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英語と落語と丸メガネ


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記事:服池板(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
京都には毎年、たくさんの外国人観光客が訪れる。京都に住んでいると、たくさんの外国人とコミュニケーションできるきっかけがあるように思う。ところが実際は、なかなか話す機会がない。とても難しい。
 
8年ほど前、外国人に英語で道を聞かれ、どう答えていいかわからず、ウーとうなるしかできない自分がいた。京都に住んでいながら、外国人に道を教えるくらいの英語ができないのはいけないと思い、早速、オンライン英会話に入会した。それから毎日、会社に行く前に25分の英会話を続けてみた。
 
2年ほど経つと、英語で簡単な会話をすることにも自信がつき、外国人が自分に何か話しかけてくれないかなと思う程になった。
 
しかし、待てど暮らせど誰一人、自分に話しかけてくる外国人はいなかった。外国人が困る場所はどこだろう。 困る場所、それはバス停や街中ではないかと思い、回り道をして、そういう所にふらっと行くようにしてみた。わざと、外国人に近寄ってみたりしてみた。しかし、自分に話しかけてくれる外国人はいなかった。
 
自分に話しかけてくる外国人がいない理由は何だろう? ひょっとして、自分の外見が、外国人を拒絶しているのではないかと考えてみた。 自分のメガネが原因じゃないか? ちょっとインテリ風の少しきつめのメガネが、ちょっと話しづらい雰囲気を出しているのかもしれない。
 
そこで 、思い切って近所の眼鏡屋に行き、思い切ってフレームが丸いメガネを購入してみた。 女性店員に印象を聞いてみると、すごく柔らかくなったというようなことを言っていた。それを信じて、少しウキウキしてみたりした。
 
そして、そのメガネをかけて数ヶ月、待てど暮らせど、私に声をかけてくれる外国人はいなかった。
 
そこで、これは待っていたらダメだということではないだろうか? そう思い、今度は、外国人に 自分から積極的に話しかけてみることにした。
 
その結果は次の通りだ。
 
①欧米風の観光客に、イオンに行きたいから道を教えて欲しいと言われ、近くにスーパーのイオンがあったにもかかわらず、なぜか、英会話のイーオンに面接に行くものだと勘違いして、駅と反対側の英会話のイーオンを教えてしまった。
 
②中国人風な青年に向かって、一生懸命英語で、バスの行き先を教えた。その後、流暢な日本語で質問を受け、自分も日本語に戻っていた。
 
③京都駅前でバス停を探している欧米風の観光客に、探しているバス停の番号を教えようとしたが、よくわからなかったので観光案内所に連れて行った。そしたら、さっきここで聞いたんだと言われた。
 
惨敗。
 
こんな感じで、何が原因なのか、なかなかうまく外国人とコミュニケーションができない。英語をずっと習っているのに、使う機会が無いと、モチベーションも下がる。
 
グズグズしている間に、コロナが流行し外国人との接触は、夢のまた夢となってしまった。しかし、英会話は続けて、外国人とコミュニケーションできるチャンスをひたすら待ち続けた。そんな中での昨年の秋、友人から、英語落語をやっている道場があるということを教えてもらった。
 
英語落語というのは簡単に言うと落語の英語版である。今更、英語落語を学ぶということに対して、全く抵抗がなかったわけではないが、英語落語であれば、外国人が聞いて理解できるはず。これなら、こちらからわざわざ外国人を探して話を聞いてもらうという努力は不要だ。英語落語さえできれば、外国人とコミュニケーションができるぞ! と希望を新たに、英語落語道場の門を叩いた。
 
月に1、2回、京都から電車を乗り継ぎ、1時間強。マンションの一室を、多目的に利用できるよう改装した部屋が英語落語道場だ。そこに行って驚いたことは、男性よりも女性の方が圧倒的に多いということだ。そして、上は90歳から下は中学生までと年齢層が幅広い。道場全体では20名弱、自分が行っているクラスでは、だいたい5名ぐらいで稽古を受けている。
 
自分が指導を受けるのは10分から20分ぐらい。あとは他の生徒の稽古を聞いている。練習が終わった後、生徒にお茶に誘われることがあり、90才の女性を先頭に、年配の女性、年配の男性たちと一緒にお茶をする。なんとなく、新しい仲間ができたような気がして嬉しい。
 
残念なことは、外国人が1人もいないこと。しかし、半年後、年1回の発表会が開催されるということで、稽古を一生懸命やった。
 
私の演目は、日本語名で言うとまんじゅう怖い。これは落語の世界では大変有名な話の1つで、 わりと元気でコミカルな印象を与える内容である。発表会の前段階ではある程度、自分なりに納得がいくぐらいの練習はできていた。英語落語初心者にしてはそれなりに上手に、仕上がっていたと思う。
 
そして迎えた今年の4月。いよいよ発表会の日。緊張しながら自分の出番を待った。自分の出番は5番目。舞台を無難にこなす先輩たちの落語を舞台裏で聞きながら、緊張を抑えきれないまま出番を待った。
 
演じ終えた自分の感想。
①早速、間違えた。
②緊張して、練習通りにいかないところがあった。
③ウケるはずのところでウケないところがあった。
④先輩の方が格段に上手だった。
 
練習の8割できればいいかと思っていたので、その基準を思えば十分できたと思う。よく頑張った。自分にお疲れ様を言いたい。そんな気分だった。
 
自分なりのやった感が落ち着いた後、この半年の努力を覆す程の大変な事に気がついた。それは、英語落語でありながら、観客に1人も外国人がいなかったことである。
 
 
 
 
***
 
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2023-04-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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