福山雅治さんのあの曲を聴くといつも思い出す、29年間秘密にしてきた恥ずかしい失恋話
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記事:辻岡正典(ライティング・ゼミ2月コース)
もし福山雅治さんが芸能人になっていなかったら、私はどんな人生を歩んできたのだろうか。ときどきそんなことを考えてしまうときがある。今回もまた考えてしまった。
「あなたの人生で最も手痛い失恋話は何でしょうか?」
ある人から突然こんなことを聞かれた。ただの失恋話ではない。“最も手痛い”失恋話だ。
「まいったな」
反射的にそう思った。私は自分の恋愛について話すのが好きではない。変な脚色が付いて、勝手に広まりかねないからだ。
だが、今回は諸事情によりどうしても話さざるを得なかった。私は意を決し、これまで誰にも話したことが無い秘密の失恋話を提供した。
「高校3年の秋、好きで好きで仕方なかった女の子と付き合えることになり、夢のような日々を過ごしていました。冬になり、1月以降は大学受験でしばらく会えなくなり、久しぶりに会えた!と喜んでいた翌日、卒業式の日にフラれました。その夜、人生で初めて号泣し、何を思ったか、福山雅治さんの楽曲『恋人』の歌詞を書いてその女の子に送りました。いろんな意味で痛い失恋の思い出です」
今から29年前、1994年3月1日、高校の卒業式の日に私は大好きだった彼女にフラれた。まったく想定していなかったので、とてもショックだった。上述の通り、人生で初めて号泣した。そして、福山雅治さんの楽曲『恋人』の歌詞をルーズリーフに書き写して、その女の子に郵送した。
???
今思うと、この行動はかなり痛い。受け取った彼女はどんな気持ちだったのだろうか。嫌いになって別れた男から、ラブソングの歌詞が直筆で送られてくるなんて。正直、キモい。福山さんの『恋人』はとてもいい曲なのに、もしかしたらその彼女にはキモい曲と記憶されているかもしれない。今思うと、福山さんには大変申し訳ないことをした。
私は自他ともに認める福山さんの大ファンだ。ファン歴は30年になる。いい機会なので、当時なぜあのような行動をとってしまったのか、ちょっとふり返ってみたいと思う。
出会いは不意にやってきた。
「福山雅治って知ってるか?」
今から30年前、高校2年の秋。日が暮れたグラウンドでサッカー部の居残り練習を終えたころ、チームメートのK君が私に話しかけてきた。
「福山雅治がやってる深夜ラジオ、めちゃくちゃおもろいぞ」
「マサハルって、あのチェッカーズの?」
当時、マサハルと言えば、人気絶頂だったチェッカーズのマサハルしか私は知らなかった。
「アホか、それは鶴久政治や。違う違う、福山や。福山雅治。ラジオが下ネタ満載で、とにかくめっちゃおもろいねん」
クールなK君が珍しく「下ネタ」という言葉を口にしたことに軽く驚いた。
「木曜日のオールナイトニッポン2部。深夜27時からやけど、マジでおもろいから、一回聴いてみ」
K君は具体的な放送時間まで教えてくれた。本気で推してくれていることが伝わってきた。
「ほな、一回聴いてみるわ」
私はK君にラジオを聴くことを約束した。珍しくK君の推しが強かったこともあるが、高校生男子なら誰もが好む「下ネタ」という響きに惹かれた点は否めない。
とはいえ、深夜27時からの放送をリアルタイムで聴くのは辛すぎる。というか、絶対無理。私は、ラジカセでタイマー録音をセットし、カセットテープに「福山雅治のオールナイトニッポン」を録音した。
翌日、録音したテープを再生してみると、聞こえてきたのは少しチャラい口調で話すお兄さんの声だ。
「この人が福山雅治か。チャラいな。嫌いじゃないけど」
これが私の第一印象。内容はさすが深夜27時からのラジオ番組だった。おそらく女性はほとんど聴いていなかったのだろう。男子が好む下ネタ、というかエロい話が断続的に続いた。(少なくとも私の記憶ではそうなっている)
「この人、ラジオでエロいことばっかりしゃべってて、アホすぎる(笑)。でも、めっちゃおもろい!」
高校生男子のハートを掴むのは、この1回で十分だった。
この日を境に私は福山さんに好意を持ち始め、「福山雅治のオールナイトニッポン」を毎週聴くようになった。聴き始めてすぐに木曜2部から木曜1部(深夜25時~)に昇格した。ドラマにも出演し、福山さんの人気が急上昇し始めた。CMにも起用された。
一方的に親近感を持っていたエロいお兄さんがスター街道を駆け上がっていくのを見るのは嬉しかった。どんどん売れていっても、ラジオでは相変わらずアホな話をしてくれていた。そこがまた魅力的だった。
福山さんのラジオでは、当然ながら福山さんの楽曲が流れる。おのずと、福山さんの楽曲も好きになっていった。1993年9月に発売された『恋人』は、別れた元・恋人の女性に向けた未練の気持ちを綴った名曲だ。発売以来、何度も聴いた。
そして、迎えた1994年 3月1日、高校卒業式の日。私は大好きだった彼女にフラれた。帰宅して少し冷静さを取り戻したとき、それまで何度も聴いてきた『恋人』の主人公と同じ気持ちだと思った。そして、私の思考回路は次のように働いた。
「『恋人』の歌詞を送れば、自分の気持ちが正確に伝わるに違いない。大好きだという気持ちが」
私は涙をこぼしながら、ルーズリーフに歌詞を書き写した。そして、未練たっぷりな気持ちを書いた手紙と一緒に彼女の自宅に郵送した。
彼女から返事は来なかった。そのまま私の恋は終わった。
今ふり返ると、我ながらやっぱりちょっとキモい。この先私が有名になるようなことがあったときに、これを当時の彼女に暴露されるととても困る。送ったものは既に焼却処分されていることを願わずにはいられない。
もし福山雅治さんが芸能人になっていなかったら、私はどんな人生を歩んできたのだろうか。今回また考えてしまった。少なくとも、フラれた彼女に『恋人』の歌詞は送っていない。もしかしたら、違う歌手の曲なら復縁の可能性はあったのだろうか。
いや、福山さんは何も悪くない。福山さん、ごめんなさい。問題はそこじゃない。それはわかっている。
この話、福山さんのラジオにも投稿しようかな。
***
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