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メディアグランプリ

庶民の選挙の楽しみ方

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:赤羽かなえ(ライティング実践教室)
 
 
日曜日くらい時間を気にせずに寝たい……
目覚ましが5時に鳴り、眠い目をこすりながら、しぶしぶベッドを抜け出す。
 
2023年4月9日は選挙の日。
 
私は選挙でないとやれないことをするために目覚ましをかけてわざわざ早起きをしたのだ。
 
昨晩は寒かったからなるべくギリギリに行きたいところだけれど、1番にならないと意味がない。準備を済ませて、私は家を出発した。
 
なぜこんなに朝早く選挙に行くのか。
 
選挙は朝7時に投票が始まるのをご存じだろうか? そして1番最初に投票する人は、零票確認に立ち会うことができる。零票確認とは、各投票所で、最初の投票者に施錠前の投票箱を見せて、何も入っていないことを確かめてもらうこと。私は、これをSNSの友人の投稿で知った。
 
選挙の時にその方は、毎回早起きして、零票確認をしてその写真をUPするので、だんだん自分もやってみたいな、と思うようになった。
 
初回の挑戦で私は家族で7時15分前に到着した。その時に私は3番目。前の2人は明らかに零票確認狙いだとわかった。
 
2番目に並んでた人はロン毛を一つにまとめた50がらみのオッサン、これだけでもかなりのインパクトがあるのに、1番目の人にいたっては、上下茶系の迷彩服を着こみ、ベルトのところに手りゅう弾の形をした小銭入れをつけている。その小銭入れには、白抜きの文字で『ARMY』と書かれていた。
 
ウチの地元の零票確認を狙うメンツ、濃ゆすぎじゃね……?
 
私の後はしばらく人が来ず、7時直前に少しずつおじいさん、おばあさんたちが集まってくる時、3番目に並んでいる私はかなり恥ずかしくて、7時になったらさっさと投票して逃げ帰った。
 
2回目の挑戦は、前回の反省を活かし、20分前についたけどやはり3番。前には前回と同じメンツが並んでいる。前回ロン毛のオッサンにちょいちょい話しかけていたので、私もどうやら第3の女として認識されたようである。トップは相変わらずのアーミーで、前回は陸軍仕様の茶系だったが、今度は夏だったせいかはわからないが、青系の迷彩服になっていた。相変わらずベルトのところには、ARMYの手りゅう弾小銭入れ。服的にはARMYではなくNAVYですねと心でツッコミを入れながらも、私はまたも臍を噛む結果となった。
 
そして、今回が3回目である。5時に起きた割になんとなくお尻が重くて結局は6時半出発、投票所前についたときには40分近くなっている。またもロン毛の背中が見えてがっかりした。2番かな、と思ったけど、ドアの陰に隠れてやはり1番はARMYだった。しかし、今日は、迷彩柄でも何でもないちょっといかつめの服を着ていた。でもガンダムに出てくるブライトさんのようなベージュの服だったのでやはりどこかの軍服モチーフなのかもしれない。
 
ああ、私は一体何時から並んだら1番になれるんだろうか。なんかくじけちゃいそう……。そんなことを思いながらARMYを見ていると、彼がなんだかソワソワし始めた。
 
「投票券、忘れた」
 
ARMYは、ロン毛のオッサンにそう言い残すとあたふたと私の横をすり抜けていった。しばらくして、自転車をこぐ音が遠ざかって行く。
 
ARMY、痛恨のミス!
 
でも、目の前にはロン毛のおっさんがいるから、私は、零票確認はできないの。しょぼくれながら、ロン毛のおっさんに、
 
「あのー。今日って何時頃いらっしゃったんですか?」
 
と聞いてみた。
 
「6時30分くらいだよ」
 
そうか、でもあのARMYが何時に来るかがわからないと意味がないな。そんな風に思っていた時、
 
「もしかして、零票確認したいの?」
 
ロン毛のオッサンに尋ねられた。
 
「そうですねー、してみたいです」
 
「じゃあ、代わってあげるよ。そこに並びな」
 
さっきまでARMYのいた位置をロン毛のオッサンが指さした。
 
「え、でも……」
 
「いや、いいんだよ、ここの投票所は昔、ちゃんと零票確認もせずに選挙をしていたの。だから、おれがそれを指摘して、ちゃんと零票確認をするようになったんだよ。俺は、自分がやらなくても、ちゃんと零票確認をやっているかチェックしたいから早くから並んでるの。今までも何回も零票確認したことがあるから気にしなくていいよ」
 
それを聞いて、遠慮したい気持ちよりも、やってみたい気持ちの方が勝った。
 
「ありがとうございます!」
 
こうして、奇跡的な流れで私は、零票確認をする権利を手にすることができた。
 
選挙が始まる時には、拍子木がなる。ピンと背筋が伸びる。
 
その後で、係の方に連れられて、本人確認の手続きをして投票用紙と鉛筆をもらい、書いたら投票箱が空なのを確認して、自分の一票を投じる。
 
目の前で投票箱があけられ、空なのを確認してから「大丈夫です」と言った。投票所の関係者、並んでいる人達が静かにその様子を見守っている視線を感じた。
 
今回は統一地方選挙で投票が三回あったので、同じことをあと二回繰り返して私の零票確認の仕事は終わった。
 
大満足である。スキップでもしたいような気持ちで投票所をあとにした。帰り際、ロン毛のオッサンに挨拶をすると「お疲れさん」と言ってニカっと笑ってくれた。投票所を出ると、選挙待ちの人が列を作っている。おじいさん、おばあさんばかりが多くて若者少ないのが気になった。
 
大役を終えて家に向かう。さわやかな風が吹きつけてきた。
朝イチの投票って本当に気持ちがいい。
 
ぜひ、皆さんも零票確認を狙って投票所に朝並んでみませんか?
庶民ももっと選挙を楽しみましょ。
 
10年後、願わくば、零票確認争いを若者たちとできたらいいな、なんて思っている。
 
 
 
 
***
 
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2023-04-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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