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うさぎさんになりたい


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記事:吉川真理子(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
兎年だから思い出す。私の夢は「大きくなったら、うさぎさんになりたい」だった。
周りのみんながケーキ屋さんになりたいって言っているなか、私は生クリームが苦手で、その夢は私にはダメだなと思っていた。
 
東京の西の方に、羽村動物公園という動物園があり、当時は珍しい、たくさんのうさぎが放し飼いになっているコーナーがあった。中に入ってうさぎと触れ合うことができ、一緒に写真を撮ったり、撫でたり、抱っこできたりもした。
私はそこからすっかりうさぎの虜になったのだ。
だから幼稚園の時、憧れだったうさぎさんになりたかったんだと思う。
ふわふわで、お目目クリクリの愛らしい、あのルックスが大好きになった。
 
16歳の時、ペットを飼いたいと思い、憧れだったうさぎの事を思い出した。
たまたま駅前の5階建てのスーパーに行った時に、最上階の何気なく見に行った100均の隣に小さなペットショップを見つけた。
ぱっと見、うさぎはおらず、お店の奥の方に入っていくと、大きなキャベツに隠されたうさぎが1羽いた。なんと3,000円という破格のお値段がついていた!
この前ホームセンターのペットショップでは1万円だったのに……。
お店の人に話を聞くと、生後2ヶ月と言っていたが、明らかにもう少し大きかった。小学生の頃に、飼育小屋でうさぎの赤ちゃんが生まれたことがあり、大体の成長の大きさはわかっていたのだ。
どうもお店の人は、乗り気ではなく、あんまり売る気がないらしい……。
でも私はそのうさぎが妙に気に入り、何とか売ってもらい連れて帰ることにした。
 
ついに念願のうさぎさんと暮らし始めたのだ! 名前は茶色の毛から連想して「ぷりんちゃん」と名付けた。茶色の毛皮に白いファーと白の手袋をしているようで、何とも可愛い。
 
私が一人で育てたかったので、自分の部屋にケージを置き、トイレのお掃除やお水の取り替え、餌など全部やると張り切っていた。ただ日中は学校に行っていて、部屋に誰もいないので、ケージを閉めておくことが多かった。
実際に憧れのうさぎを飼ってみると、思っていたより言うことを聞いてくれない。気に食わないことがあると、後ろ足でダンってされたり、両耳でペンペンされたりした。歯が伸びるのを防止する木の棒を振り回している時もあった。
そして、トイレじゃないところでしてしまっても、学校に行っている間は、すぐに足を拭いてあげることもできない。
話しかけたり、しつけしたりが上手くできなくて、段々と野生的なうさぎの本性が出てきたような気がして、恐くなってきてしまった。
そして早々に根を上げて、1階のリビングにケージを動かし、日中は母に面倒を見てもらうことにした。
母は2人の子育てをしていたし、実家では犬や猫を飼っていたので、ペットのしつけに慣れていた。あの野生味溢れるおてんばのぷりんちゃんは、すっかり良い子になっていた。日中は、でーんと胴体を伸ばしお昼寝をし、プレミアムチモシーという高級な牧草をご所望し、頭を撫でろと言わんばかりに、顔を近づけてくるようになった。リビングに来たことによって、家族のアイドル的存在になっていった。
母はよく「ぷりんちゃんに話を聞いてもらっていた」と言う。子育ての相談にも乗ってくれていたそうだ。
父は、ペットはあんまり好きそうではなかったが、娘のお願いに負けて受け入れてくれた。ケージの上を開けて開放的にしていた時に、ぷりんちゃんが持ち前のジャンプ力を発揮し、上からケージを飛び出して、部屋中駆け回り、昼寝をしていた父のお腹に飛び乗り、「わぁっ、猫!!」って飛び起きたあの風景が忘れられない。
兄には、ぷりんちゃんは擦り寄ってよく甘えていた。
 
結局のところ、私はぷりんちゃんの飼い主には慣れず、上下関係の下にいた気がする。うさぎ用のリードを買って、庭で散歩させても動いてくれず、持ち前の歯でリードを噛み切ろうとしていた。ある時は、外にお散歩に連れて行く途中、袋から飛び降り、爪が割れて、心配で病院に連れていくと、その爪がなくなっていたが、平然としていた。なぜか年上のような包容力と破天荒さを兼ね備えていた。
人間だったら、小悪魔で強気な女の子の様だった。
 
ぷりんちゃんは10歳でこの世を去った。うさぎにしてはご長寿だった思う。
高校生だった16歳からOLになった26歳までの10年間、すごく多感な時期に一緒に暮らし、辛い時も話を黙って聞いてくれて、撫でることで癒しも与えてくれた。多くの幸せをもたらしてくれたと思う。
節分の豆まきの大豆を食べてから好物になったり、庭の薔薇も食べたりと、自由気ままだった。うさぎと言えば人参のイメージだったが、小松菜の方が喜んでいた。
 
うさぎになりたかった少女がうさぎを飼うことで、うさぎの本当の魅力についてお伝えしたい。可愛いルックスが押し出されがちで、寂しいと死んでしまうという話まであるが、実際は強くたくましい。本当のうさぎの魅力は、その芯の強さにあると思う。
その強さに励まされ、今も月から「まりこ、がんばれ〜」って言われている気がする。
 
 
 
 
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2023-03-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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