メディアグランプリ

ファッションでは隠しきれない自分の姿


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記事:藤村 和(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「兄ちゃんそれダサいよ」
妹からそう言われて自分の身だしなみを気にし始めたのは、当時18歳の専門学生の私だった。
 
その頃よくコンビニで立ち読みしたメンズのファッション雑誌には、
「ダサい男はモテない」と書かれているのを目にした記憶がある。
 
そもそも「ダサいってどういうこと?」と思って考えた。
 
当時の私のダサい服は上下にプーマのジャージを身につけ、クロックスで街中をウロウロすることだった。
 
もちろん私はそんな服装はしていない。
 
でもダサいと言われるのはとても腑に落ちないので、私はファッションに興味を持ち始めたのだ。
 
まずはネットで春夏秋冬のファッショントレンドを調べ、かっこいい服の着こなし方について見てみる。
 
しかし、どれも外国のモデルさんばかりで全く参考にならないじゃないか・・・・・・。
 
当時身長も男性の平均より低く160前半だった私はコンプレックスを抱いていた。
 
身長がそもそも低いのにどうやったら服なんて着こなせるのか?
 
いや、待てよ?
 
世の中身長が高い人ばかりではない。
 
私と同じ悩みを持った低身長の方々がいるはずだ。
 
そう思って、ネットで低身長の方のコーディネートを検索した。
そして出会ったのがファッションコーディネートアプリである。
 
 
ファッションコーディネートアプリとは
ファッション好きの人たちが自分の好きな服のコーディネートを投稿し
投稿を見てくれた人にいいねをもらったりするアプリ。
 
このアプリを利用するメリットは
投稿者の身長、体型、顔の系統などから自分が似たような人を見つけ
コーディネートの参考にすることができること。
 
 
「このアプリめっちゃいい!」
 
そう思った私は早速ダウンロードして、参考にしたい人をフォローしていった。
 
そうして毎日参考にしたい人のコーディネートをみるうちに、
私もコーディネートを投稿したい気持ちになった。
 
実際に投稿をしてみると、私のコーディネートにいいねがついたり。
 
「その服かわいいですね」
「私そのコーディネート好きです」
 
などのコメントもきたりした。
 
私はファッションで人から褒められることが今までなかったので、こういったコメントはとても嬉しかった。
 
そしてコーディネートを続けているうちに
嬉しい知らせがきた。
 
なんとファッションコーディネートアプリの運営から
アプリを宣伝するインフルエンサーをやってほしいという知らせだ。
 
私は嘘かと思った。
 
つい最近まで妹からダサいと言われていたのに、こんな夢のようなことはあるのかと。
 
もちろん喜んで引き受けた。
 
そして、インフルエンサーをし始めて1ヶ月が経った頃。
フォロワーは30人くらいから3000人近くにまで伸びた。
 
当時アプリの登録者は10万人程度でインフルエンサーという概念すらまだまだ浸透していなかったので、フォロワー数は十分なくらいだ。
 
今でこそすごいと思える数ではあるが、当時の私は承認欲求が強すぎるあまり
 
「もっとフォロワー数を伸ばさなくちゃ」とプレッシャーを常に感じていた。
 
そうして次に起こした行動が周りへの宣伝である。
 
だがこの宣伝はまずかった。
 
友達にこの話をしても、
「へぇー」としか言われない。
毎日お洒落に着飾っても、
「今日の服かっこいいね」と言われることはない。
 
なぜ私はダサいと言われないように努力をして人気者になったのに
みんなは振り向いてくれないのだろうか? 私はそんな自分が嫌になってきて、逆に自信を失った。
 
今までコーディネートの投稿を毎日1回はしていたのに、
次第に投稿の頻度は落ちていった。
 
でもそんな私を許すことができなかった。
ついにはフォロワーが多い人に媚びを売るようになってしまった。
 
フォロワーが多い人に媚びを売れば、その人がフォローしてくれる。
フォロワーが多い人にフォローされれば、影響力がある人と思われて、さらにフォロワーが増える。
そう考えたのだ。
 
しかし、うまくいくはずがない。
 
フォロワーが多い人も私が媚びを売って、ただフォロワーがほしいだけでファッションのことなんかどうでもいいと思っているのもお見通しだった。
 
私よりも後に登録されたフォロワーさんの数がぐんぐん伸びていき、ついには私のフォロワー数を超そうとしている。
 
私はとても焦った。
後から入った人に抜かれたくないプライドがあったのだ。
その後もう1回頑張ってみようと毎日投稿を続けたが全く伸びない。
 
「なんでだよ」
 
ある日のことフォロワー数が伸びずイライラしていた私は学生の頃の友達を少しからかった。
 
「もっといい服着ればいいのに、なんでちゃんとした服着ないの?」といった。
 
そうすると友達からはこう言われた。
 
「服だけが全てじゃなくない?内面が大事だと思うよ」
 
これを言われた瞬間気づいた。
 
私はただ、周りにフォロワーの数を自慢し自分が上だということをアピールしたかっただけだった。
 
そもそも妹から言われた「ダサいよね」も服装ではなく自分の内面だったのか?
 
そう思うと汲み取れていなかった自分が悔しい。
 
ファッションで隠しきれていると思っていた自分の姿が丸裸にされた気分だった。
 
身だしなみも大事だが、友達や妹からはまず内面を良くすることの大切さを教えてもらえた。
それと同時にファッションは趣味程度で楽しむのが一番かもしれないと気づかされた。
 
結論は内面も外見もどっちも良くするのが一番。
 
 
 
 
***
 
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2023-03-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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