこに練習に行ったり、ラウンドしたり、レッスンに行っていた。
週の半分以上はゴルフをしていた時期だった、我ながら驚く。
 
私は夫とワンコ1匹の3人家族、結婚してからずっと共働きだったが、ゴルフに夢中になりパートも辞めたくらいゴルフが大好きだった。
 
「仕事も辞めて、そんなに練習してプロでも目指す気か?」
笑いながら、夫が言った。
夫もゴルフをするが時々付き合い程度に行くくらいだ。
家にいてもゴルフ番組ばっかり見る私に、節約して家事をおろそかにしないという約束で、夫も了承してくれて、仕事を辞めた私はゴルフを続けられた。
 
子供の頃から運動神経は人並み、小学生時代はアニメのアタックナンバーワンに憧れてバレーボールに夢中になり、中学でバレー部に入部したが大会で上位に入ることも無く、高校では入部したものの初日で退部。 大人になって、テニスやマラソンに山登りとやってはみたものの数年は続いたがパッとせずに終わった。
そんな私がだ、何故だかわからないが、ゴルフが大好きになったのだ。
 
泣きそうになったあの日は、夏の打ちっぱなし場だった。
2回の隅から5打席までがレッスンプロに教えてもらえる練習場だ。
最近レッスンを始めたばかりのボートレーサーの若い女子、彼女が片手打ちの練習をしていた時だった。
彼女は体幹がしっかりしていて、初めてとは思えないくらい最初から上手かった。
さすが種目は違えども、プロになっているくらいだ運動神経は抜群に良いのだと羨ましかった、羨望の眼差しを向けつつ、レッスンプロに聞いてみた。
 
「先生、彼女はもう片手打ちしているんですね、凄く早いですね」
 
片手打ちをするまで私は随分かかったから……。
 
「うん、のみこみが早いよね、言ったことを理解してすぐに出来るから」
 
そこだよなーっ、と強く感心した。
私の場合は、先生が言っていることはわかっているつもりなんだけど、再現できないのだ。
身体が言うこと聞かない、何でだろう?
私は大きく頷いて準備運動をしながら、彼女の片手打ちをじっと見ていた。
 
「あのね、気を悪くしないで聞いて欲しいけどさ、言った事をすぐに再現できる人は生まれながらに運動神経が良いのよ、特別な運動神経があるのよ、彼女が100を切るのもそう遠く無い日だと思うよ」
 
「生まれ持った特別な運動神経、確かに私にはない、しかも始めたばかりなのに100を切る日も遠く無いって!」
 
 
凹んだ、結構凹んだ。
凹みながらも複雑な気持ちだったのである。
 
だって、先生はレッスンプロでしょ!
私みたいな普通のおばさんでも上手くなるように教えてくれるんでしょ!
こんな私でも100を切りたいって、練習に来てるのよ!
もう何年やってると思ってるの!
と言いた気持ちが半分、後の半分はそんな生まれつきの運動神経なんて、今更言われてもどうしようもない話じゃないの、どうすりゃ良いのよこれからの私は、というやや諦めにも
近い虚しさで心折れていた。
 
一生懸命練習していた私の気持ちがちょっと萎えたのだ。
それで泣きそうになったのだ、でも泣かなかった。
信じていたのだ、私なりに努力をしていれば凡人でも花を咲かせる事を。
希望と目標を持って、諦めなかったらいつかは100を切れるのだと。
何となくだが信じていたのだと思う。
 
だいたいゴルフを始めた人はまず、100切りを目標に頑張る。
スコアの100を切る、というのはかなり難易度が高い。
なぜならゴルファーの3割くらいしか100を切っていないという統計がある。
何故100なのかと言うと……
 
これは私の勝手な見解だが、人に迷惑をかけずにラウンドが出来る。
余裕を持ってゴルフを楽しめるのが100を切るゴルフじゃ無いだろうか。
そしてゴルフならではの気付きや素敵な事がいっぱいあるのだ、だから1日も早くそのステージに辿り着きたいと思うのではなかろうか。
 
それから間も無くだった、私が100を切ったのは!
 
夏も過ぎて秋らしい季節になった頃。
主人と友人とでラウンドしていた時だった。
いつものように「クラブ何本か持って走れ!カートに乗ってる場合じゃない」と言われ、とほほな気持ちと、偉そうに言いう夫への悔しく腹立たしい気持ちで走っていた。
でも、スコア的にはそう悪くなかった、割と順調だったのだ。
その日も多少は走ったけど、あまり疲れてないし、秋という季節を楽しめていた。
今日の空って秋らしい雲だなぁ、あの鳥の声はトンビかな、花や緑に心を寄せる余裕が出来ていた。
 
たくさんの努力を長い時間続けてやっと花が咲いた!
何度も何度も心折れる時を乗り越えて、ようやく辿り着いたのだ。
あの瞬間を今も忘れない、小躍りしたくなるような瞬間。
グリーンの上で飛び跳ねたい衝動をこらえて、嬉しさをかみしめた。
すぐにレッスンプロにもメールで報告した。
とっても喜んでくれた、嬉しかった、凄く!
 
この日の夜、ゆったりとお風呂に入りながら、いろんな事を思い返していた。
ここに来るまでの道のりや、あの日レッスンプロから言われた事も。
生まれつきの運動神経がないなら、私は努力するしかない。
何倍も努力するしか上手くなる方法は無いのだと思ったから、こんなに嬉しい日を迎えられたのだ。
 
何度も何度も練習するのが「ドリル」子供の頃もやった繰り返しの学習だ。
「ドリル」は単調で時間もかかって地味だ。
投げ出したくなる日もあったし、心折れて落ち込んだ日もあった。
趣味の一つだって言うのに、こんなに思い詰めなくても良いと思うのに。
 
でも、友達に言わせれば、「そんなに好きな事が見つかって羨ましいよ、大人になって、夢中になることってそうそう無いよ」と。
確かにそうだ。
どんな時も諦めずに頑張ってる自分が好きだったし、同じ気持ちで頑張ってる仲間と共有した気持ちは今でも貴重な思い出で宝だ。
 
そして、ゴルフのお陰で大げさに聞こえるかもしれないが、いろんなことが「ドリル」だと思えるようになった。
 
小説を書く練習も、料理のレパートリーを増やす事も、ワンコの躾けや植物を育てる事も「ドリル」と言う繰り返し行う練習という努力が身を結び必要なのだと。
 
人生はこんないろんな「ドリル」をいくつも積み重ねて、心や生活を豊かにしていくものだろう。
ある有名なスポーツ選手は、報われて初めて努力したと言えると言っている、プロの世界は厳しい、上には上があるものだ。
 
でも私はプロじゃ無いのだ、諦めないで続けている限りきっと報われると信じたい。
 
 
 
 
***
 
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2023-02-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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