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写真嫌いな私が垢抜けてモデルになりました


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記事:山葵(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
「写真撮られるの嫌~!」
 
私は自分が写真に写るという状況をできる限り避けてきた。
避ける理由は単純明快。
自分の顔が嫌いだから!
 
 
自分の顔が嫌いだなんて言えば、生んでくれた両親に失礼かもしれない。
ごめんなさい。
でも嫌いなんだもん! コンプレックスの塊。きれいごとは言えない。
自分の容姿で嫌いなところを挙げればきりがなかった。
つり目、えらが張っている、おでこが広い、鼻が低い、背も低い、足が短い。
好きなパーツを探す方が難しい。垢抜けなんてどこから手を付ければいいのやら。
この顔を残すのが嫌で、写る必要がなさそうな写真撮影は全力で断り、撮影する側に回った。
 
その点、プリクラは最高だった。
大きくて困っている部分は小さくしてくれて、
逆に小さくて困っている部分はこれでもかと大きく加工してくれる。
あしなが効果もばっちり! 無加工の写真なんてありえない。
 
「これが本当の顔だったらな~」
原型をとどめないほど美化された自分(のようなもの)を見て言う、青春時代の口癖だった。
 
 
そんな私に悲劇が起こる。
 
「もしもし、大学の広報課の者ですが、あなたにオープンキャンパスのポスターのモデルになっていただこうと思いまして」
 
大学1年生の6月。突如1本の電話がかかってきた。
 
絶句した。
モデルとは対極にいる私がポスターモデルに?
冗談かと思った。
 
けれど広報課の彼女は本気らしく、強引に話を進める。
 
「それじゃあ〇日の17時に広報課に来てね」
 
なぜかもう私で確定している。よく覚えていないけれど、そのときの成績が学年上位だったからとかいう理由だった気がする。
断る隙を全く与えられず半ば強制的に、この醜い顔がオープンキャンパスのポスターに登場してしまうことになった。
もちろん、無加工で。
 
生きた心地がしなかった。
撮影中はみんな気を使って、素敵です! なんておだててくるけれど、そんなはずがない。
出来上がった写真は目も当てられなかった。
嫌いな顔が、でかでかとポスターサイズに引き伸ばされている。
最悪だ。上からプリクラを貼ってやりたかった。
 
 
悲劇はまだ続く。
撮られた写真はオープンキャンパスのポスターだから、色々なところで使われる。
学内に貼り出されるのはもちろんのこと、大学のホームページ、配布物。
いたるところに私がいる。入学を希望する高校生のためのオープンキャンパスだから、
地元の高校にもきっと大量に配布されただろう……。
 
極めつけは駅の構内。
用事があって電車で中心地に出たとき、顔から火を噴くほど恥ずかしい思いをした。
大きな駅の構内にある柱ほぼ全てにあのポスターが貼られているではないか!
ありえない。1枚でいいじゃん……。恨めしい。
毎日友達から「見たよ!」の報告が来る。ご丁寧にSNSに写真を載せて拡散してくれる人までいた。泣いた。
 
私だって本当はポスターに載ったことを喜びたい。自慢もしたい。
けれどあまりにも、容姿に自信がなかった。
 
「悔しい。どうにかしたい」
 
 
私はここで立ち上がった。
 
たまたま知り合いにカメラマンをしている人がいたので自分の写真を撮ってもらうことにした。
逃げていては一生写真が嫌いなままだ。
写り方を研究してやろうという企てだった。
 
もちろん初めは散々な写りだった。おそるべし、無加工の自分。
3枚に1枚は半目状態の、いわゆる事故画だった。
でも悔しい。その気持ちだけで何人ものカメラマンと撮影に行った。
いつも「撮影行きたくない!」と言いながら支度をしていたので、
当時お付き合いしていた人に「嫌なら行かなければいいのに」と呆れられるほどだった。
 
しかしポートレート撮影を始めて半年ほど経ったころ、
ある日の撮影で、今まで味わったことのない感覚を覚えた。
 
「今、私こんな風に写っている」
 
これまでそんなこと見当もつかなかったのに、その日は写真をもらう前からその絵面が手に取るように分かった。
 
そこからは急激に写るのが楽しくなった。
どう見られているか、どう写っているかが分かると、自分に合った表情や角度、お化粧の色味まで分かるようになった。自分の姿を写真というもので客観的に見返すと、美意識がぐんと引き上がる。写真を時系列順に並べると成長過程が一目瞭然で分かるのが、楽しくてたまらない。垢抜けのスタートラインに立てた気がする。
私は目まぐるしいスピードで写り方を覚えていった。
 
1年経つ頃には逆にカメラマンの方から、モデルとしての依頼が入るようになっていた。
月に10~15件も依頼が来るのが当たり前になり、1日に3件撮影する日も珍しくなかった。最近はミュージックビデオや展示のモデルも務めている。
 
 
いつの間にか、写真から逃げる私はいなくなっていた。
もうカメラを向けられても戸惑わない。無加工もどんとこい。
整形をしたわけではないから、私の骨格や目の大きさは何も変わっていない。
正直に言えば、好きになれたというわけでもない。
でも、クールな雰囲気にも可愛らしい雰囲気にも写ることができるという自信がある。
エラが張ってしっかりした輪郭も、小ぶりな鼻も、そのままの形を活かして写ることができている。
自分の写った写真が大好きだ。
私は私のままだけれど、すっかり垢抜けたねと言ってもらえることが増えた。
 
 
容姿にコンプレックスが全くない人なんて、ほとんどいないだろう。
しかし写真という媒体で自分の姿と対峙し続けてみると、
意外と、嫌いだったはずのそのままの自分を認められるものだ。
写った写真を見るたびに、もっと姿勢に気をつけようとか、こういう髪型にしてみようかとか、自分磨きの選択肢が山ほど湧いてくる。
 
写真は、自分がモデルだなんて絶対に無理だと思っている人にこそおすすめしたい垢抜け方法だ。
ぜひ、ご自身の姿の記録を、写真として残してみてほしい。
撮られた写真を見返したとき、その垢抜け具合にきっと驚くはずだ。
 
 
 
 
***
 
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2023-07-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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