弱った心への処方箋
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:あこ(ライティングゼミ2月コース)
きっと、最初はちょっとしたモヤモヤや、苦しさだったこと。
それが、うまく解けなくなり、絡んだ糸のようになって心に溜まり、気がついた時には、多くのことが苦しく感じるようになってしまう。
鬱や心のしんどさって、そんなところから始まるのかもしれない。
テレビのドキュメンタリーを見て、そんなことを考えた。
番組は飲食店での独立を夢見て、東京の名店に入店した3人の若者を追う内容だった。
その中の1人の女性は、希望していた厨房ではなくホールに配属された。他の2人は厨房配属。
彼女は当初、納得がいかなかったが、仕事を続けるうちに接客のプロになりたいと思い、勉強も始めた。
しかし、働く中で、彼女の中で徐々に焦りが募っていく。
ホール担当なのに、店の事情で仕込みを手伝わないといけないこと。
同期が店の人達から頼りにされていること。
同期がオーナーシェフからどんどん新しいことを教わり、目をかけられている(ように見える)こと。
番組スタッフが、彼女にインタビューすると「何を期待されているかもわからず、同期はとても優秀だし、自分がどうしたいかもわからなくなってきた」と話していた。
番組スタッフが彼女に「誰かに相談したか?」と聞くと、「店の人に相談すると、すぐ広まっちゃいそうだし、言えない」と言う。
数か月後、番組スタッフが再度取材に尋ねると、元気がない彼女の姿があった。
番組スタッフは、オーナーシェフに話を聞いた。
オーナーシェフは「彼女には、心の状態が、接客にまで出てしまっている。辞めたいなら辞めてもいい。若いから気になることもいっぱいあると思う。けれど、目の前のことをちゃんとやらなければ、どこに行っても通用しない。だからまずは、ちゃんとやれ。という話をした」という主旨のことを答えていた。
また、彼は、自分の指導力不足かも、とも話していた。
数か月後、彼女は、過呼吸で倒れ、休職の末、退職を選んだ。入店3年目を迎えるこの春のことだった。
私はこの番組を見ながら、過去の自分の経験を思い出していた。
オーナーシェフの考えには共感できるし、かつて私もそんな風に考えていたことがあった。銀行員時代、銀行の仕事がうまくいかず、やめていく後輩。そんな後輩を見て、私は「苦手なことから逃げたら、一生逃げる人生になるから、向き合ってほしかったな」そんなことを考えていた。
けれど今は、テレビの中で悩む彼女の気持ちが分かる部分もあった。
彼女の話を聞いた時、私が感じたことは2つあった。
1つは、「どうしたの?」と話を聞いてほしいんだろうな、ということと。
もう1つは、心が弱っている時は、周りに対して過剰に反応をしてしまい、助けを求められないのだな、ということだった。
かつて、私も2度、同じような体験をしたことがあるから、思い当たったことだった。
私は2度、心を病んだことがある。
1度目は、銀行員時代。
当時、直属の上司がパワハラを受けており、仕事に支障が出ていた。そのため私は、仕事が少しでも進むよう、上司の仕事を手伝っていた。しかし、手伝った仕事の中に、越権行為があった、ということで、支店長から毎日、問い詰められることになった。
支店長は、なぜ、私が越権行為になる仕事をしたのか、ちゃんと理由を聞いてくれなかった。正確には、「なぜ?」と私に聞きはしたが、責めることを前提に会話は繰り広げられ、私がどこまで追いつめられていたか、は聞いてくれなかった。
少なくとも、当時の私はそう感じていた。
職場の同僚やパートのみんなは味方をしてくれたが、毎日会議室に呼び出され、責められることに疲弊した私は、もともと転職を考えていたこともあり、退職を選んだ。
2度目は、今の職場に転職して1年が経った頃だった。転職から1年たっても思うように仕事が出来ず、周囲に迷惑をかけていると感じていた私は、精神的に疲弊をしていた。
職場には行っていたが、毎日暗く、周囲に心配をかけていた。
見かねた上司から、東京への転勤を打診され、私は東京へと転勤した。
当時の自分の気持ちが、テレビの中の彼女とオーナーシェフの話を聞いて、蘇ってきた。
心が弱っている時って、自分ではもう答えが出なくて、よくわからない感情の中に迷い込んでしまっている、という感覚に近い。
そして、過剰に周囲の声に反応をしてしまい、なかなか助けを求めることが出来ない。
こんなことを言ったら、ダメなやつと思われるかもしれない。心配をかけるかもしれない。余計怒らせてしまうかもしれない。失望させるかもしれない。
こんな不安が、過剰に出てきてしまい、なかなか相談もできなくなるのだ。
そんな時に、自分より立場が上な人に、「こうだろう」と決めつけられて話をされてしまうと、「相手が言うように思えない、行動できない自分が悪いんだ」と余計に自分を責めてしまい、心の行き場がなくなってしまう。
確かに、目上の人や、経験が長い人は、自分の体験談から「こうだろう」と良かれと思って言っているかもしれない。そして、それは「正しい意見」なのかもしれない。
けれど、苦しんでいる本人が求めているのは、「正しい意見」ではない。
自分の中でこんがらがって、どうしようもなくなった不安や、行き場のない感情に、ただ寄り添ってほしい。ただ話を受け止めてほしい。そのプロセスを踏まないと、前に進めないことがたくさんあるのだ。
心が病むくらい、ぐちゃぐちゃになった感情を持った頭は、何も考えられないし、冷静さを失っている。そんな人間に正論をぶつけたところで、余計、混乱をさせる可能性が高い。
だからまず、「どうしたの?」と話を聞くところから始めることが大事なんだと思う。
私が今回、このことを文章に書き起こしたのは、心が弱っている人に対して、どう対処してよいかわからず、戸惑うことが増えてきたからだ。
元気になった私は、昔、自分の経験から学んだことを忘れかけているのかもしれない。
テレビを見て、久々に当時の気持ちが蘇り、まずは何をしてほしかったのか、を思い出した。
正確には、心が弱っていた当時は、頭と心が疲弊していて、相手に何をしてほしいか、自分がどうしてほしいのか、を理解が出来なかった。
元気になった今、改めて振り返り、当時の状況を冷静に理解できるようになったのだと思う。
だからこそ、心が弱っている人にどう接すればよいか、を書き留めておく。
心が弱ってしまった人には、まず、「どうしたの?」と話を聞くことから始めたい。
相手が話す内容には、ただ「受け止める」ことが必要だと思う。私自身が共感できてもできなくてもいい。でも、アドバイスをすることは避けよう。
そして、心が弱っている本人が「話してもいいんだ」と安心して、話せるようになる状況を作ることを心がけようと思う。
当時の私のような人の心を、少しだけでも軽くする、手伝いが出来るように。
そんなことを思った。
***
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