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「飼いならす」

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記事:芙美(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
世界で最も有名な本の一つであるサン・テグジュペリの「星の王子さま」。
この本で、最も有名なフレーズは「大切なものは目に見えない」だと思う。
 
このフレーズを言ったのは誰か知っているだろうか?
それは、一匹のキツネである。
「星の王子さま」は示唆に富むストーリーの連続だが、私にとってとくに印象に残っているのはこのキツネの話である。
 
キツネは出会い頭に王子さまにこう言う。
「おれ、あんたと遊べないよ。飼いならされちゃいないんだから」
 
「飼いならす」という日本語には、あまりポジティブなイメージは持ちづらいかも知れないが、私は「星の王子さま」で初めてこの表現に出会い、とても気に入った。
キツネは「飼いならす」を「仲良くなる」、とも言い換えた。
 
人と人が触れ合って、化学反応を起こす。
うまく行く時もあれば、うまく行かない時もある。
それが時間をかけて馴染んでいき、良い関係性を育めたとき、得難い、失いたくないものとなることがある。
 
私の人生にはいくつかの飼いならされた大切なグループがある。
 
とくに40歳を過ぎた今も心から大切に思うのは、中高の同級生とのグループ。
1クラス40人しかいない、宮崎県の山奥の全寮制の学校で、多感な6年間を過ごした友人たちは、文字通り同じ釜の飯を食った仲間で、言うなればもう兄妹。
 
個性と個性の、自我と自我のぶつかり合いで、中学1~2年の間は毎晩のように寮で大喧嘩を繰り広げていた。
14歳の女の子たちが、夜22時過ぎに女子寮の廊下に集まって座り込み、わんわん泣いたりした。
今となっては何がそうさせたのか記憶も定かではないが、人間関係を築く基礎と応用のトレーニングを毎日積み重ねて、私たちは黒帯レベルになったと思う。
 
そのうち、お互いの性格や相性で合う合わないが掴めては来たが、いつも同じグループで過ごすのかというとそういうわけではなく、着かず離れずの絶妙なバランスを取りながら、クラス全員無事に6年間を過ごし、卒業することが出来た。
 
例えばこんな生活を送ると、大人になってから知り合ったとしたら、絶対に友人になることはないような子たちと友人になれる。
 
大学からの友人はほとんどみんな努力家で真面目、さらに自立心が旺盛で積極的に社会的な責任を果たそうとするタイプだが(こう表現すると何の面白みもない四角四面、杓子定規な人間を想像するかもしれないが、そんなことはなく、私の語彙力の問題で、彼女たちは素晴らしく面白い人たちだ)、中高の友人には、一切働く気はないが、男性の扱いに非常に長けており、やる気を失わせずに男性をうまく立てて、理想の家庭を築いて幸せな人生を送っている人がいる。
 
そんな彼女について、私はとても自分自身では実行出来ないと思いながらも、幸せな人生を送るという一点において、全く迷いなく目的に向かって真っすぐなところを心から尊敬している。
 
彼女は可愛らしい容姿に加え、中高生時代から家庭的で男性に人気があり、男性の話を聞くときには笑顔を絶やさずニコニコしていたが、女性の前では完全に素で三姉妹の長女らしく時に厳しく接してくるタイプだった。
 
彼女が寮で2人1部屋の同室だったときは、きれい好きな彼女が部屋を掃除してくれるのはありがたいものの、ちり取りのごみを自分のごみ箱ではなく、私のごみ箱に入れてくることに驚き(とわずかなイラつき)があったものの、夜な夜な話してみると彼女の性格を徐々に理解することが出来て、愛着が生まれてくる。
単なる好き嫌いを乗り越えて、長く一緒の時間を過ごしたことで生まれてくる感情があるのだ。
 
私はこの状態はお互いがお互いを「飼いならした」からではないかと思っている。
「飼いならす」には、どうしてもやはり時間が必要である。
一朝一夕では「飼いならす」ことは不可能なのである。
 
彼女がその時私のことを実際どう思っていたのかは分からない。
ただその二人で過ごした時間や思い出はやはり否定されるものではないと思う。
今も会えば昔を懐かしみ思い出話に花を咲かせることが出来る。
 
人が愛着を感じるのは、その組織や場所そのものではなくて、やはり人と人との間にある関係性だと考えている。
「飼いならす」は、馴れ合いとは違って、それを大切に育める人にだけ与えられる宝物だと思う。
 
冒頭の「星の王子さま」のキツネは、最終的には王子さまにとってこの世に一匹しかいないキツネになった。
「飼いならす」には、時間と忍耐と努力が必要と言える。
けれど、「飼いならす」にはその価値が十分にある。
これからも人間関係を面倒がらずに少しずつでも育んで、私にとってのキツネを大切にしていきたいと思う。
 
 
 
 
***
 
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2023-03-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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