人事考課はラブレターである
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記事:中村 愛(ライティング・ゼミ6月コース)
人事考課は上司からのラブレターである、と聞いて皆さんはどう思われるだろうか?
「は? そんなのいらねーし」、「とてもじゃないけど愛が入ってるとは思えないんですけど」等、好意的に受け取ってもらえるとはまず思えない。私自身、評価されることは苦手で、謙虚にありがたいと思ったことは、ほぼない。
それでも今の私は人事考課をラブレターだと思っている。その理由をお話ししてみたい。
「ああ、嫌だなあ、あゆみ返ってくるの」学期末が近づくと、娘が何度もつぶやく。
あゆみとは成績表のこと。テストは頑張ったけど残念な点数だった。結果を甘んじて受け入れるしかないけれど、ノートはA評価だったし、もしかしたら上がるかも、と期待もしてしまう、でも不安、の繰り返し。
私にも覚えがある。社会人になって嬉しかったのは、給料が貰えることとテストがないこと。解放感でいっぱいだった。
ところが、社会人になっても成績表があることを知った。いわゆる人事考課だ。
私の会社では年度初めに年度の目標と達成する為の自分のすべき行動を考えて記入する目標管理シートというものがあり、それを作成したうえで直属の上司と面談をする。年度末にはそのシートに年度の振り返りを記載し、さらに職位ごとに定められた項目に対する自己評価シートを作成し、それをもとに再度上司と面談をする、という流れが定められていた。目標は上司が事業所全体のものを設定し、それを基に所属する係や個人の目標を立てた。
ただし、上司が設定する目標は現場のスタッフにとっては絵に描いた餅的な要素もあり、実際の業務には落とし込みづらく、振り返りも形だけになってしまう印象が否めなかった。
上司との面談も、目標管理シートの話をするのは最初の数分であとは日常の愚痴を聞いたり聞かれたりといった雑談的なもので、考課の結果が示されてもなぜこのような評価になったのか、よく分からなかった。正直、上司の好き嫌いで判断していないか? と邪推してしまうような評価をもらう人もいた。
娘のあゆみには教科ごとに意欲・態度、技能、知識・理解、思考・判断といった細項目があり、それぞれに評価がついて総合で評定が出るので、ある程度はなぜこの結果になったのか、先生が娘をどう捉えているのかが分かった。それに比べて、もやっとすることの多い人事考課に意味を感じることは難しかった。
時が流れ、私も係長となり、人事考課をされるだけなく、する立場となった。
私は管理職といってもプレイングマネージャーだったので、とにかく多忙で係内のスタッフとゆっくり時間をとって話をすることが難しかった。
そうはいっても15人分の目標管理シートを確認してそれをもとに面談を組まなくてはいけない。現場の業務の隙間時間を何とか15人分ひねり出し、スタッフと面談の予定を組んだ。
ところがこれが思いもかけずスタッフとゆっくり話せる絶好の機会となった。内容は物足りないながらも一生懸命作ったのであろう目標管理シートを前に話を始め、今何に困っているのか、どうしていきたいと思っているのかを聞きながら、なぜこの会社に入ったのか、そもそもどうしてこの職業を選んだのか、など、何年も一緒に働いていても聞くことのなかった大事なことを知ることが出来た。そして、現状をどう捉えているのか、不満も聞きつつ、どうなったらよいのか、それに対して本人は、上司である私は何が出来るのかを一緒に考えた。人によっては育休後に復帰して出産前とは使える時間が少なくなって仕事がうまく回らない、と悩んでいる人もいたし、職種間の人間関係に悩んでいる人もいた。
面談で時間をかけてスタッフの話をじっくり聞くことで、その後どんなタイミングでどのように声掛けをすれば、その人が悩みを抱え込まず前向きに仕事に向かえるのか、ヒントを得ることが出来た。
そして、年度末の人事考課。同様に時間を取り、一緒に振り返るとともに、次年度その人が成長していく為にはどんなことが必要なのか一緒に考えた。
自己評価シートについては比較的明確な評価基準があったが、あくまでも自己評価なので、自分に甘い人も厳しい人もいて、そこからもスタッフを知ることが出来た。
年度末には、目標管理シート、自己評価シートそれぞれにコメントを書いてスタッフに返却する業務もあった。既に面談の時に話してはいたが、ここでまたそれをまとめて言語化する必要があった。大変な作業ではあり、勤務日では時間がなく休日出勤して作成した。
一人休日の事務室で黙々と書きながら、それが評価ではなく、スタッフに向けての私の思いを伝える手紙になっていることに気が付いた。これはよかった、ここが長所だと思う、ここを頑張るともっとなりたい自分に近づけるのではないか……それは大切なスタッフに向けての私からの応援歌であり、ラブレターでもあった。
そして振り返る。気づかなかったけれど、もしかしたら私も、今までたくさんのラブレターを貰っていたのかもしれない。立場が変わると視点が変わるものだ。これからは評価を疎ましいものと突っぱねず、そう考えてみよう。必ずしも私が欲しいラブレターではないだろうけど。
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