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メディアグランプリ

子育ては自分が青信号になれば楽しい


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:久田一彰(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「終わった……」
来月3歳になる目の前の息子をして、悲壮感を込めて思わず呟いてしまった。雨上がりの公園には水溜りがある。そこに足首まで靴ごと突っ込んでいる息子は、私の気持ちとは正反対に笑顔で立っている。
 
「おわった!」おうむ返しで息子も笑顔で言葉を発した。よっぽど楽しいのか、その顔には迷いもなくスッキリとしている。親の心、子知らずとはよく言ったものだと感心するが、さて、これからどうしよう。一瞬頭の中が真っ白になり、そのまま遊ばせようか、一旦着替えのために帰ろうか途方に暮れてしまった。
 
雨の日は外には行けないので、家で遊ぶのだが、部屋のスペースが限られているのでだんだんと息子は飽きてくる。そうすると、おもちゃをほったらかして、テーブルの上にあるGoogle Nest HubでYouTubeを見始める。これは家庭用のタブレットみたいなものだが、時計・フォトフレーム、天気情報、音楽再生、動画視聴などの機能も搭載しているので、思った以上に役に立つ子育てアイテムだ。しかも音声認識ができるので、手が離せない時も、「OK,Google!」と言えば、きちんと反応してくれるから便利である。
 
生まれた時から息子はこれに触れているので、2歳にしてすでにお気に入りのYouTubeコンテンツがあり、自分でどんどんとスワイプしたり、早送り、巻き戻しもおちゃのこさいさいだ。もはや、デジタルネイティブ世代をとうに超えた、クラウドネイティブ世代であり、A Iネイティブ世代でもある。親の私としては、画面を見てばかりいるよりも、外で元気に遊んでほしいと思う。そんな思いもあるから、天気が良い休みの日は外で遊びに行くことにしている。
 
前日の夜には、妻と予定決めをするのだが、天気予報を見ると0時くらいまで雨は降るものの、そこからは曇りでやがて晴れになる予報だった。晴れになるなら地面も乾くだろうし、公園でものびのびとボール遊びもできるだろうと想像した。朝には予想通り晴れはしたものの、道路が濡れていた。まあ、これくらいなら公園でも地面も乾いているから大丈夫だろうと踏んでいた。
 
「今から公園行くよ〜」と息子に声をかけると、画面から首が取れそうなくらい勢いよく振り返り笑顔でこちらを見た。やはり外に行くことは嬉しいようである。着替えさせて車に乗せてお気に入りの公園へ行く。アスファルトは乾いているし、一面の芝生も濡れていないようだし、これならのびのびと遊べる、ビニルボールも持ってきたから、ボール遊びも思いっきりできる。
 
「さあ、遊ぼう!」と息子を目の前の緑の大海原へ解き放ち、自分も後から見守りながらついていく。ボールをどんどんと蹴りドリブルをしながら前へ前へ、サッカー選手のメッシのように進んでいく。うまく蹴り込んでるなと感心していると、やがて芝生は切れて、公園の中にある畑の方へいく。
 
すると、土の中がキラリと光っている。「ん?」と思いながらもボールと息子は前へ前へと進む。「あ! 水溜りだ、ダメダメそっちに行かないで!」と、咄嗟に黄色信号機のように叫んでいたが、時すでに遅し。
 
ボールは水溜りに突っ込み、息子も「べちゃん!!」と言いながら水溜りへと走り飛び込みをしてしまった。こうなってしまっては、もう後戻りはできない。覆水盆に返らず、白いハンカチを染めたらもう後には戻らない。綺麗だった靴は、泥水で染められていくし、スボンも泥がはね、顔にまで水滴がついている。
 
急いでリュックの中からタオルを取り出し、顔を拭き、汚れた衣類も綺麗にする。それでもディフェンダーを振り切るメッシは、水溜りの中を突っ走っていく。ボールはもうどうでもいいのか、水飛沫を上げながらどんどんと、衣服を泥水で染め上げながらモーターボートのように進んでいく。もうこうなっては、いちいち衣類を綺麗にしていては、焼石に水だ。
 
私の中で何か吹っ切れて、そのままどんどんと遊ばせた。子供の外遊びは、できるだけ汚れないようにと思っていたのだが、染織家のように染めてもいいよ、という意識に変わった。すると、子供との時間は楽しいものに変わった。しないで欲しい、してはいけない、という赤信号の気持ちから、青信号になった途端、自分の中で堰き止めていた心が、ダムの放流のようにドドーッと、水位が下がり楽になっていった。
 
汚れたズボンや靴下、靴は洗えばいいだけなのだ。
 
そのために妻は小型の洗濯機を買ったのだ。バケツの形をして、底の羽が回ってパワフルに回る。これにお風呂の残り湯を注いで洗剤を入れてスイッチを入れるだけのかんたんな洗濯機。あとはすすいで洗濯機でもう一度脱水するだけ。といっても脱水は妻がやってくれたのだが。お湯を入れるまでは「面倒臭いな〜」と思っていたのだが、衣類や靴が綺麗になるのは見ていて気持ちいい。
 
この秘密兵器があれば、もう雨の日も水溜りも怖くはない。どんどん外で遊ばせることができるし、水溜りの中を突っ走る息子は楽しそうにしているし、親もニコニコできるしいいことばかりである。子育てにおいて楽しむポイントは、自分が子供に対して青信号になるといいのかもしれない。
 
 
 
 
***
 
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2023-03-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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