メディアグランプリ

筋トレをすればするほど筋肉が落ちていく、嘘みたいな本当の話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:平沼仁実(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
体重計の数字と、鏡に映る自分の姿。
「さすがにこれはまずいな」
産後増えたまま戻る気配のない体重。
浮き輪のとれない下っ腹。
歩くと擦れる内もも……。
 
どうにかしなければ。
けれど美味しいものを食べるのは人生の楽しみの一つだし、働いた後のビールも生き甲斐だ。
 
何か、運動をしよう。
 
学生時代は水泳部に所属していた。
毎年夏にある大会の前は、毎日10km泳いでいた。
きつくて苦しくて、練習メニューを組んだ主将を呪った。
ゴーグルの中に涙を溜めながら、泳いだこともある。
筋トレなんてしなくても、プロテインなんて飲まなくても、ただ練習するだけでどんどん筋肉がついた。
写真の中で、タンクトップを着て、満面の笑みで、顔の横でピースサインをする私。
笑えるくらい立派な上腕二頭筋を、恥ずかしげもなくさらしている。
 
あれから20年。
あの時つけた筋肉は跡形もない。
あとに残ったのは共に泳ぎ抜いた戦友との友情だけ。
今となっては25m泳ぎ切る自信もない。
 
結婚当初、夫婦そろって「幸せ太り」して、スポーツジムに入会したことがある。
張り切って始めたものの、休みの日にわざわざ電車に乗って通うのが面倒で、徐々に足が遠のくようになった。
そして何の成果も出ないまま、数か月で挫折した。
それ以来の、運動だ。
 
通いやすい、長く続けられそうなジムを探した。
自宅から徒歩数分で、営業時間も長い。
筋トレと有酸素運動を組み合わせたトレーニングは、1回30分。
ここなら、仕事と育児のすきま時間に無理なく通えそうだ。
 
さっそくトレーニングが始まった。
仕事が終わってから子どものお迎えまでに、30分あれば通える。
夜遅くまで開いているので、子どもたちが寝た後に通うこともできる。
時間を見つけては、足しげく通った。
 
このジムでは定期的に、トレーナーによるカウンセリングがある。
体組成計で体重や体脂肪・筋肉量などを測定し、トレーニングメニューの変更などを相談する。
 
通い出して1か月。初めてのカウンセリング。
2、3日に1回のペースでトレーニングに通った。
食事も食べ過ぎないように気を付けている。
期待しながら体組成計に乗った。
 
体重:1㎏減 よしよし。
体脂肪:不変 あれ?
筋肉量:1㎏減 え??
 
体重が減ったのは良いが、筋肉量が減っている。肝心の体脂肪は変わっていない。
おかしいな。
そうは言ってもまだ通い出して1ヶ月。
来月に期待だ。
 
さらに1か月後。
体重:不変
体脂肪:1㎏増
筋肉量:1㎏減
 
筋肉量がさらに減り、体脂肪は減るどころか増えている。
トレーニングには同じペースで通い続けている。
それなのになぜ?
 
トレーナーから「食生活はどうですか?」と聞かれた。
たしかに夕飯を作りながら飲むビールは格別で、毎日の日課だ。
しかも飲むと食欲が増し、気持ちも大きくなって、つまみ食いしながら飲んでいる。
これが原因?
でもこれはトレーニングに通う前からのこと。そもそも「食事制限はしたくない」から運動を始めたのだ。
 
その後もトレーニングには同じペースで通い続けたが、減り続ける筋肉量。体脂肪はほぼ横ばい。
信じられない。
お金を払ってジムで運動していて、筋肉量が減っていくなんて。
さすがの私も腹をくくった。
 
毎日のビールとつまみ食いを止めた。
食事量を減らした。
プロテインを飲み始めた。
トレーニングにほぼ毎日通った。
 
目標があると頑張れるタイプなのだ。
 
その結果。
体重は減った。
しかし、その分さらに筋肉量が減った。
 
頑張ったのになぜ……。
これ以上、一体何をどうしろというのか。
 
何だかトレーナーに八つ当たりしたい気持ちにさえなってくる。
「トレーニングやらない方が良いんですかね」
喉まで出かかった言葉を飲み込んで、質問した。
「運動していて筋肉量が減るというのは、納得がいきません。どうしたらいいでしょうか」
 
タンパク質は十分摂っているか。
睡眠時間は適切か。
ストレスはないか。
 
トレーナーから聞かれることに、特に該当する問題点はない。
 
「炭水化物は、どのくらい摂っていますか?」
 
炭水化物はもともと控えめにしている。
夜は基本、おかずしか食べていない。
トレーニングに行き始めてからはさらに気を付けている。
朝のパンもできるだけ低糖質のものを選んでいる。
昼はおにぎりを止め、糖質オフのプロテインバーなどにしている。
 
「炭水化物が、少なすぎるのかもしれません」
 
え?
炭水化物はダイエットの敵じゃないの?
抑えれば抑えるほど、良いんじゃないの?
 
筋肉量を増やすには「タンパク質」と「糖質」が必要で、炭水化物をきちんと摂らないと「糖新生」が起きる。
糖質が足りないと、エネルギーを生み出すためにタンパク質が分解され、筋肉が落ちていくという。
 
良かれと思って炭水化物を控えていたことが、筋トレをしても筋肉量が減ってしまう原因だったとは。
運動に食事制限を加えたら、より効果的だと思っていたのに。
目標があると頑張れる、それが裏目に出たなんて。
 
ショックだった。
心が折れそうになった。
 
でもこれで改善策が立てられた。
これからは炭水化物もきちんと摂りながら、トレーニングを続けよう。
 
私は目標があると頑張れるタイプなのだ。
 
 
 
 
***
 
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2023-05-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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