メディアグランプリ

なにかをやろうとすると立ちはだかる壁、壁を超えるには

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:コスモス(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
「まったく日本の男ってのは!」
私の尊敬する絵本作家のA女史の、のっけからの一言である。彼女は80代、朝早くお散歩するのだそうだ。出会う人たちは、男性ばかり。しかも不愛想。朝の挨拶に返事があるのはましな方だが、もごもごと口の中でいうばかりで聞き取れない。彼女曰く。はっきりしろよ! と心の中で先ほどの思いが湧いてくるってわけだ。
つまり、女たちは朝ごはん等、家事に追われ、朝、散歩する暇もない。日本の男は女たちにささえられてるのよね、と運萬やるかたないと言った口調である。
 
私は彼女の切れの歯切れ良いこき下ろしに心の中で快哉を叫び、大いに笑う。
もっとも笑うのは自分を嗤うところがあるからなのだ。
 
ジェンダーの問題も自分が自分を縛っているからだ。そのように躾けられてきて、不満があっても自分でやった方が早いとばかりつれあいの世話をやき、挙句の果てには怒鳴られたりもしている。逃げることも断ち切ることも老齢の今となってはできない。
 
そこで、残り少ない生きている時間をせめて楽しく過ごそうと考えるかというと、そうではない。どうやらこれまで生きてきたように残りの人生を過ごしてしまいそうだ。
 
なにかをやろうとすると無意識に経験からの推しはかって、もう一人の自分が自分にブレーキをかけるのだ。
 
一人で海外旅行したいなぁ、でも、介護が必要な連れ合いをほおってはいけないわね。
たまには美味しいものを食べに行こうかしら、ただ、つれあいの食事と片付けがあるからかえって面倒だから無理ね。
 
というわけで、良心がいたまないでやれることは少ない。年齢の壁は厚いのだ。何かをやろうとすると、今まではジェンダーの壁が高くそびえており、乗り越えるのに苦労した。
ところが今はというと、さらに分厚い年齢の壁が立ちふさがる。
 
体力的に落ちている。駆けだそうとしても足が動かないし、記憶にとどめておこうとしてもすぐ忘れる等、気力も落ちている。自覚はしていても他人に指摘されたり、憐れまれたりするのは嫌なのでつい見栄を張ってしまう。電車で席を譲られたりすると最悪だ。結構ですと言ってつんけんした言い方をした自分を恥じたり、さすがにくたびれて譲ってもらったはいいが、余計に背を丸めて憐れっぽくなっていく自分に腹を立てたりする。ことほど左様に自分の老いと世間様が押し付けてくる老者は弱者という思い込みとの折り合いをつけてゆくのは難しい。
 
見た目は確かに弱々しい婆さんかもしれなから受け入れてできることをやればいいのではとあきらめ、その境地で、他者の眼を自分に当てはめ波風を立てないようにするのが上策かもしれない。
 
ところが、年齢を隠れ蓑にさせない人たちに出会ってしまった。オンラインで絵本の読み聞かせをするグループだ。仕事ではなくボランティアだが、しっかりした組織と体制が組まれている。
お互いにできないことは助け合い、得意なことを通して子どもたちに豊かな絵本文化を届けようとしている。ITに弱いなどと言っていられない。どうすればいいのか即座にグループの誰かが指示してくれる。誰もが人生で今が一番若いのよ、今やらなきゃいつやるのという心意気で動いているようだ。
 
誰もが年を取るのだからとはいえ、生死は思案のほか。無事に老年期を迎えられるとは限らない。老年期は、順調に年齢を重ねることができていることに感謝し、生かされている意味を自分に問いつつ生きることができる実に豊かな時間なのかもしれない。
 
自分が老齢であることに負い目を感じていたのは外部評価を自分に取り込んでかってに逃げていたにすぎないことを気づかせてもらった。
自分を向上させようとする営みに遠慮はいらないのだ。客観的な事実として高齢期には今まで出会ったことのない様々な困難もあるに違いない。体が柔軟性を失いつつあるように心も硬直してくるかもしれない。
 
でも、大丈夫。志があれば。
より良い文化を次の世代の子どもたちに届けようという思いがあれば、瑞瑞しい感性が自分を助け、四次元世界を体感させてくれるに違いない。
 
なにかをやろうとすると立ちふさがった年齢の壁。そんなものは自分が勝手に作り上げてきたものだ。エイジフリーを今こそ掲げて邁進しようではないか。
見かけの衰えに自分自身が惑わされて、内心の烈々たる思いを無視しないで進んでゆくのだ。
 
それでこそ長く生きてきた甲斐というものではありませんか。
 
ぼやきたくなる時、しばし、四次元世界に思いをはせている。
絵本のよみきかせであれ、ストーリーテリング(おはなし)であれ、児童サービスの方法として定着している。児童サービスは子どもたちの未来を見据えてより良い文化を伝えようとする活動だ。それに関係する活動に参加する人々は、ジェンダーフリーは勿論、エイジフリーなのだ。現実世界の三次元を越えて、未来を思う時、自ずと四次元世界が妄想できる。
立ちはだかる壁ナンテ、そもそもないのかもしれない。
 
 
 
 
***
 
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2023-06-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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