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マリーゴールドの花言葉  <<心の処方箋>>

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:あき(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
ジッとしてられない。
私は思わずソファから立ち上がり家の中をウロウロし出した。
 
「あー、ダメだ。緊張して吐きそう」
どんな言葉が返ってくるか想像すると、少しの期待と大きな恐怖が交互にやってきた。
 
ここまで来れば大丈夫なはず。
何度も自分に言い聞かせる。それでも高まっていく不安。
予定時間に時計の針が近づくごとに、心拍数も一つ上がっていくようだった。
 
ドキドキ。ドキドキ……。
14時15分。私の携帯に一本の電話がかかってくる予定がある。
ここで仕事をしたいと強く願った会社から。
 
書類選考。一次面接。二次面接。最終面接。
今まで準備したことが、この電話一本で全て決まるのだ。
 
気分を落ち着かせようと流していたプレイリストから、ある曲が流れた。
当時一番よく聴いていた、あいみょんの『マリーゴールド』
 
懐かしさや切なさを感じながらも穏やかな気持ちになれるメロディー。
可憐なクシュっとした花びらと太陽のような華やかさを併せもつタイトルの花も大好きだった。
 
だけどこの花には見た目以上に惹きつけられる強い魅力をなぜだか感じていた。
その花言葉は『絶望』、『悲嘆』、『嫉妬』。
いったい誰が考えたんやろう?
自分を表している意味を優しく抱きしめたくなる。
 
『マリーゴールド』を聴きながら、ソワソワして仕方ない私は目の前の海まで歩いて電話を待とうか考えた。当時住んでいた家のベランダから外を覗くと、青空の下にキレイな海が輝いて見えていたからだ。
 
「きっと、大丈夫……」
 
向かった玄関で立ち止まる。
いや、待て。万が一、大事な電話が浜風でよく聞こえなかったら?
先方に風の音がうるさく聞こえ、少しでも不快な思いをさせたら?
 
思考が慌ただしく駆け巡る。
結局、わたしは人生が変わる大事な連絡を玄関で俯いたまま靴を眺めて聞いていた。
 
「○○さん、選考の結果、ぜひウチで働いてもらいたいと考えてますがどうでしょうか?」
 
よっっしゃーー!!!
 
心のガッツポーズを悟られない程度に明るく返事をした。
もちろん答えは決まっている。
 
無我夢中でがむしゃらに手を伸ばし掴もうと思った場所。
私はこの日、ある外資系企業に入社することが決まった。
 
この電話を取ったときの年齢は誕生日を控えた28歳。
その後、契約期間1年を経て、雇用終了か正社員で迎えられるかの究極の2択を見事勝ち取った。それが30歳を目前に控えた10月末のことだった。
 
皆さんにとって20代はどんな人生だっただろう?
「外資系企業」で働く人ってどんなイメージだろうか?
 
人生を形成する上で20代の価値は計り知れない。
そんな大事な時期を……
私はずっと正社員で働いたことはなかった。
 
楽しくない職場と家とを往復する毎日。
一人で過ごす休日。友達も恋人もいなかった。
人生に希望も夢も持っていなかったのだ。
 
就職活動をろくにせず、学生時代バイトしていた営業の会社で契約社員という形でそのまま働いた。その会社の性質上、正社員雇用の可能性がほとんどないことを知りながらも。
 
口下手で赤面症で、視線が集まると心臓のドキドキが止まらない。
そんな自分に自信を持てるはずもなかった。
 
大企業から受ける営業の下請け仕事は何より結果が優先された。
営業が苦手で、なんとか頑張ろうと心理学の本を読み漁った当時の私。
小手先のテクニックを積み重ねて商品が売れたとき、胸の内に残ったのは自分への失望だった。
結果だけを追い求める中で、心の片隅で人を騙してるような感覚がいつも消えなかったのだ。
 
