メディアグランプリ

インド映画もびっくり。踊るハンガリー人


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:高瀬敬子(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「え!? 英語話せるんじゃん!」
毎朝顔を合わせていたのに、彼らが英語を話せることを知ったのは約1年経った学年の最終日です。
 
留学先のバレエ学校では、私たち留学生(日本人、フィンランド人、リトアニア人)は毎朝7時から20名ほどのハンガリー人の学生と一緒にバレエのレッスンを受けていました。ハンガリー語を話せない留学生組は、英語を話せない彼らとほとんどコミュニケーションを取れず、打ち解けることはできないまま学年の最終日を迎えました。この日は学年末試験が行われます。バレエの試験は通常の90分のレッスン内容を試験用に華やかにアレンジして練習し、当日担任の先生以外のいろいろな先生たちの前で披露します。個々に5から1の評価がつきます。
 
試験直前の更衣室はみんな緊張でピリピリ張り詰めていました。そんな中、私の隣で留学生の一人が「ヘアスプレーを持ってくれば良かった」と呟いたら、そばにいたハンガリー人の学生が「私持ってるからかしてあげる」と突然英語で言ったのです。
 
これには呟いた本人も私もびっくりして思わず顔を見合わせました。英語話せるんじゃん! 彼らは英語を話せないのではなく、話さないのだとわかりました。一応1年間毎朝一緒にレッスンをしてきて、共に試験を乗り切らねばならないという不思議な連帯感と切迫感がそこにはあった気がします。それがハンガリー人の彼女に英語でヘルプを申し出る、という行動をさせたのではないかと思うのです。しかし留学生活最終盤でこれに気づくとは……。もう少し時間があったらちょっとは仲良くなれたかもしれません。
 
教育はしっかり受けていて実は英語を話せるけど積極的には話さない、なんだかとても日本人ぽいなと思いました。日本は島国、ハンガリーは周りを他国に囲まれた内陸、歴史的背景も異なるのに国民性に似たところがあるのは面白いなと感じます。
 
そんなシャイなハンガリー人が突然陽気になる場面。それが結婚式です。
 
ハンガリーに1年住んだのに、結局ハンガリー人の友人は全くできず、仲良くなったのは週1回夜に通ったハンガリー語教室で知り合ったイラン人、ポーランド人、中国人でした。
 
この中国人は新婚で、仲良くなった私たちを結婚式に招待してくれました。旦那さんはハンガリー人なので、結婚式はハンガリースタイルとのこと。彼女はそのために「ダンス教室に行ってる」と言っていました。え。わざわざ? と思ったのですが、西洋では結婚式でダンスをするのが普通なのかな? 日本も中国もカップルで踊る文化がないので、習った方が安心なのかもな、と思いました。その時に私の頭にあったのは社交ダンスのようなイメージです。
 
結婚式当日、彼女がわざわざ習いに行った本当の意味がわかりました。
 
結婚式は絵本に出てくるような、いかにもヨーロッパな古い街並みの中にそびえる美しく巨大な本物の教会で厳かに行われました。その後場所を公民館のような所に移し、日本でいう披露宴が行われました。披露宴では日本のように、動画を流したり余興を見せあったり手紙を読んだりはありませんでした。
 
あるのはほぼダンスのみ。ハンガリー人たちは食事もそこそこに、とにかく踊るのです。
 
披露宴にはDJが雇われており、彼が延々と陽気な曲を流し続けます。
年齢に関係なく、男性も女性もお年寄りも子供も全員とにかく踊ります。社交ダンスのような男女が組んで踊るのとは全く違う、くるくる回ったり、身体を左右に動かしたり、独特のダンスが繰り広げられます。
 
我々ゲストも例外ではありません。とにかく見よう見まねで踊るしかない。必死に踊りました。
 
一番面白かったのが、その場にいるほぼ全員が新郎を先頭にしてムカデのように繋がって練り歩くダンス。新郎は金属の桶を木の棒でボコボコ叩きながら歩きます。何か意味があるのかもしれませんがさっぱりわからない。でも楽しい。どんどん人が繋がって、長い長い列になっていきました。
 
他にも男女が分かれてどちらがよりうまく踊れるか競い合いをしたり、新婦にお金を渡すと一緒に踊ってくれる、というコーナー? があったり。新郎も新婦も休む暇がない。
 
このために彼女はダンスのレッスンに行ったのだなぁと納得しました。
 
披露宴は夕方5時ごろ始まったのですが、私たちが退場したのが午前3時くらい。新郎のお母さんを含めまだ残っていた人たちもかなりいました。この新郎のお母さんがめちゃくちゃ元気で、最初からずっとガンガン踊りまくっていました。体力が尋常ではありません。
 
文字通り朝まで踊り明かす、それがハンガリーの披露宴なのでした。
私はなんだかインド映画を見ているような気分になりました。
 
我々外人組はもうへとへと。この中で一番ハンガリーに近いお国出身なのはポーランド人ですが、「ポーランドにこれはない」と言っていましたので同じヨーロッパでも披露宴は色々バリエーションがありそうです。
 
日常生活では前述の通り、ハンガリー人は決してオープンマインドな民族とは思えないちょっと内気な印象だったのですが、披露宴でのはっちゃけぶりを見て大変面白いなぁと思いました。留学の最後に大変良い思い出になりました。
 
 
 
 
今、私たちを結婚式に招待してくれた中国人には2歳の子供がいます。最近動画が送られてきました。
 
「息子を初めてファミリーイベントに連れて行ったらダンスの時間があった。ハンガリー人が全員あんなに踊れる理由がわかった。こんなに小さい時から踊るんだから。息子はすでに私よりダンスが上手い」
とメッセージが添えられていました。
 
確かにその動画には、披露宴で聴いた音楽で楽しそうに体を動かす男の子がいました。DNAに刻まれているのかもしれません。
 
 
 
 
***
 
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2023-05-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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