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メディアグランプリ

チョコレートの楽しみ方

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:串間ひとみ(ライティング・ライブ福岡会場)
 
 
「先生、これ」
 
授業を終えて職員室に戻ると、入り口に近い廊下で私を待っていたであろう生徒からかわいらしい箱を渡された。
 
その日はバレンタイン。学校によっては、職員室にお菓子を持ってくるなどご法度なところもあるのかもしれないが、うちは調理科があることもあって、割とそこらへんはゆるりとしている。そのため生徒が職員室に手作りのお菓子を持ってくること自体はめずらしくない。
 
教材を自分のデスクに置き、箱を持って職員室後ろにある給湯室に移動した。冷蔵庫に保存しなければならないお菓子の可能性があるからだ。
 
箱を開けようとしているとしていると、私が生徒から箱を受け取るところを見ていた先生方の人だかりができた。無理もない。なぜなら私を待ちかまえていた生徒は、バレンタインにも関わらず『男の子』だったからだ。
 
集まってきた先生方の熱い視線を感じつつ、ゆっくり箱を開けると、そこには、つやつやとしたチョコレートでコーティングされた円柱型のケーキが入っていた。このつやつやとしたものを『グラサージュ』というのだが、その当時はまだあまり知られていなかった。当然、私以外の先生方はほぼご存じないので、その見た目だけでも驚かれたことだろう。
 
もう少しその見た目のきれいさを堪能したかったが、
 
「中身が見たいけん、切って欲しい」
 
というリクエストで、真ん中から慎重に切ってみた。
 
「おおっ!」
 
外野から先生方の声が漏れた。
 
高校1年生男子の作るケーキとしてグラサージュがかかっているというだけでもハイレベルなのに、中身はガナッシュと2種類のムースが入ったミロワールショコラというケーキだったのだ。
 
調理科の生徒とはいえ、おそるべし高校1年生男子!
 
その彼の夢が、『ショコラティエ』になることだった。これまた、その当時パティシエに比べて認知度の低かったショコラティエという職業が、バレンタインの一件があってから、私の中で急に大きな存在となった。せっかくの機会だからと、あらためてチョコレート、ショコラティエについて調べてみると、なんとも奥が深い。
 
たとえばチョコレートの原料であるカカオ豆はどこでとれるかご存じだろうか? 赤道をはさんで北緯20度から南緯20度以内の高温多湿の熱帯(カカオベルトと呼ばれている)でしか生育しないといわれている。つまり外国の熱いところというイメージがあると思う。ところが日本でもカカオ豆が作られているところがあるのだ。しかも東京! というと驚かれるだろうが、その一部である小笠原諸島。カカオを日本で育てたいという平塚製菓によって2003年に始まった東京カカオプロジェクトにより、視察、栽培、製品化と10年以上かけて、2019年に『TOKYO CACAO』として発売された。
 
以前は、外国で取れたカカオ豆、もしくはそれを製品化しやすいカカオマスという状態で輸入してチョコレートを作るというのが主流だったが、今ではメーカーやショコラティエ自らが、カカオ豆からチョコレートになるまでのすべての工程を行うビーントゥバーを行っているところも多い。ショコラティエさんのチョコレートに対する考え方なども、様々なメディアを通して知ることができると、より一層興味がわくというものだ。
 
そもそもチョコレートは温度管理が難しく、非常にデリケートな食品である。お菓子を作る職業の中で、チョコレートを専門に扱う職人だけをパティシエではなく、わざわざショコラティエと違う名前にしているあたり、やはり特別なのだ。
 
そういうことを知っていくうちに、すっかりチョコレート、ショコラティエの魅力にはまり、フランス旅行に行った際も、チョコレートのお店は必ず旅の目的の中に入れている。そしてこの時期私が楽しみにしているのが、『サロン・デュ・ショコラ』というイベントだ。
 
『サロン・デュ・ショコラ』とは、1995年にフランスのパリで始まった世界最大規模のチョコレートの祭典で、本場パリでは10月下旬から11月上旬に開催され、世界中のショコラティエ、パティシエ、カカオの生産者など、チョコレートに関わる方々がこのイベントに集まってくる。チョコレートの販売はもちろん、ショコラティエによるワークショップなどのイベントも楽しみの1つで、来場者は9万人を超えるとか。
 
日本では三越伊勢丹が主催(全国で6ヶ所+オンライン)し、毎年1月から2月のバレンタイン前に開催されている。ここでは、ふだん日本では見ないショコラティエのチョコレートも出たりするのだが、味もさることながら、食べるのがもったいなくなるほどの美しさもあり、もはや芸術である。正直お値段もそれなりにするので気軽には買えないのだが、毎年じっくり選んで、自分へのご褒美として買う。
 
先日福岡岩田屋の『サロン・デュ・ショコラ』で、私のお気に入りの1つであるお店のスタッフさんから、平日の閉店間際だったこともあり、いろいろなお話を聞くことができた。
 
「ふだんは東京の工房にいて作っている方なので、直接お客様から自分が関わっているチョコレートのお話を聞けるのは嬉しいです」
 
そうなのだ。食べるものに限らないのだろうが、チョコレートの奥深さを知り、作っている方のことを知り、そうして食べるチョコレートは、味だけでなくいろいろな要素を含んで楽しめるのだ。
 
もうすぐバレンタインのこの時期、ちまたにはたくさんのチョコレートが並んでいる。ぜひ、そのチョコレートの裏には、たくさんのドラマがあることを想像しながら食べて欲しい。きっともっとチョコレートが特別おいしく感じられると思う。
 
ちなみに私はこの時期チョコレートを食べるときには、パティシエになった元ショコラティエ志望の男の子のことを思い出している。
 
 
 
 
***
 
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