スティーブジョブズが歩んだヒーローズジャーニー
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記事:藤野宏隆(ライティング・ライブ京都会場)
使命を得た主人公は、冒険の世界に身を投じ、試練を乗り越え、自らに与えられた使命を達成することで、元の世界に戻ってくる。
人々を魅了する物語に通ずるヒーローズジャーニーだ。洋の東西を問わず、英雄の物語にはこのストーリー展開が当てはまる。各国の神話から導き出された理論であり、そう考えると、人類が文字を発明するよりも早くから口伝の中で人類はヒーローズジャーニーを紡いできたと言えるのだから驚きだ。
私はこれをあくまで創作物に見られるフォーマット、人類が頭の中で夢想したことを消費されるコンテンツとして昇華させるために用いるツールだと考えていた。
しかし、それだけではないのだと感じた。ヒーローズジャーニーは現実の世界においてもヒーローがヒーローになるために歩むべき道のりなのだと強く感じたのである。
私がそう感じるに至ったのはある人物が自分の人生について語るスピーチを聞いたからだ。
その人物とは、スティーブジョブズ。世界一の時価総額を有するAppleの創業者の一人であり、世界中の7人に1人が使用すると言われる数々のApple製品を世に送り出した実業家。彼が2005年にアメリカ、スタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチは、卒業する学生に向け、自らの人生を語りながら、卒業生たちのこれから広がっていく将来に静かにそして熱い檄を飛ばすスピーチとして今なお語り継がれている。
このスピーチ自体は以前にも見たことがあったのだが、最近、このスピーチを改めて見る機会があった。そこで感じたのが、そのスピーチの上手さは当然のことながら、彼の人生がヒーローズジャーニーの形を見事になぞらえていることだ。世界を変えたと言われる人物は単純な輝かしい道のりを歩んできたわけではなかった。何度も試練を乗り越え、その結果として現代のヒーローとなっていたのだと考えさせられた。
彼は生まれると同時に養子に出された。実母は未婚の大学院生で、我が子を養う余裕など無かったからだ。裕福な弁護士の家庭に引き取られるはずだったが、間際にその話が破談になり、彼は決して裕福とは言えない家庭に引き取られることになる。その後、成長し、大学に通うようになるが、卒業することもなく退学してしまう。大学の寮を追われた彼は寝床も、日銭も保障されない生活を送る。また、Appleを創業し、順調に会社を大きくしてきたと思ったら、今度は他の経営陣と考え方の違いからAppleを解雇されてしまう。このように彼は何度も自分の立場が急転直下する場面に遭遇する。
スピーチをしているのは世界にイノベーションを起こした人物であり、彼が語る物語の最終的な結末そのものなのだが、その物語の主人公は現在のスティーブジョブズからは想像できないほど、困難な状況に何度も直面するのだ。そしてその度に聴衆と比べて明らかに低い地位にまで落ちてしまう。しかし、彼はそこから何度も這い上がってくるのだ。
退学した後に大学で潜り込んで密かに受けていた講義は、その後に作り上げるマッキントッシュをマイクロソフトのパソコンとは異なる強みを持ったパソコンに仕立て上げることに役立った。Appleを解雇されたことで、しがらみから解放されたことは、彼の人生に創造の余地を持たせた。そうして、ピクサーや後にAppleに買収されるNeXTを立ち上げ、自身が再びAppleに舞い戻る土台を築き上げていく。
およそ15分のスピーチの中で彼の人生がヒーローズジャーニーの繰り返しだったことが示される。これがフィクションだとしたら、ご都合主義のストーリー展開だと指摘する視聴者も出てくるかもしれないほどのスクラップアンドビルドの繰り返しだ。
スティーブジョブズが、聴衆を飽きさせない戦略としてヒーローズジャーニーの形を使ってスピーチを組み立てていることはもちろんあると思う。彼はスピーチそのものが上手いことでも知られているので、それぐらいはやってのけるだろう。しかし、自分の人生を物語る時に誰もがヒーローズジャーニーの形で語ることができるだろうか。勇猛果敢な選択を自らの能力で成功させ続けてきたことでたどり着いた自らの栄光ある経歴を並べるだけで人生を語ってしまう人物もいるだろう。
世界的なヒーローが歩む道のりは現実世界の現代にも当てはまる普遍的なものだった。鬼を退治していなくても、魔法が使えなくても、現代において世界を変えた人物の歩んできた道のりはまさにヒーローの道のりだった。スティーブジョブズという人物の魅力を改めて感じるとともに、人類が物語というフォーマットを手に入れて以来、紡がれてきたヒーローズジャーニーの持つ力強さと魔力を改めて感じたのだった。
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