メディアグランプリ

「推し」との出会い

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記事:あんこ(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
私には、ここ5年ほど熱中している「推し」がいる。その「推し」に出会ったのは、15年前、2008年のことだった。
当時、旦那の転勤で札幌に住み始めた私。テレビを付けると、北海道ローカルの、初めて見るCMがたくさん流れていた。
その中に、某携帯会社のCMで歌を歌いながら出てきた5人組がいた。
検索すると、すぐにわかった。TEAM NACS。森崎博之、安田顕、戸次重幸、大泉洋、音尾琢真。彼らは、札幌にある北海学園演劇研究会の先輩後輩で結成された演劇ユニット。当時から、「水曜どうでしょう」やたくさんのテレビドラマに出演していた大泉さん。綾瀬はるかが好きな旦那の影響で、「ホタルノヒカリ」というドラマを見ていたおかげで、彼女と共演していた安田さんも知っていた。でも、他の3人は初めて見る顔だった。TEAMNACSのことを知りたくなって、まだ段ボールが積み上がっていた札幌の家のリビングでPCを開き、ウィキペディアを見ていたあの日のことを、私はなぜか昨日のことのように鮮明に覚えている。
彼らは地元北海道ではかなりの人気者だった。私が働き始めた職場の人は、みんな彼らを知っていて、ローカルの番組も全国放送のドラマも、みんな見ていた。だから、私も自然と彼らのことを知っていった。
2008年は、リーダーの森崎さん(以後リーダー)が、今も続く農業や食育の番組「あぐり王国」を始めた年で、私は「リーダー、こんなこと始めたんだ……」と、ちょっと斜め上から見ていたわけなのだが……。
3年の札幌生活はあっという間に過ぎていき、今度は関東へ転勤となった。札幌を離れたことで、TEAM NACSからもいつのまにか離れてしまった。
働き始めた千葉の職場で出会ったのは、宝塚が大好きな新入社員。その子に誘われ宝塚を観に行き始めた後は、ミュージカル、そしてストレートの舞台まで手を広げるようになった。
そんなある日のこと。面白そうだと思い、観劇仲間と行った舞台。舞台や映画などを見る時には、いつもパンフレットを買う私は、その日もパンフレットを買い、開演前に配役だけチェックしていたわけだが……なんと、そこに「音尾琢真」の文字が! 札幌を離れてから5年が経っていた。しかし、周りは北海道とは縁もゆかりもない友人たち。残念ながら、その時点では、彼女たちは音尾さんのことを知らなかった。舞台自体はもちろん集中して観ていたが、音尾さんが出てくると「生音尾琢真!」と心の中で1人、テンションが上がっていた。
この舞台がきっかけとなり、東京でTEAM NACSのメンバーの舞台を観ることができると気がついた。それからしばらくして、安田さんの舞台情報を見つけた。「安田顕の芝居が観たい!」と思い、チケットを取った。安田さんの舞台もすごく良かった。
「この人達の舞台が観たい!」私の中で急にわき上がった感情。その勢いのまま、ファンクラブに入った。
それまでのTEAM NACSの芝居やバラエティなどを一気に見始めた。そんな中、リーダーが北海道ローカルでラジオ番組をやっていることを知ったのである。聴いてみると、「あぐり王国」さながらの真面目な野菜の話もするかと思えば、ちょっと下ネタも混じった話もする、本当に面白いラジオだった。いつしか、このラジオ番組が私の楽しみになった。「忘れ物選手権」のテーマの時には、ブラジャーを忘れた実体験をメールして、初めてラジオ番組で読んでもらった。また読んでもらいたくて、ラジオを聴くだけでなく、メールも送るようになった。
そして、私の運命を変えるイベントがやってきた。リーダーのファンクラブツアー。行き先は、リーダーの大好きなうどんの国香川県と、水曜どうでしょうでリーダーが訪れた愛媛県。ファンクラブツアーの抽選に申し込みをし、当選した。行けることがうれしい反面、不安があった。会って話をするような、いわゆる「ファン友」がいなかった。そもそも、NACSファン歴が浅かった。こんな私が1人で行って、果たして大丈夫なのだろうか?
しかし、すぐに私の心配は泡と消えたのである。みんな、本当にやさしかった。わからないことがあれば身振り手振りで、うれしそうに推しの話をしていた。みんなとすぐに打ち解けた。そして何より、近くで見るリーダーは、やさしくてお茶目でかっこいい、最高の人だった。私はリーダーに、完全に惚れてしまったのである。
しかし、リーダーは他の4人と違い札幌在住で、北海道ローカルの番組に出たり、道内各地で講演会をしたり、北海道を拠点に活動している。東京在住の私が、大好きでたまらないリーダーを応援するにはどうすれば良いのか、考えた。そして、思いついた。ラジオだ! ラジオで毎週メールを送れば、応援していることが伝えられるかもしれない。そして私は、東京に帰ってきた翌週からメールを出し続けた。ラジオネームも、一度読まれたブラジャーネタをもじったものにした。ラジオネールが面白いこともあり、読まれる回数がどんどん増えていった。
あれから、約5年が経とうとしている。私は今も、同じラジオネームで毎週メールを送り続けている。いつしかファン友の間で、ヘビーリスナーとして覚えてもらうようになった。ありがたいことに、リーダーにもラジオネームを覚えていただいている。Twitterのハッシュタグで盛り上がるこのラジオのおかげで、私の趣味アカウントのフォロワーは、1300を超えてしまった。あのファンクラブツアーに、不安を抱えて1人で乗り込んだ私が、今はファン友と楽しく推しの話をしている。たった5年、されど5年。今の私の生活には、NACSとは切っても切れないものとなっている。あの時ツアーに当選した奇跡、あの時であってくれたファン友、そして何よりもこれ以上ないほどに魅力的だった私の推しに、感謝しなくてはいけないと思っている。
 
 
 
 
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2023-02-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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