メディアグランプリ

ピンピンコロリで急逝した父からの最後のギフトは
RPG「ピンピンコロリ 父からの挑戦状」という冒険ゲームだった


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:アズマヤミワ (ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
「姉ちゃん、親父が死んだ」
少なからず、近い将来聞くであろう言葉。
できれば数年後、できたら十数年後に聞きたかった言葉を突然、
電話口で弟に言われた。
とにかく帰省しないといけない状況だということを理解するのがやっとだった。
各所に連絡し、帰省の準備を行うが頭が一向に働かない。
新幹線に乗ってからは弟とのやり取りが始まった。
いや、冒険が始まった。
RPG「ピンピンコロリ 父からの挑戦状」とでも名打ちたい。
 
最初の難題は「どこの葬儀場の互助会に入っていたのか?」という謎を解かなければならなかった。
 
姉勇者「お父さん、重要なものをまとめたカバン準備しとるって言ってたけどその中にないと?」
弟勇者「色々、書いてくれてたノート(以後大事ノートとする)だけが見当たらんのよ」
この互助会問題をクリアしないと次のエリアには進めない。
 
弟は病院でのやり取りや親族とのやり取りを主にしてくれていたため、私はスマホで実家周辺の葬儀場を検索し弟にラインで送った。
 
意味もなく背筋だけが武士の様にピンと伸びた状態で座ってるなぁと窓に映りこむ自分を冷静に見て思ったことだけは鮮明に憶えている。
ある意味、戦に乗り込むようなものだった。
RPGの勇者に私と弟は父の死後、強制的になっていった。
 
久々に再会した父はもう話もできない冷たい状態だった。
 
昨日までいや、数時間前まで本人もまさか自分が死んでしまうなんて思ってもみなかっただろう。まさに皆の憧れる「ピンピンコロリ」を突然意図せずやってのけてしまったのだ。
 
全く実感が湧かない中、恐ろしい勢いでやらなければならないことだけが玄界灘の荒波のごとく押し寄せてきて一瞬でのまれた。
母は持病もあり介護が必要な状況だったため、弟勇者とこの状況を乗り切らなければならない。
何とか互助会問題もクリアし、葬儀屋のサポートを受けつつ冒険はどんどん進んでいった。
葬儀屋のサポートが素晴らしかった。プロってすごい。
落ち着いた対応で次に何をいつまでにしないといけないのかを的確に指示してくれた。
忘れているときはそっと声をかけてくれ
「先にこれをしましょう」
「これを準備して頂いてもいいですか?」
「ここの予算は削りましょう」など心情を先回りしてサポートをしてくれた。
私は果たして仕事をしているときにここまで心情に寄り添いながら的確な行動が出来ているのかと反省をしてしまうほどの仕事ぶりだった。
ドラクエで例えるなら町の長老か⁉
そして親族、友人の温かさにもふれた。
コロナ渦もあり3年ぶり以上の悲しい再会ではあったが私達には強い見方がいることを再認識させてくれた。
通夜に葬儀とあらゆる場面に起きる問題を姉弟勇者で何とかクリアして父を送り出すことができた。
私以上に弟勇者の成長が著しかった。
弟は若いころなかなかのやんちゃぶりを発揮してくれており、深夜明けの疲れ切った私に「甥っ子ができます」という目玉が飛び出すよなサプライズを母の闘病中にかましてくれた。
そんな弟が喪主として大役を果たし、テキパキと遺品整理も始めた。
姉勇者は書類関係、母の介護体制、香典管理、
弟勇者は親族や父の友人へのお礼の電話に遺品整理。
父の最後に着ていた洋服の上にぬか床を乗せて捨てようとしていた時はさすがに止めた。糠漬けが好きだったけどさすがにこれは酷くないか? という姉勇者の一言で弟勇者も我に返り別々に処分することにした。
 
実家のあらゆる場所に父が生きた証が散りばめられている。
カレンダーには母の通院予定が丁寧な字で書かれていた。
母の血糖値を記入するノートも新しいものが準備されており母のサポートをしっかりやってくれていたことが痛いほどわかり胸が締め付けられた。
冷蔵庫に貼られている父と母の体温や血圧の値を記入する用紙は父は8日で止まったままで母の表だけ加筆されていく。
父がいないことを強く実感させてきた。
そんなセンチメンタルな気分に浸りながらも冒険の問題は次々と出てくる。
冒頭でも述べた「大事ノート」が未だ見つからない。
RPGでいうところの「地図」が見つからないのだ。
通帳の暗証番号や加入している保険の情報などが一切わからないのだ。
そんな時、弟の嫁勇者がポツリと言った。
「財布の中に4桁の数字の紙があったような」
財布の中からピンクの付箋に4桁の数字まさに「呪文」が我々の目の前に現れた。
葬儀終了後、叔父から「しっかり遺言書みたいなもの探さないと大変ぞ。死ぬ気で探せ」と助言をもらっていた。この言葉もRPGの村人がすれ違う時に言いそうな言葉だ。
三人でハイタッチをしながら喜び、すぐに弟勇者が通帳をもってコンビニのATMでその呪文が使えるのか確認した。
通帳の呪文は解けたが、弟勇者がずっと言っている「大事ノート」は我々勇者の前に現れてはくれなかった。
しかし、突然その時はきた。
嫁勇者「これやない?」
クリアファイルに入ったルーズリーフに我が家の機密事項が書かれていた。
2回目のハイタッチ!
几帳面な父はきれいに書き直していたのかもしれない。
いつか訪れるであろう「死」という別れ。
考えたり話したりするのは辛いから何となく先延ばしにしてしまっていた我が家。
父は重要な書類だけは一つのカバンに集約してくれていただけでも助かった。
しかし、今後のお墓の話、仏壇の話など細かなことは私や弟とも話さずに旅立ってしまった。誰にでも等しくやって来る「死」。その準備、話し合いは早いに越したことはないと痛感した。そして感謝の言葉ももっと伝えておけばよかった。
勇者の後悔と冒険はまだまだ続く。
コロナの影響や成長に伴い全国に点在している従妹達に3年~10年ぶりに父のお陰で集合することができた。父は人が集まって宴会を開くことが好きだった。コロナで親族が集えないことを本当に寂しがっていた。
痺れを切らした父は体を張って「親族集結」と「弟の成長」、「プロの仕事ぶり」を私に見せてくれたのかもしれない。
四十九日、初盆と父三昧な夏がやって来る。
私は「父フェス2023」と名売って父の供養を楽しんでやってやろうとここに誓う。
そして父の残したRPG「ピンピンコロリ 父からの挑戦状」に挑んでいくこともここに誓う。
 
 
 
 
***
 
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2023-07-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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