メディアグランプリ

スリランカで見つけた「趣味」と「愛」


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記事:盛田滝斗(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
スリランカ最大の都市コロンボから約100キロ離れたラトゥナプラは、一見すると普通の町に見える。しかし、この地を訪れると、ある種の魔法にかかったかのように、その魅力に取り込まれてしまうことだろう。町を歩けば次々と声をかけられ、そのうちに何人もの人々に囲まれることになる。日本ではめったに見られない光景だが、この地では何度も経験することになる。
 
男たちはポケットからクシャクシャの紙を取り出し、広げて見せてくる。中にあるのは、美しい色とりどりのサファイアだ。「どうだ! 俺のサファイヤはいいだろう? 買わないか?」それぞれからアピールのセリフが聞こえてくる。その瞬間、興味をもって見ていると、あっという間に売り子が増えて10人ほどになっている。急に人気者になったようだが、「もう勘弁してくれ〜」と後ずさりしてその場から逃げ出すしかない。
 
スリランカは宝石の産地として世界的に知られており、ダイヤモンド以外はほとんどの宝石が採掘されると言われる。特にサファイアを筆頭にルビーやキャッツアイ、アレキサンドライトなど様々なしゅるいの宝石が産出される。その中でも最大の産地であるラトゥナプラは、宝石に関するあらゆる人々が集まる場所だ。採掘する人々や石を磨く職人、宝石店、そして世界各地に宝石を売り込むバイヤーたちが、この地で共に働き、生活を営んでいる。
 
私がここに来た理由は二つある。一つは、「宝石の都ラトゥナプラ」という言葉に魅了されたことだ。子どものころからキラキラしたものが好きで、シールや夜景、花火などに目を奪われることが多かった。時間を経つのを忘れるほどに見入ってしまう。そんな自分にとって、まるでRPGの世界が現実にあるかのようなラトゥナプラは、魅力的に思えた。もちろん想像ほどキラキラしたものではなかったが、宝石と共に生活する人々の姿や、その空気に触れたいという願望が私をここまで運んできたのだ。できれば、現地で何か宝石を買ってこようというのが一つの目的としてあった。
 
スリランカに来たもう一つの理由、最大の理由は歴史上の日本との関係に感激したことである。教科書にも載っておらず、ほとんどの日本人が知らない話だと思う。私も初めて聞いたときはいわゆる「ハンマーで叩かれたような」衝撃をうけた。ひとまず、それにまつわる本を読んで理解を深めた。第二次世界大戦後、敗戦国の日本はアメリカ・イギリス・ソ連・中国によって分割統治の案もあった。特にソ連(現ロシア)がそれを進めたがっていた。実際にはなされなかったが、もしそれが実現していたらと思うと恐ろしい。ひょっとしたら、もう一つの日本の未来はウクライナのようになっていたのかもしれない。結局のところ分割統治はされなかったは、それはスリランカの助けも大きかった。
日本が独立国家として認められるかどうかのサンフランシスコ講和会議の際、当時のスリランカ大統領ジャヤワルダナが演説によってそれが退けられたのだ。「憎しみは憎しみによって止むことなく、愛によって止む」とブッダの言葉を引用し各国を説得し、それが通じて、各国の賛成多数を獲得、日本は分割統治をまぬがれたのである。だから、私は今の日本がこんなに平和で自由でいられるのは、スリランカのおかげだと理解している。だから、感謝の気持ちとどんな国なのか肌感覚で知りたかったのだ。
 
ニゴンボという町で仲良くなった人たちと、浜辺でキャンプファイヤーをした。お酒を飲んで、踊って歌ってと初対面の人たちと信じられないほど、楽しく盛り上がった。5人ほどいたが、驚いたことにみなさん歴史をよく知っている。「日本はすごい国だ、アジアの勇者だ」などと褒められた。直接自分のことではないが国を褒められうのはとても嬉しいことだった。また、日本人と知ると笑顔で挨拶をしてきたり、手を振られたりするのは何度もあった。その都度、日本人として誇らしく感じた。さらには日本に帰る時は空港までただで送ってくれて「結婚したら、またスリランカに来いよ。バナナボートに奥さんと乗せてやるから」とスリランカの形をしたマグネットをプレゼントしてもらったのだ。
 
このスリランカ、ラトゥナプラへの滞在がきっかけとなり、私は趣味として宝石を集めるようになった。指輪やネックレスなどのジュエリーではなく、原石を中心に集めている。また、ルースという、指輪からそのまま外したような裸の宝石も魅力的である。この趣味によって、私は宝石の素晴らしさや、それぞれの石が持つ独自の美しさに触れることができるようになった。収集のラトゥナプラの宝石商から買ったサファイアとガーネットが私のコレクションの最初の2つである。
 
そして、私は日本の平和がスリランカのおかげであることを再認識した。その土地の魅力や、素晴らしい人々との出会いを通じて、私はスリランカという国と、日本との繋がりに感謝の念を抱くようになった。でも、日本を救ってくれたスリランカについて日本人は多くを知らない。両国の友好関係を感じながら、いただいた愛を少しでも伝えられたら嬉しい。
 
 
 
 
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2023-04-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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