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私なりの親孝行


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記事:あこ(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「7時間立ちっぱなしで新幹線できた」
6月3日、品川で出会った両親は、こう報告してきた。
私の両親は70代。関西在住である。
6月3日から2泊3日で東京に住む私に会いに来る予定をしていた。
 
6月3日は、前日の台風による大雨の影響で新幹線のダイヤが乱れた日。
新大阪発の新幹線は、午前中は1時間に1本の運行、その上、名古屋止め。
名古屋~東京間は午後から順次再開。
朝の9:30過ぎに、東京にいつ着けるかわからない、と両親が連絡してきた。
その後、「名古屋行きの新幹線に乗った」「名古屋発東京行きに乗った」と数時間おきに連絡をくれたが、多分新幹線は大混雑だろう、と予想はしていた。
しかし、まさか、立ちっぱなしで来るとは。
母が膝を少し痛めていることもあり、両親の年齢のこともあり、大丈夫だったのか? と私が聞くと。
「どうしても東京に行きたかったから」と返事が返ってきた。
 
4年前に私が東京に引っ越した時から、一度は私の家に行きたい、と母がしきりに言っていた。理由は分かっている。
母は私が心配なのだ。姉妹で唯一、結婚もせず、遠くに住む私が。
 
東京についてからの両親は疲れているにも関わらず、始終ご機嫌だった。
せめて食事代だけでも払う、と私が言うと「まだ、自分達も働いているから、大丈夫。あなたには、他の姉たちに比べて、してあげられることが少ないから」と、払わせてくれない。
 
2人の姉は、両親に近くに住んでいる。両親は孫の面倒を見たり、姉の家族と食事に行ったりしている。
多分、そういう姉たちへの諸々の援助と比較して、私には「してあげられることが少ない」と言っているのだと思う。
けれど、私はそれを不公平だとも思っていない。
東京に来たのも、結婚していないのも私の意思だ。
むしろ、私は自由になりたくて、姉妹で唯一、一人暮らしをし、勤務地も変えてきた。
親から、早く経済的に自立をし、自由が欲しいとも思っていた。
だから、私は今の自分の生活に満足しているし、姉たちを羨んだこともない。両親の援助が欲しい、と思ったことも特にない。
 
けれど、両親にとっては、子供はいつまでも子供なのかもしれない。
自分達が子供に何かしてあげることが嬉しいのかもしれないな、と思った。
なので、両親の東京旅行中は、ご好意に甘えさせてもらうことにした。
 
実は私は母のことを「嫌だな」と思っていた時期が長かった。
特に社会人になってからは、仕事のことや結婚のことで意見が合わないことが多く、自分の価値観を押し付けてくる母親に嫌気がさしていた。
かつ、「結婚してほしい」「親の近くに住んでほしい」という母の願いを叶えてあげられない私は「親不孝なのではないか」と思うことも多かったからだ。
 
しかし、今年の正月、母が結婚の話を全くしなくなった。
理由は、姉が「妹に帰ってきて欲しいなら、結婚の話はしないこと。実家に寄り付かなくなるよ」と母に言ったことがきっかけだった。
その話を聞いてから、「母は、私ともっと会いたいのかもしれないなあ」と思うようになった。
そこで、両親に旅行を提案したのだ。そして、今回の東京行きが決まった。
 
東京旅行中、本当に楽しそうに、ニコニコしている両親を見て、「私は、私がやりたい方法で、両親を喜ばせよう」と思った。
私にとって結婚することや両親の近くに住むこと、は難しい。
でも両親を喜ばせる方法はそれだけではないし、私がやりたい方法で喜んでもらえれば、お互いハッピーだ。そんな風に考えた。
 
これって、普段の人間関係にも言えることだと思う。
相手を喜ばせるために、自分が無理をする、自分がやっていて苦しいことをする、自分のやりたいことを我慢する。
自分の喜びのために、相手にこうして欲しい、こうあって欲しい、と願ってしまう。
こういう関係は、片方が苦しくなってしまい、長くは続かないと思う。
自分がやりたいこと、やっていて楽しいことで、相手が喜んでくれる。
これが、お互いを幸せにするし、長続きする。
そして、この「自分が楽しいこと=相手も嬉しいこと」が、多い相手とは相性がいい、とも言えるのではないだろうか。
 
もう1つ、この旅行で気づいたことがある。
父が母に対して、とても優しいのだ。
私の家は、自営業をしていることもあり、普段は両親が協力して仕事をしている。
一方で、お互いイライラしたり、少し悪口を言っていることを聞くことがある。特に、娘たちが家を出て、二人で暮らすようになってからは、悪口の回数が増えていた。
 
しかし、この旅行中、父は、ずっと母を気遣っていた。
母の行きたいところを聞き、母の趣味に合わせて観光場所を提案する。
母の荷物を持ち、歩幅の遅い母に合わせて歩く。
そんな父を、いいな、と思った。
そして、70代を超えても仲が良く、娘に「何かしてあげられること」を喜ぶ両親を、素直に素敵だな、と思った。
 
とはいえ、まだまだ私には、結婚も、婚活も遠そうである。
いや、このまま一生しない、ということもあり得る。
 
でも、今回の東京旅行で、姉たちとは違った「私なりの両親の喜ばせ方」があることを発見した。
今後も、両親のことを旅行に誘おうと思う。
以前、母が「一生のうちに、もう出会える日数は1年も残っていない」と言っていたことを思い出す。
確かに、年10日出会えたとしても、今の生活ペースなら1年は残っていないかもしれない。
両親との出会いも「縁」の一つだと思う。
だからこそ、出会える時間は大切にしていこうと思う。
 
私でもできる「親の喜ばせ方」が見つかってよかった、と思った。
 
 
 
 
***
 
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