メディアグランプリ

初めての経験は「新しい自分発見器」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:あこ(ライティング実践教室)
 
 
長年「自分」をやっていると、自分の良いところも悪いところも、おもしろいところもつまらないところも心得ていて、「自分とはこういう人間だ」ということがわかるものである。
 
自分の悪いところを直したい、こんな人間になりたい、という思いを持つと「変わる」努力をするのだと思うのだが、みんながみんなそんな向上心の塊のわけでもないだろうと思う。こんな人間になれたらいいなぁとは思いながらも、それで終わってしまう人も多いのではないだろうか。
 
私はどちらかというと「なれたらいいなぁ」と思いながら、気づくと月日が流れているタイプの人間である。私は優柔不断で心配性。その性格を直し、自分で決断して周りを引っ張っていけるような人間になれたらカッコいいなぁと思っていた。
 
私は、信頼できる誰かに「いいんじゃない?」と背中を押してもらわないと何かを決断できないような人間だ。社会人になってからもその性格は変わらなかった。
人のせいにするとかそういうことではなくて、ただ背中を押して欲しいのだ。
 
私が末っ子で、何でも母親に「いい?」と聞いて育ってきたからかもしれない。
別にそこで母親に「ダメ」と言われたからと言って、「はい、そうですか」と大人しく引き下がるような素直な子供でもなかったのだが、ただ、最終的には無理やりにでもなんでも母親に「いいんじゃない?」と言ってもらわないと落ち着かなかった。
 
この優柔不断で心配性な性格は、元々の性格なのか育ってきた環境のせいなのかはわからなかったが、そういう人間なのだと自分で思っていた。
 
しかし、20代か30代の時、意外にも新しい自分に出会うことになるのである。
変わろうと努力したわけでも、そうなりたいとその時に願ったわけでもなく、新しい自分がそこにいたのである。
 
私は親友のまゆちゃんに誘われて、ある夏、埼玉県の秩父・長瀞(ながとろ)のラフティングツアーに参加するのである。
長瀞にはウォーターアクティビティや川遊びを楽しめるスポットがたくさんあり、GWから夏にかけては大勢の人で賑わう。有名なのは荒川を木造の船に乗って下る「長瀞ラインくだり」や5〜8人でひとつのボートに乗り渓流を下る「ラフティング」だ。
 
私たちが参加したラフティングツアーはゴムボートに乗り渓流を下った後、川で遊び、小さな崖から川に飛び込むというイベントまで付いていた。
 
運動神経も良く長女であるまゆちゃんは要領よくゴムボートを漕いだし、するすると崖を上がって行った。私は、一生懸命彼女の後ろを付いていった。
 
崖のてっぺんに行くと、下から見ていたものよりずっと高く感じた。
二人ともジェットコースターなどの絶叫マシンは好きだったが、自力で高いところから飛び降りるという経験は今までなかったし、足がすくんで楽しめそうになかった。
 
同じグループの1組目が飛び込み、2組目が飛び込み、いよいよ我々の番が来た。
その時、突然頼もしい私が現れるのである。
 
「ちょっと待って、あこちゃん、無理。怖い!」
親友は怖さのあまり足がすくみ、腰が引けている。
 
「大丈夫。こういう時は心の準備ができるのとか待ってちゃダメ。行くって決めて飛び込むの。行くよ」
 
私だって怖い。高いところは大嫌いだ。
でもこの時は直観的に、立ち止まったらダメだと思ったのだ。
突然、「私がしっかりしなきゃ」という使命感というか、何とも言えない感情が沸き上がったのである。
 
「いい? 行くよ?」
しっかりとまゆちゃんと手をつなぐ。
 
「せーのっ」
二人一緒にジャンプする。
 
川から顔を上げた二人は笑い合った。
飛び込んでしまえば、思ったほど高くもないし、楽しい。
 
「あこちゃんすごい! 超頼もしかった。あこちゃんがいなかったら飛び込めなかった」
とまゆちゃんに言われたのである。
 
いつもなら、「待って。怖い」と言って立ち止まるのは私だった。
確かに、この時の私は我ながら頼もしかったと思う。
自分でも知らない自分に出会った瞬間だった。
 
自分で決断して周りを引っ張っていけるような人間になれたらカッコいいなぁ、と思っていた私。
理想として描いていた「自分で決断して周りを引っ張っていく」とはちょっと違うけれど、
自分にこんなに躊躇なく行動する一面があることが意外だった。
 
このラフティングツアーからはずいぶん月日が流れ、自力でどうにかしなければならないこともたくさん経験し、職場では部下を持つようになった今では、自分で決断できるようになった(なったというか、ならざるを得なかったのだが)が、この自分の知らない自分に出会い、「元々こんな一面も自分は持っていたんだ」と気づいたことは、とても面白い経験だったなと思う。
 
新しい自分に出会いたい方は、今までやったことがないことに挑戦してみるといいと思う。
新しい刺激が、新しい自分を呼び覚ましてくれるかもしれない。
 
 
 
 
***
 
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2023-05-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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