メディアグランプリ

素人技が生きる料理の職人芸


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:松浦哲夫(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
もう10年にもなる。特段向上心を持って取り組んできたわけでもなく、さらなる上を目指すでもなく、必要に迫られて淡々と繰り返してきてはや10年。ただ、どんなことでも10年も続ければ経験が積み上がってくるし、知識も増えるし技術も上がってくる。自分なりの考え方も生まれてくる。もちろんその道のプロに及ぶべくもないが、それでも私が10年の経験の中で培ってきた考え方は、きっと多くの方の賛同を得るのではないかと思っている。自分の体の健康にもお財布事情にも大いに関わってくる話なのだから。
 
なんの話かというと、実は料理の話だ。結婚してから10年目、私は結婚当初から週3日から5日の夕飯作りを行なってきた。別に料理が好きだったわけでもないし、専業主夫になったわけでもない。夫婦共働きで子供がいないという事情から、我が家では家事を分担制にしようということになった。
 
ちょうど10年前の新婚当初のある日、私は帰りの遅い嫁に代わってはじめて夕飯を作って食卓に並べた。当時夕飯作りは私の役割ではなかったが、まあほんの気まぐれだ。あの時のメニューは、確か卵焼きと味噌汁、そしてシャケの塩焼きだったと記憶している。なんてことのない普通の夕飯だ。卵焼きは約10年ぶり、味噌汁はこの時はじめて作った。シャケをフライパンで焼くのだってはじめてだ。正直言って味に自信なんてなかった。何もかも適当だった。
 
夕飯の準備が整ったタイミングで嫁が帰宅。どうやら自分が料理するつもりだったらしく、
食卓に並んだ夕飯を見てかなり驚いた様子だった。
 
「え? あなた料理できたの? 知らなかった」
 
まあ無理もない。私自身、結婚前は料理などほとんどしたことがなく、毎日行きつけのカレー屋か一品料理屋で夕飯を済ましていたのだから。卵焼きだって実家住まいの時に一度だけ母に教えてもらって作っただけだ。
 
味は保証しない、と一言付け加えて嫁を食卓に座らせた。いただきますの一声の後、箸を持って味噌汁に手をつけた。ズズッと啜ってじっと考え事をするかのように目を瞑る嫁。やはり慣れないことはするものではないなと思うや否や、嫁の反応は意外なものだった。
 
「美味しい!」
 
そこからの嫁の食べっぷりは見事だった。味噌汁を2、3回吸い込んだかと思うと卵焼きに手をつけ、味噌汁をご飯に持ち替えて力士のごとく掻っ込む。同時にシャケの塩焼きにも手をつけ、再びご飯を掻っ込む。わずか5分にも満たない時間で、嫁はすべての料理を平らげ食後のお茶をすすった。そして私に一言。
 
「あなたすごく料理上手ね、見直したわ!」
 
それから10年間、私は夕飯を作り続けている。そのきっかけは間違いなく10年前の嫁のあの一言だった。あの一言だけで私は夕飯作りを担うようになったのだ。料理に目覚めさせてくれた嫁に感謝すべきなのか、あるいは私に夕飯作りをさせようという嫁の大いなる作戦だったのかはわからない。今となってはどうでもいい。
 
この10年間、私は夕飯作りを苦にしたことは一度もない。最初の半年ほどは色々と試行錯誤を繰り返した覚えがあるが、その甲斐あって今では夕飯作りはすっかり私の中に染みついている。毎日会社帰りにスーパーに寄り、食材を仕入れてすぐに台所に立つ。それが私の生活の一部となっている。
 
ただ冒頭でも言ったように、料理に関して向上心など全くないし、技術を磨こうという考えもない。私がこの10年間で身につけた料理の技術はたった2つ、「時短」と「手抜き」。この2つの技術を磨いてきたからこそ、今ではどんな料理でもサッと作れるし、時間も手間も最小限だ。
 
そんな私からこれから夕飯作りに挑戦しようという方にアドバイスをしたい。それは、料理は素人技で十分だということだ。調味料は感覚で加えればいいし、計量カップなどいらない。もちろん計りなどもいらないし、包丁やボールなども100均のもので十分だ。じゃがいも、人参、大根の皮など剥かずにそのまま適当な大きさに切って鍋に放り込めばいいし、ほうれん草や小松菜は手で千切ればいい。そうして私は10年間夕飯作りをしてきて、ただの1度も失敗したことはない。
 
ネットを検索すればレシピはいくらでもヒットするが、ネットのレシピは参考程度、そのまま作る必要などない。
 
料理に時間をかけるよりも、いかにして手早く作って時間を有効利用するか、ということの方がはるかに大切だし、その方が飽きずに料理を続けることができる。
 
「空いた時間にささっと料理を作る」
「冷蔵庫の残り物でささっと料理を作る」
 
夕飯作りが熟練の域に達すればそんなことが可能になってくる。まさに職人芸だ。もちろん片意地張ってそこを目指す必要などない。最初からいかにして時短で手を抜いてそれなりの料理を作るか、をしっかりと考えて料理した方が良い。
 
もしあなたが外食ばかりで栄養バランスが心配だ、懐事情も厳しいとお悩みであれば自炊に挑戦されてはいかがだろうか。とても簡単にできるし、健康にもお財布にも優しいこと請け合いだ。
 
ただ、本格的に料理を覚えたい、プロになりたいという方々にとっては、私の話は害でしかない。その点はよくご注意いただいた上でこの話を締めたいと思う。
 
 
 
 
***
 
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2023-04-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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