メディアグランプリ

にぎやかな孤独


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
コロナ禍になって約3年。この3年間は無料通話アプリtalkstandと共に過ごした。
 
気が付いたら私はこのアプリで454時間を使って本や映画の話をした。
talkstandは今や私の自由時間を根こそぎ持っていきそうになる危ない麻薬で、現実の痛みを吹き飛ばしてくれる時間泥棒だ。仕事から帰ってから寝るまでの数時間を、最高に賑やかな時間にしてくれる。Amazonプライムビデオや人気のドラマもそっちのけで、私はこのアプリに夢中である。アプリでしか会えない人もいるので面白い人を探す目的でも使っている。talkstandに時間を使いすぎて資格試験に落ちてしまった年もあった。(次の年合格できた)しかし、アプリを通して部屋にいながら手の届く範囲の外を知ることができて、コロナ禍でも未来への希望を失わずにいられた。いくらでも多数と繋がれるネットの世界で、1対1でしか話せないからこそ広がる世界があった。
 
そしてこのアプリは、それまで人に話せなくて見ないふりをしていた趣味が自分にとってどれだけ大切で楽しいことなのかを教えてくれた。つまり、目に見えない細い根っこがあることに気づかせてくれた。そんなアプリだった。
 
使い方はシンプルだ。まずプロフィールを登録する。次に気になるトピック(話題)とそのトピックにエントリーしている人(話し相手)を選ぶ。その人に会話のリクエストを送る。リクエストが承認されたら、2人で会話の日程を決めて話す。それだけだ。それだけのことを400回以上できたのは、ひとえにコロナで外に出られない鬱憤を、話して晴らしたかったからなのかもしれない。または、楽しすぎて気づいたら400回以上話していたのかもしれない。話したい事柄がない人は「雑談」と言うトピックで気楽に話したり、「作業、勉強しながら話しませんか?」と言うトピックで話す人もいる。
 
このアプリには難点もある。思いつくだけで2つだ。異性との出会い目的には使いにくいこと、話したい時すぐに話せないことだ。リクエストを送ってから遅いと1ヶ月後に話すことになったことがある。たった1時間。されど1時間。このために何度も日程調整をするのは馬鹿馬鹿しくなることも正直ある。それでもやってしまう。なぜならそれだけ手間をかけても話したい人が、なぜかこのアプリに集まっているからだ。
 
なんでここまで居心地がいいアプリなのだろうか?
なぜこのアプリでなくてはいけなかったのか?
理由は何点でも上げたいが、大きく二つだ。
一つは出会い系のサイトでは無いから、ずっと趣味の話を続けられる。いつ会いましょうか?とか顔を見て音信不通になったりしない。そもそもほとんどの会話を音声のみで行なっているので、30回ほど会話した人で顔を知らない人もいる。
 
二つ目にはトピックから話したい人を選ぶことで、1時間だけでも中身の濃い話ができる。これは本当に謎だが、私の主観だとこのアプリの中には読書家と映画好きが多い。自然と本や映画感想にまつわるトピックが多くなるし、トピックにエントリーする人も多い。私が作ったトピックの中で「45分をそれぞれで本を読む時間にして、残り15分で感想を話す」というのがあるが、これがかなり使われているのが嬉しい。
 
この心地よさは、トピックから会話を始める仕組みとフォローフォロワー制度がないことで上下関係が生まれにくいアプリの構造にあると感じる。
 
初めて使ったのは2021年の3月だった
この時話した人のことはよく憶えている
mosさんだ。この方は私に『理性の限界』『知性の限界』を紹介してくれた。だから買って、あれから数年経った今でも読み終わっていない本の一つでもある。
この時初めての会話が楽しくて、緊張しながらも、なんとか1時間を話し終えた。そのときはただ楽しい!もっと話したい!と感じた。
 
本を読んだ感想を共有して、気が合う人からはおすすめを教えてもらう。そしてその本を読んだ感想をおすすめしてくれた人と話す。そしてまた本の話をするうちに、相手の本以外の興味にも映画やアニメの趣味にも関心が湧き、別のジャンルの話もするようになる。
 
そうやって仲良くしてもらった人にMさんがいる。454回の会話のうちMさんとは50回以上話している。本人の話が刺激的で面白いことに加えて、質問するポイントや、相槌を打つのもうまい。Mさんと話すようになってから、自分の会話形式のおかしいところに気付いた。自分が面白い話をして相手に笑ってもらうという一方通行の形でしか無かったのだ。会話自体を楽しめるこのアプリに出会わなかったら、自分の一方通行の話し方が当たり前だと思い込んでいただろう。
そうしていまは、自分が好きな物と同じくらい、人の興味の方向に関心を持つことが楽しくなった。具体的に言うと、なんでこの作品が好きなのか?好きになったきっかけはあるのか?などなど。相手が好きな作品のことを話す時の、テンションの変化や声の調子の変化を感じるのが楽しい。
 
今月末には、talkstandの知り合いと東京で中華を食べにいく約束をした。コロナが明けて、外に出る機会も増えたことでtalkstandを使わないコミュニケーションが増えるだろう。それでもコミュニケーションに対して以前より不安が少ないのは、約2年アプリを通して話した経験がわたしを勇気付けてくれるからだ。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



2023-04-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事