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メディアグランプリ

サウナは冒険だと知った崖っぷち会社員


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:溝口弘子(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「ああ、サウナは、冒険だ」
これは、2か月前初めてサウナに行き、サウナ後の「ととのい椅子」に体を預けた時の私のつぶやきだ。
それまでは私のサウナのイメージは、狭い空間におじさま達がぎゅうぎゅうに座ってひたすら熱さをガマンして体に溜まった汗とアルコールを出しているだけ、というものだった。そして、なんでわざわざお風呂屋さんに行ってまで冷たい水風呂!?
と、とどちらかと言えばネガティブなイメージだった。
 
3か月前から、仕事に限界がきていた。量も質も、チームメンバーとの人間関係も。
半年前に管理職になり、これまでの仕事と全く異なる部署への着任。同じ会社なのに交わされる言葉が全く分からない。係長時代には見えてなかった管理職としての膨大な仕事と作業の量。年上メンバーとの考え方の違いで委縮の毎日。緊張の連続で食事が喉を通らず眠れなくなった。占いでもスピリチュアルでも楽になれるなら頼りたい。出勤中は「今から事故でも巻き込まれて入院にならないかな」と思う日々。
 
でも、残念ながら事故も起こらずコロナもスルーする生まれ持ったこの健康な体。泥のような疲労感は拭えないが、仕事は毎日山のようにやってくる。考える体力気力もなくなった。メンバへの指示も自信がなくなった。「着任の時は笑顔だったのにだんだんと疲れていませんか」と周りも心配し始めた。
 
そんな中、サウナ通いのきっかけは先月の「寒波」だった。
私は冷え性だ。冬になるととにかく足が冷たくなる。これまで毎年なんとかしのいでいた。しかし、今年の寒波は特に身に沁みる。
我が家から車で5分のところに観光ホテルがある。大浴場は温泉。この冷え切った足をとにかく温めたい。その一心で車をホテルへ走らせた。レッツ日帰り温泉。
 
フロントでの受付もそこそこに大浴場へ。あれこれ済ませて湯舟に浸かる。
あー、体がじわじわと温まる。極楽極楽。体が温まってちょっと体の力が抜け冷静さが戻ってくると「サウナ」と書いた看板が目に入ってきた。
以前からサウナブームは耳にしていた。しかし「整う」という意味もよく知らない。10年以上前になんとなく銭湯のサウナに少し入ってみたが、呼吸をすると熱い空気が鼻の穴を通る痛さに負けてそそくさと出たのだった。
 
そんな黒歴史を思い出しながら、でもさ、せっかく1000円払っているし、より体を温めたいこともあり、ということで「サウナ」の扉に手をかけた。
 
サウナは、熱い。確かに熱い。熱いがしかし、10年前のようなイヤな感じはしない。むしろ、じっとして動かず、何も考えない、静かなこの時間は何だ。ここ半年、私が忘れていた時間だ。
毎日上司やチームメンバーから名前を呼ばれ、対話をし、頭を抱えつつ問題に対して考え、常にオフィスを走り回る、そんな終りのないマラソンのような日常が少し遠く感じる。
この熱い空気が充満する部屋でじっとしていることは、強制的に思考を止めてくれる。
 
汗も少しずつでてきた。私はあまり汗をかかない体質なので汗がでてきたことが少し嬉しい。おまけに汗と一緒に体に蓄積されていたいろんなものが出てきているようだ。
初めてだからか6分ほどで耐えられなくなり、周りのベテランサウナーさんの見よう見まねで水風呂へ。
桶に水をくんでちょこっと膝にかけただけも震え上がる。ベテランサウナーさんは頭から水をかぶり嬉しそうに水風呂に肩までしっかり浸かっている。う、うらやましい、いつか私もあの境地まで行きたい、次回への課題にしようと心に誓い、露天風呂のある外へ。
 
露天風呂の隅にあるプラスチックの白い「ととのい椅子」に座って外気浴。なんとも外の空気が気持ちいい。1月なのに、裸で外に出ても外気が気持ち良いと感じるのだ。おそるべしサウナ。
 
外気浴からの2セット目。サウナ室内ではベテランサウナーさん同士の会話が耳に入ってきた。
いつの間にか私にも、あのサウナが良かった、あそこはロウリュでアロマ水を使っているとか、あそこは値段が高い、等々を教えてくださった。なんだか会社関係以外の人と話すことも久々だった。
 
「ああ、サウナは、冒険だ」と、その時思った。
 
私にとっての冒険とは「旅に出る(様々なサウナに行く)」「人と話して情報を得る」「アイテムを手に入れる(後日、サウナ用のタオルやサウナハットを購入)」「レベルアップする(今は水風呂にも入れるようになった)」というロールプレイングゲームのことだが。
 
そんな新たな冒険を見つけた私は、あれからサウナを巡っている。整うことにはこだわっていない。
純粋にあちこちの温泉施設を巡って、サウナで無心で汗をかき、水風呂に入り、無心で外気浴をくり返す。そして風呂上りの瓶牛乳の美味しさったら。世の中は新たな発見に満ちている。
 
とは言え、サウナで無心になったり汗を大量にかいたからと言って、急に気持ちがきれいさっぱりとなったり、仕事がスムーズに進んだり、人間関係が良くなるわけでもない。
相変わらず出口のない多忙さと自分のポンコツっぷりにため息の日々だが、よくよく考えたら、生きていくこと自体が冒険で、世の中のみんなもそれなりに大変だよな、と思う日々である。
 
 
 
 
***
 
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2023-02-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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