ティッシュ配り
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:浦山 直実(ライティング・ゼミ4月コース)
多くの方が、街中や駅やショッピングモールで宣伝チラシの入ったポケットティッシュを配っている人を見かけたことがあると思う。ハンディングという広告宣伝手法の一つで、ティッシュだけでなくチラシや実際に商品を配布する場合もある。
「ティッシュ配り」と聞くと、どんなイメージをお持ちだろうか?
「パチンコ屋さんの宣伝」
「アルバイトさんがだるそうに配っている」
「通行の邪魔になる」
時には、ニコニコと素敵な笑顔でティッシュを配っている方に出合うかもしれないが、あまり良いイメージを持つ方は多くなく、また、誰でも簡単にできると思われているのではないだろうか?
いやいや、あなどってもらってはいけない。
ティッシュ配りは、通行人と配る側の心理ゲームである。
仕事柄新規顧客の獲得のために、長年このティッシュ配りを行ってきたが、何年たってもこんなに楽しいマーケティングはないと思ってしまう。
今度街中でティッシュ配りを見かけたら、情熱をかけている人たちもいることを知ってもらいたいし、ティッシュ配りを「だるいバイト(仕事)だ」と思ってやっている方がいらっしゃれば、少し変わった目線で配ってみてほしい。
まず、伝えたいことは、「ティッシュもお金かかってますから!」
商品の宣伝チラシを入れているティッシュにも最低でも5円はかかっている。5円玉の入ったポチ袋を配っているのと変わらない。なので、案内をより多くのターゲットの方にとどけたい。
以前、配るために置いていた段ボールの中から、ごっそり持っていこうとした人に「ドロボー!!」と叫んだ同僚がいた。間違いない(ティッシュに入っているチラシを抜いて転売する人もいる)。
「箱の中のティッシュが減ったほうがいいやろ?」なんていらぬお世話だ。
「ティッシュ2・3個ちょうだい?」と手をだされ、「1つでお願いします」と答えたら
「ケチ!」と言われる。
ケチで結構。一人でも多くの方に渡したいのだ。
一人でも多くの方の手元に届けるために、様々なテクニックがある。笑顔は必須。笑顔がなければ、「トイレットペーパーはありません」と書いてある公衆トイレのようなものだ。見向きもしてくれない。
そして挨拶。ちなみに一言につき1つのティッシュを配る。自分の手元から相手に差し出し、受け取ってもらえなければ一旦自分の手元にもどす。そのまま、別の人にスライドしてはいけない。
挨拶の内容は、商品名でも「おはようございます」でも「宜しくねがいします」でも、テクニックは同じである。大切なのは、声のおおきさとトーンだ。
通勤ラッシュ時に配布をしていると、途切れることなく人の波が押し寄せてくる。
面白いことに、前を歩く人が受け取っていると、安心感があるのか、しばらくは後ろの人達も続いて受け取ってくれる。逆に受け取ってくれない人々が続く場合は、この負の連鎖を断ち切らなければいけない。そこで、この挨拶の大きさかトーンを変えてみる。
「(1回目普通に)おはようございます、(2回目普通に)おはようございます、(3回目大きな声で)おはようございます」
これだけで、3人目の方はびっくりしてティッシュを受け取ってくれる。
声のトーンを高くするのも同じ効果があり、「びっくり効果」と呼んでいる。
また、通勤の方々はカバンやスマートフォンや定期入れを持ち、8割がたの両手はふさがっている。このふさがっている手の中にどのようにティッシュを飲み込ませていくかを考えるのも楽しい。ある意味シューティングゲームにいている。
なぜシューティングゲームかというと、その人の親指とものの間に狙いを定めて、安全な範囲のスピードでもっていかないといけないからだ。
インターネット等を「ティッシュ配りのコツ」と検索すると、「相手の胸元に持っていきましょう」と書いてある場合もあるが、指の近くの方が反応していただきやすい。素早く親指の近くにもっていくと、反射で親指が開く。親指ゲームで親指が上がった瞬間にティッシュを挟むイメージだ。
また、手の位置を変えず、指だけ開いてティッシュをもらうと周りの人から受け取ったかどうかわからない場合も多い。歩行者の中には「あ~ティッシュ配ってるわ~。欲しいけどわざわざ欲しそうにするのもなぁ」などと恥じらいを持ち合わせている方もいらっしゃるので、そういう方には感謝される渡し方だ。
逆に「狙いうち」と言う方法もある。少し離れたところから、「この方に渡したい」と思う方を定め、遠くから軽く会釈する。そして近づいてこられたら、目を見てこちらも近づいていき、「こんにちは」とあいさつをする。この手法は、人通りが少ない時にはとても有効だ。
まだ紹介できるテクニックはあるが、基本的には、自分から動いて相手の懐に入っていくことが大切だ。一人一人をどうやって攻略するか考えて渡していけば、瞬間の関わりにもかかわらず、いろんなエピソードが生まれてくる。
そして、受け取ってくれた方にとっても、どんなSNS広告より印象に残る広告宣伝であっていてほしいと思う。その1つのティッシュから、新しい世界が待っているかもしれないのだから。
***
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