そんな仕事辞めたらいいじゃん。
心の天使がそう訴えても、心の悪魔は惰性を好んだ。
 
私はいつも強烈な「劣等感」と「コンプレックス」と同居していた。
それを形成したのは自身の「選択」と「行動」だったのに。
 
人生を変えたいなんて諦めが重なると思い浮かぶこともなくなった20代後半。
私にとって生きることは「日常を繰り返す」消耗だった。
 
いつものようにぼーっと天井を見ながらベッドで横になっていたとき。
ふと、ある言葉が記憶の片隅から蘇った。
 
メンタリストDaiGoさんが中学時代いじめを乗り越えたときに取った行動。
それは嫌いだった自分の特徴を紙に書き出し、全部反対に変えていくというものだった。
天然パーマならストレートパーマに。
太ってるなら痩せてるへ。
 
まるでタロットカードみたいだ。
一つの同じカードも、逆さまに向きを変えると意味が逆転するように。
 
自分が嫌いなら、それを全部反対にしてしまえば好きな自分に近づくのでは?
うんうん、至極真っ当な気がした。
 
心の中のズキズキする部分を並べてみた。
どんな手段でも商品を売りさえすれば良かった営業時代。
周りが留学経験者ばかりの環境で英語がコンプレックスだった学生時代。
社会に馴染めない私。
チャレンジすることを諦めた自分。
……。
書き出すと、どんどん出てきて止まらない。
 
性格や行動を変えるなんて簡単なことじゃないよ。
そんなこと誰よりも知っていた。
だけど書けば書くほど、「あーいやだ、こんな惨めな自分」と思い知らされる。
もし、今の自分を逆転させたらどうなるん?
 
正直、運はすごく良かった。
今の仕事の求人をたまたま人づてに聞いたことがあったから。
 
外資系企業といっても担当する部署では最初から高い英語力は必要なかった。
多様性を価値と考える企業文化があり、当時その部署では未経験者を広く採用していた。
一年後に契約満了か正社員登用かの厳しい判断があったといえ、入社すること自体のハードルが極めて低かったのだ。
 
採用ページに書いてある求める人物像を眺め、「点と点が線になる」ように見えた。
聞いたことある人も多いのではないだろうか?
Apple創業者スティーブ•ジョブズがスタンフォード大学卒業式で述べた言葉の一部。
振り返ると人生は繋がっている。無駄ばかりなんかじゃない。
 
私の20代は他人から見たら悲惨で真似したいものでは決してないと思う。
それでも学生の頃から目的がなかった私でも、惰性で続けた仕事を通して学びがあった。
「やりたくないこと」から「やりたいこと」に気づいた。
「苦手なこと」だけでなく「人より少しだけ得意なこと」を実感した。
 
売る仕事でなく、売った後のサポートに関わる業務。
業務に必要なツールや知識を正確に速く、自主的に学べる能力と好奇心。
変化が速い業界でも適応する柔軟性。
売って知らん顔するより、製品を使ったお客様の生活がどう豊かになるか手助けできる仕事に感じる魅力。
 
私は人より遅いノロマな亀だった。
大事なことに気づくのがいつも遅い。
人生経験も人よりずっと少ない。
社会に馴染めず不安と共に生きた20代。
上手く生きられない自分に落ち込むことは今だってある。
 
それでも前に歩み続けていたい。
それはもっと人生を楽しみたくなったから。
 
今も仕事や環境を通して新しい価値観は日々生まれている。
もっと行動して人と関わりたくなった。
もっと人生でチャレンジし続けたくなった。
 
マリーゴールドの花言葉は『絶望』
だけど、実はこの花にはネガティブとポジティブで真逆な意味の花言葉が存在していた。
 
『生命の輝き』、『変わらぬ愛』、『逆境を乗り越えて生きる』
 
そうか……
だからこの花が好きだったんだ。
 
迷ったら視点を変えてみよう。
魅力のタネがそこに眠っているかもしれない。
 
大切にしたい。
自分が変わる覚悟を持っていることを。
 
 
 
 
***
 
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2023-03-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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