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塩は調味料ではなく、材料である


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ちゃお((ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
「このお肉柔らかい!!」
 
母の知り合いがやっている隠れ家の料亭。
 
そこの料理は何を食べても美味しい。
とは言ってもフランス料理やイタリアン料理ではなく、
昔ながらの家庭料理が主。
そう、ザ・和食。
 
どれも懐かしい感じで、体に優しく溶け込んでいく。
 
15年以上前、女将は私の家の近所に隠れ家的にお店を構えていた。
その時も定期的に通っていたのだがある時、突然辞めてしまって。
残念に思いながら時を経て偶然にも母が知り合いから紹介され、
一人で独立してお店をやっていることを知る。
 
そして数ヶ月に1度は食べたくなり通うようになった。
 
 
ある時、友人と一緒にランチに行くと友人と女将が意気投合。
話が盛り上がって、料理教室を開いてもらうことになった。
 
 
恥ずかしながら私も友人も料理は不得意な者同士。
お互い主婦歴20年ほどにもなるのに。
50を目前に、女将の料理を食べ、日常的に美味しいものを食べたいという思いが
沸々と湧くとともに、毎日、こんなに体に優しいものが食べられたら幸せだよね〜。
と二人で話していたのだ。
 
そこで思い切って
家庭料理の基本を教えてほしいと頼んでみたところOKが出た。
 
ダメもとでも言ってみるものだ。
 
こうなったらすぐに行動すべし。
話が流れないように日時、費用など話を詰める。
参加者も友人と二人の予定だったが、人数が多い方が楽しいということになり
私の母や叔母も呼び総勢4名で参加することになった。
 
 
話が具体的になると、ワクワク感が増してくる。
料理教室の日を楽しみに指折り数えてその日を待った。
 
 
料理教室、当日。
隠れ家のお店の厨房に初めて足を踏み入れる。
 
料亭の厨房に入ることなどなかなかないことなので
興味津々にあたりを見渡す。
 
コの字型のキッチンの真ん中に大きなテーブル。
調理器具やお皿、流しなどの配置も一眼見てわかるようになっている。
 
ここで調理しているんだ。
 
 
テーブルには
新聞紙が1枚広げて置いてあり、その上にまな板や包丁が置いてある。
 
参加者4名はテーブルを囲み、女将の説明に耳を傾ける。
 
今日のメニューは
鶏もも肉のトマト煮
生姜と空豆・ヤングコーンの揚げ物。
 
 
作業はまず材料の下処理から始まった。
 
材料は
玉ねぎ
ピーマン
ズッキーニ
生姜
ニンニク
そら豆
ヤングコーン
鶏モモ肉。
 
手分けして女将が言った通りに包丁を使って
野菜を切っていく。
 
 
玉ねぎはくし切り。
ピーマンは半分に切ってから6等分。
ズッキーニは1センチメートルの輪切り。
生姜は皮のまま千切り。
ニンニクは微塵切り。
 
 
頭ではこんな感じとイメージも湧いているしわかっているつもりでも
家で料理するのとは違い、人が見ていると緊張するものだ。
 
ズッキーニ1cmと言われても、このくらいでいいのか、一応確認する。
(人の目というのはすごい影響力だ。)
 
玉ねぎのくし切りも今回の料理ではどのくらいの大きさでいいのか
慎重になる。
 
そしてお互いに材料を切りながらも
普段気になっている
材料の下処理の方法や保存方法など
普段疑問に思っていることなどを話してみる。
 
それぞれの家庭のやり方を皆に聞いてみると、それぞれに違っていて面白い。
「へ〜」「ふーん」など興味深い相槌が飛び交う。
 
一通り意見を聞いてから最後に女将が話す。
 
聞いてみるとさすが女将、料理の一手間が違うのだ。
 
その一つが「塩」。
目から鱗だった。
 
女将は塩を5〜6種類用意していて
料理の用途別に使い分けをしているとのこと。
 
今回の料理で使うのは
岩塩、藻塩、沖縄の屋我地島塩、北谷の塩の4種類。
 
女将は塩の説明をしてから小皿を取り出し
塩を少しずつお皿に出して
「ちょっと舐めてみて」といった。
 
塩の味比べ?
塩なんてどれもそんなに変わらないのではないか?
一瞬そんな考えが頭をよぎったが、言われた通りに味比べをしてみる。
 
実際に感覚を研ぎ澄まして舐めてみると、
人の顔と同じように、塩の味もそれぞれに違う。
 
一言で塩と言ってもこんなにも味が違うものなのか。
 
考えてみると家には1種類の塩しか用意してない。
だから味比べすることなんてまずないことなのだ。
 
それぞれの塩は微妙にしょっぱさが強かったり弱かったり、なめらかだったりする。
 
また人によっても好みが分かれる。
私は岩塩がいいとか藻塩がいいとか。
味覚も人それぞれ。
 
 
そしてさらに衝撃的だったのが、
藻塩という塩に関して女将は
フライパンで炒ってから使っているとのこと。
 
 
塩を炒るなんて初めて聞いた。
 
炒った藻塩とそのままの藻塩、両方を見せてもらう。
見比べると微妙に色が違うのが分かる。
 
炒った藻塩はピンク色が濃く少し茶色っぽく見えるのだ。
 
 
塩も調理の対象になる!!
 
 
そんなこと想像したこともなかった。
塩、一つにも手間をかけるのかと。
 
衝撃的。
 
女将が「料理の鉄人」のように思えてきた。
(平成初期のTV番組をご存知だろうか。)
 
そして周りを見渡すと
母も叔母も友人も目が点になっていた。
(きっと私も同じだったと思う。)
 
 
そんな私たちの顔を見て、女将が
「めんどくさいけどこの一手間で味が全然変わるんだよね。」
と。
 
なるほど。
めんどくさがり屋の私は
「めんどくさい」が最優先になっていて
食材に対してそれほど深い世界があるとは思いもしなかったし
考えも及ばなかった。
 
「塩は調味料としての役割」
と自分の固定概念が凝り固まっていたとしか言いようがない。
 
天地がひっくり返ったような気分になった。
 
 
野菜やお肉と同じように「材料」とみなして調理するものとは。
 
ユニークだなぁ。
 
体の奥底から
湧き上がるようなワクワク感が広がるのを感じる。
こんなふうに普段から料理を教えてもらえたら、面白いなぁ。
 
ちょっと子供の頃に戻った気分になった。
 
料理開始時からワクワク。
そして出来上がったものたちをじっくり味わって食べてみる。
 
使った材料も調味料もありありと思い浮かべて食べてみると
口の中でそれぞれの味が融合されながらも感じ取れるものだ。
 
塩を通して新たな発見。
体に優しいものが食べる一歩を踏み出す1日となった。
 
 
 
 
***
 
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2023-06-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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