メディアグランプリ

子供もいないし結婚もしてない私が子育て漫画を読む理由


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記事:岩間愛(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「結婚願望はあるの?」という質問は少し緊張する。
したくない、という訳でもないし、絶対したいというほどの強い想いは持っていない。よく遊ぶ友人たちが結婚していないのもあって、焦りもしない。孤独が怖くて婚活をしている友人はいるが、独りでなんでもやってきた自分にはなかなか共感ができない感覚である。
 
誰かと付き合っていたことはあっても、私が結婚相手ではこの人が可哀想だと思うことは密かにあった。誰かと生きるには、私が自由すぎるからだ。お陰様で恋人すら作れなくなったのが今の自分である。
 
そんなおひとり様の私がハマっているのは、Twitter上で漫画を読むこと。
学園、ファンタジー、SF、ホラー、恋愛ものは同性ものだろうととりあえず目を通すくらい雑食だ。リアルな話がベースになっているエッセイ系漫画は、生きた漫画のような感じがかなり好き。好きな絵柄やストーリーは見つけ次第どんどんリストに入れていく。
 
漫画を読めば読むほど、たくさんの作者に出会える。
最近のTwitterは、自分がよく見るジャンルの情報を勝手に集め、おすすめとしてタイムラインに流してくれる。画面を更新すると、その時ホットなツイートが一気に表示される。それを適当にスクロールしながら、漫画はとりあえず開く。
ぼーっとしながらこの作業をしている間は、誰にも邪魔されない自由な時間だ。
 
そのうち、子育て系のエッセイ漫画がよく目につくようになった。
実際に流行っているのか、自分用にカスタマイズされているのかはわからない。
単に子供の成長を描くものだけでなく、夫婦や家族との関わりについてや、親という立場になってから気づいたことなど、世の中のお母さんたちにも役に立つようなことも含めてたくさんシェアされていた。投稿には「私だけじゃないことを知れて嬉しい」「妻の気持ちが少しわかったかもしれない」など、感謝のメッセージで溢れていることも多い。悪い意味で拡散される情報には興味がない自分にとって、この平和な世界がとても好きだった。
 
おもしろおかしく描かれたものも多く、「本当に子育てしながら描いてるの?」と思うほど。丁寧でわかりやすい内容に対して、純粋にすごいなあという気持ちで最初は見ていた。数を見ていると、段々とわかってくることがある。
どこから出てきているのかわからない執筆パワーは、子供への愛情がエネルギーになって描かれているようにしか見えないのだ。自分の子供が可愛いという内容はわかりやすいが、言うことを聞かない一番大変な時期だったり、少し大きくなってからの子供との対話だったりする。なかなか子供がいる友人からも聞けないような重たい話もあった。
 
中でも記憶に残っているのが、自分の子供がいじめをしていたことを告白したものだ。
デフォルメ化された絵柄と内容のリアルさのギャップが凄かった。子供を信じたいという気持ちと、まさか自分の子供がという感情がぐちゃぐちゃになって、冷静でいたくてもいられない感情が生々しかった。
 
いじめの事実を学校から知らされ、まずは子供に「学校で何かあった?」と聞く。「何もないよ」とヘラヘラしながら返してくる。その言葉に一応安心しつつも、事実確認のために裏で色々と動く。段々と見えてくる真実と共に、どんどん母親の感情は乱されていった。
当然のように嘘をついたことや、いじめをして平気な顔して帰ってきていることに対して湧き上がってきた「気持ち悪い」という感情も正直に描いてあった。もちろん、自分の子に対してそんな感情を持ちたくないという葛藤も一緒に。子供との向き合い方を本気で考えていかなければならないという覚悟は、決して他人には向けられない「自分の子への愛情」とも受け取れるような内容だった。
最初から最後まで、本当にリアルだった。
 
私は親に対して嘘をつく癖があった。しかも秒でバレて、余計に怒られる。
何度も似たような嘘を浴びている親の勘は、どんどん磨かれていった。怒られたくないから隠すというのがベースにあるが、呼吸のように出てくる嘘の成長はまったくなかった。この繰り返される茶番の裏では、とんでもない親の葛藤があったかもしれない。
「お前はすぐ嘘をつくから信用できない」に対して「どうせ信じてくれない」と返していた。親である自分に対して子供が本当のことを言ってくれないのだ。親としての自信をただひたすら削る嘘をぶつけていたのかもしれない。もっと気持ちを伝えてくれたら、ちょっとは変わったのかなって今なら思う。
 
親との関係性は今でも良好だとは言い切れない。
記憶に残っている親の姿は、どうしても厳しいものしかなく、本心がどんなものかを確かめられる気はしない。でも、Twitterから覗ける親御さんたちのリアルな物語は、自分の母親に対する理解を深めてくれていると思う。生まれてからあっという間に成長していく子の姿に喜び、自立するにつれてできてくる距離感に寂しさを感じ、大きくなったからこその関わりで味わえる感動。親が子に向ける視線には、隠しても隠しきれない愛情が溢れていた。
 
本当かどうかはわからないけれど、自分の親もきっとこうだったかもしれないな、と思うとたまらなく嬉しい。子育てエッセイは、関係が難しい親のことでも好きになれるエッセンスが詰まっている。
 
それに、私も子供に愛情を注いでみたいとも思えてしまうのだ。
やっぱり結婚願望はあるのかもしれない。
 
 
 
 
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2023-05-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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