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成績に悩む甥っ子にレゴブロックに例えて説明した話


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記事:丸山俊生(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「どうやったら、成績って上るんかなあ?」
 
通夜の帰り、家に戻る車の助手席で甥っ子はそう呟いた。
 
亡くなったのは妹の旦那のお父さん。つまり、この甥っ子の祖父。嫁いだ妹を可愛がってくれ、うちの両親が亡くなった際にも、とても世話になった人だった。
通夜が終わり、妹夫婦は葬儀場に残って寝ずの番をするとのことで、俺は中学生の甥っ子を連れて、翌朝の葬儀まで妹夫婦の家に泊めてもらうことになっていた。
普段は妹夫婦と一緒の時に話すことはあっても、こうして二人っきりで話すことは初めてだなあと思いながら、普段話せない学校の事や趣味のレゴブロックの事をなんとなく喋っていた。
 
男の子というのは、子供時代にハマるおもちゃというのがたいてい決まっている。
トミカ、プラレール、ロボット、ヒーローなりきり玩具、そしてレゴブロックだ。
自分は幼稚園くらいからレゴブロックにどっぷりとハマり、多分小学校低学年くらいまで、そればっかりで遊んでいた記憶がある。
自分に息子が産まれた際も、多分同じ道を歩むのだろうとレゴブロックを買い与えたが、息子は全然ハマらず。
トミカにちょっとハマった後は、野球好きの妻の父親に連れていかれて、スポーツ少年になってしまった。
遊ばなくなったレゴブロックは、数年後に生まれた妹の子供に渡り、何故かこの甥っ子がどっぷりとハマってしまったのである。
そういう意味では、自分の息子よりこの甥っ子の方が波長が合うというか、自分に近い不思議な感じがしていた。
 
そのうち甥っ子はレゴの専門ショップ等にも行くようになり、そこの店員さんと仲良くなり色々テクニックを教えてもらったり作り方のアドバイスをしてもらうようになり。
そしてそのレゴにかかわる最高峰の称号が「レゴビルダー」という仕事だということを知り「将来レゴビルダーになりたい」とか言うようになった。
 
その甥っ子も成長し、今では中学生になったのだが、どうも学校の成績が芳しくないのが目下の悩み。
自分は要領だけ掴んで手を抜くことばっかり考えるタイプなのだが、甥っ子はそこは妹の性格に似て、コツコツ頑張るんだけど努力量に成績が追い付いてないという損なタイプ。
妹からも「どうしたらいいのかねえ」と愚痴を聞かされることもしばしばだった。
 
「成績ねえ……」
 
まあ、そんな魔法のような方法があるなら、誰も苦労はしない。
 
「こればっかりは、コツコツ頑張るしかないんじゃないの?」
 
「だよねえ」甥っ子はため息交じりにそう言った。
 
甥っ子にはそう言ったが、自分は前から「頭の良さ」について常日頃思っていたことがあった。
それは「知識の量」と「発想力」や「頭の回転の速さ」には関係が無いということだ。
よく、TVのクイズ番組などで高学歴のインテリ系のタレントと、さしたる学歴も無いお笑い芸人が対抗で争って、お笑い芸人チームが勝利なんていう事がよくある。
単純な「知識の量」で言えばインテリチームの方があるのだが、「発想力」や「頭の回転の速さ」で答える問題はお笑い芸人が勝っていたりするからだ。
 
「例えばさあ……」
 
甥っ子に「頭の良さ」について、こう説明してみた。
 
「例えば、ここに1万円分のレゴブロックがあるとする。
これで、家を作ってくださいっていう場合と、3千円分のレゴブロックで作ってくださいという場合と、どっちが良い家を作ることができると思う?」
 
「そりゃあたくさんあった方が良い家作れるんじゃないの?」甥っ子はそう答えた。
 
「うん、でも3千円でも工夫すれば良い家作れるよね? っていうか、そんな例はいっぱいあるよね? そこはセンスの問題だと思うんだ。
3千円で良い家作れるなら、車だってお城だって恐竜だって作れる。
そんな人に1万円分のレゴブロックを与えたら、更にスゴい作品を作ると思うんだよね。
頭の良さって、そういう事じゃないかって思ってるんだ」
 
「なるほど」
 
「ただただ、闇雲にブロックの数を増やしても、それを活かして使わなければただの無駄な部品でしかない。
でも、その部品を普段から“どう使うか?”っていう視点で見てると、少ない部品でも良い作品になるように最大限に活用できようになるんだって思うんだ。
お前も将来レゴビルダー目指すんだったら、この勉強は将来何に活かせるか、何に役立つか? っていう視点で見ることを心掛けたら?
言っとくけど、無駄な部品はこの世の中に一つもないよ。要はそれを活かせるか活かせないかってだけだと思う」
 
後で考えたら、こんな説明と成績が上がる事とは何も関係ないなとは思ったのだが、どうやら甥っ子はその説明で納得したみたいだった。
 
よくできたストーリー的な流れだと、この後この甥っ子はグングン成績が上がり妹から感謝される……っていう結末になるはずなのだが、現実はそうは甘くない。
相変わらず甥っ子はギリギリの成績でなんとか踏みとどまっているという状態である。
 
ただ、妹曰く「なんか毎日楽しそうに学校には通ってる」とのこと。
とりあえず妹には「成績悪いことを思い悩んで登校拒否とか、引きこもりとかならないなら良かったんじゃないの?」とだけ慰めの言葉をかけておいた。
 
ここから甥っ子の成績が上がっていくことを願うばかりである。
 
 
 
 
***
 
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2023-03-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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