メディアグランプリ

父の命を救った想いとサプリ


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記事:松浦哲夫(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
父が病気で倒れた時、私は冷静ではいられなかった。病院に全てを任せて安心することなどできなかった。しかし、私は医者ではない。父を直接病気から救うことなどできない。そんな自分が父のためにできることは何か。頭をフル回転させて、私はある答えにたどり着き、結果的に父を救うことができた。父を想い、行動を起こした結果だった。
 
今から2年ほど前になる。夕飯の支度をしていた時、母から着信があった。出るなり母は叫ぶように言った。
「お父さんが倒れた、あんたすぐに病院に来なさい」
父が倒れた? それを聞いた瞬間、私は全身の血液が一瞬にして凍りつくような感覚を覚えた。母は続ける。
「もう意識がないって。あんた覚悟しときなさい」
覚悟。もちろんその言葉の意味するところはわかる。しかし、心がそれに全く追いついていなかった。
夕飯を作っている場合ではない。すぐに家を出て病院に向かわなければ。わかってはいても体が動いてくれなかった。私の頭には幼き日の父との思い出が走馬灯のように駆け巡っていた。
私のすぐ横で味噌汁が吹きこぼれ、コンロの火は勝手に消えていた。
 
私は車を走らせ、病院へと向かった。母から聞いた病室へと向かうと、父は酸素マスクを装着した状態で静かに目を閉じていた。眠ってはいない。父は明らかに医療的な措置で意識を失っていた。先に到着していた母は、すでに医者から父の病状について説明を受けていたようだった。
 
放心状態の母と二人並んで廊下のベンチに座った。母から聞きたいことはたくさんあった。なのに、口から言葉が出ない。周囲があまりにも静かだった。まるで母と私の周囲に分厚い壁が存在するかのように。
 
「お父さんね、脳梗塞なんだって」
その病名に聞き覚えはあった。たしか脳の血行不良により神経細胞に悪影響をもたらす病気だ。父は、若い頃から食事量も酒も豪快な人だったが、特に喫煙の量が多かった。また長年会社を経営していたこともあり、その身に多大なストレスを抱えていたことも知っている。脳梗塞になった原因など考えるまでもない。
 
「もしかしたら後遺症が残るかもしれないって」
そういって母は大きくため息をついた。脳梗塞は脳の神経細胞に影響を及ぼす病気であるため、後遺症が残る可能性は十分にある。そうなった場合、母の日常生活は一変する。つまり父の介護生活がスタートするわけだ。
 
「あんた、まだここにいるの? お父さんしばらく起きないよ」
私はもう少しここにいると言った。それから母は、父の入院生活の準備をするために足取り重く病院を後にした。
 
母を見送った後、私はもう一度父がいる病室をのぞいてみた。相変わらず父は酸素マスクをしたまま身動き一つしない。もし今父が目を覚ましたら、私は父にどんな言葉をかけるだろうか。少し想像してみるが答えはみつからない。おそらく胸がいっぱいになって、言葉など出ないだろう。
 
昔から自由気ままで、時に傍若無人な振る舞いで私たち家族を悩ませた父だが、今こうして酸素マスクをつけて意識を失っている姿をみると泣けてくる。家族を振り回してはいたが、その一方で、家族を力強く引っ張っていってくれた一面もあった。76歳になるまで強い父親でいてくれたのだ。私はそんな父に感謝した。そしてなんとしても父を病気から救いたい、と心の底から思った。それから2日後、母からまた着信があった。
 
「お父さんの手術はうまくいったよ、来週には退院だってさ」
「そっか、よかった、後遺症は?」
「今のとこ大丈夫みたい」
 
スマホから聞こえてくる母の声は2日前よりもいくぶん明るかった。とはいえ安心はできない。父は今も入院中で、退院後も当分の間は病院に通う必要がある。母は、父の様子を見るために退院までは毎日病室に行くという。
 
「入院している間だけでもタバコを吸わせないようにしないとね」
 
脳梗塞は血行不良が原因で起こる病気だ。喫煙で脳梗塞の症状が悪化すると聞いたことがある。確認のために厚生労働省のホームページから喫煙と血行不良の関係性を調べてみると……やはりそうだ。喫煙により脳梗塞のリスクが高まる、とある。
 
母は、この入院を機に父にタバコをやめさせると息巻く。もちろん正しいことだが、一方で現実的にそんなことが可能なのだろうか、とも思う。
 
母によると、父は18歳の時から喫煙を始め、今まで一度も禁煙したことがない。つまり、現在76歳の父の喫煙歴は約60年。実に半世紀以上にも及ぶ。そんな父にタバコをやめろと言ってもおそらく無駄だ。いくら注意しても、きっと不良中学生のように隠れて喫煙するに決まっている。万が一やめたとしても、結局タバコを吸えないストレスが父の体を蝕むことになる。ならばどうするか。
 
私が思いついた解決策はたった1つ、タバコの害を帳消しにするほどの栄養素を父に摂取してもらうことだった。
 
私はさらに喫煙が体に及ぼす害について調べた。すると、喫煙により血液がドロドロなり、体の中の大切な栄養素である各種ビタミン類が破壊されるという。だったら、野菜を多く食べさせたらいい。ところが体が求める栄養素を野菜から摂取するとなると、膨大な量の野菜を食べる必要がある。父の場合、それよりもさらに膨大な量の野菜が必要となるはずだ。どんなに上手に調理しても限界がある。
 
そこで私はあるサプリに目をつけた。世の中には数多くのサプリが市販されているが、私が目をつけたそのサプリは多種類の野菜の栄養素を特殊な製法で凝縮したもの。しかも、添加物や薬の成分は一切含まれておらず、いくつもの厳しい品質審査を突破したサプリだという。
 
価格は30日分で12500円。薬局で買える同様のサプリが1000円程度で購入できることを考えると恐ろしく高い。しかし、私はその価格に大きな意味があると判断した。父を救うためにはできるだけのことをしなければならない。私はすぐにネットでサプリの購入手続きを済ませ、2本入手した。
 
父の退院後、私は父の元を訪れ、なんとか説得して毎日サプリを摂取する約束を取り付けた。それに関しては母も協力してくれるという。その代わり、今後喫煙については一切何も言わないと約束した。
 
あれから約2年が経過、父は毎日元気に自分の会社に出勤し、社員の育成に力を注いでいる。もちろん喫煙生活も健在だ。
 
2年前のあの日以来、父は約束通り毎日欠かさずサプリを飲み続けている。最初は母が目を光らせていたが、2ヶ月ほどで毎日の日課となった。脳梗塞は再発しやすいため、退院後も半年ほどは病院に通って治療していたが、今では定期的な検査のために通うのみだ。治療も投薬で済んでいる。
 
病院での適切な治療が父を救ったことは間違いない。ただ、私の用意したサプリが、父のストレスのない喫煙生活を可能にしたとも思っている。きっと父との相性も良かったのだろう。何としても父を救いたい、その想いを持って行動したからこそ、私はこのサプリと出会うことができたのだ。
 
最後に、このサプリが万人に対して私の父と同様の効果を発揮するとは限らない、ということを付け加えておく。喫煙せずに済むならばそれが理想的だ。
 
 
 
 
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2023-07-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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