メディアグランプリ

ノンアルコールでもしっかり酔える魔法のドリンクの話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:小城朝子(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
写真の美しい色のカクテルをご覧あれ。この一見、ワインに見えるカクテル、実はノンアルコール。名付けて魔法のカクテルである。
この魔法のカクテルを提供してくれるのは、どこを切り抜いてもアートになる街、青山にある、とあるフレンチレストランだ。
 
食べることが大好きで、エンゲル係数がK点超えしている私。アジやイワシといった光り物には興味はあるが、指輪などの光り物には全く興味がない。服にも、住まいにも、旅行にもお金は掛けないが、食にだけはお金を掛ける。
そんな「花より団子」で色気ゼロの私が、こちらのお店に行く時だけは「青山でフレンチでございます」とばかりに、少しだけオシャレをする。そして「この貧相な老婆に、美味と栄養を与えたまえ」との祈りを込めて、時々お邪魔するのだ。
 
こちらのお店の料理は、まさに神掛かっていると言っても過言ではない。しかし、このお店、神の世界から、さらに宇宙の世界へと繰り広げる離れ技を仕掛けてくる。
それが、ワインとのペアリングである。料理一皿、一皿に合わせたワインを出してくれるのだ。時には挑戦的に日本酒やビールを合わせてくることもある。
ここで出されるワインは、もちろん普通に飲んで充分に美味しいが、料理と合わせることでワインの味が全く別物になる。まさにマリアージュの真髄だ。
 
さらに、このお店、もっと凄いことに、なんとノンアルコールのペアリングも対応してくれるのだ。私の様に訳あって断酒中・禁酒中の人間、そしてアルコールが苦手な、お下戸様にとっては、正に救世主である。
勿論、フレンチのお供に、ペリエやサンペレグリノといったガス入りウォーターもいいのだが、私にはそれでは物足りない。私に必要なのは「なんてったって、レインボー」。公私共に干からびた干物女にとっては、色・カラー・彩りが何よりも重要なのだ。
 
公私に色はなけれども、せめて食には色を乞わん (作者 あさこ)
 
ということで、私は断酒をしてからは、常にカラフルなノンアルコールのペアリングをお願いするのであった。
 
シェフの繊細かつ奥行きの深い料理に、ノンアルコールのカクテルを合わせるのは至難の業ということは、ド素人の私でも分かる。
が、そんな4回転アクセル並みの神業を、華麗にやってのける一人の強者がいる。
オープンキッチンの中で、ひときわ異彩を放ち、サービスにカクテル作りにと、奔走する一人の男。韓流系の涼しげなイケメンが揃うお店の中で、一人だけEXILEを彷彿させるワイルドなイケメン。それがバーテンダーT氏である。
彼は私の息子と言ってもおかしくない若さなのだが、その気配り・会話のセンスから、私は密かに年齢詐称疑惑を抱いているぐらいの傑物だ。
 
T氏が生み出すノンアルコールカクテルは、時には華やかな蘭のごとく、時にはひっそりとカスミ草のごとく、時には情熱的なバラのごとく……。シェフの料理に寄り添い、変幻自在にマリアージュを生み出す華麗なる世界を繰り広げる。
カクテルのベースもフルーツ、野菜、お茶、ノンアルコールワイン……とじつに様々である。更にはコーヒー、はたまた、しいたけの出汁という飛び道具まで登場するので、何が何だか分からない。
その、絶妙なベースに、数々のスパイスやハーブを散りばめ、最後にT氏の愛を一滴加えカクテルが完成する。
 
そして一口、カクテルの雫を口に含むと、不思議なことに、カクテルの色からは想像もできない味が繰り広げられ、サプライズの嵐が起こる。あまりにも美味しくて、料理が出てくる前に飲み干しそうになることもあれば、正直、単体だと不思議な味のカクテルや、ほとんど味のないカクテルもある。
ただ一つ、共通して言えるのが、どのカクテルも単体で飲むよりも、料理と合わせることで何倍にも美味しくなることだ。そして、あまりの素晴らしさに、私の頭は、実りある稲穂のごとく、勝手に垂れてしまうという次第である。
 
料理もしかり。
もちろん、料理は、そのままで非の打ちどころがないのだが、T氏のカクテルと一緒に食することで、味がミラクルに変化する。直球ど真ん中のストレートが突然カーブしたり、ナックルのようにユラユラと煌めいたり、時には星飛雄馬の消える魔球も登場したり(どんな味だ?)、食べてうっとり、飲んでうっとり、食べて飲んで更にうっとり、口中に魔法の世界が広がるのである。
 
更に驚くのが、T氏曰く、すべての料理を試食しているわけではないということだ。
このお店は、直近のリピーターのお客様には基本的に同じ料理は出さないという、とてつもないハードルを自ら課す超ドМのお店である。故に、T氏もすべての料理を試食することが不可能なのである。
 
食材・調理法を聞くだけで、それに合わせたカクテルを紡ぎだす。これが魔法でなくて、何と呼ぼう。アメージング、イリュージョン、思いつく言葉は色々あれど、昭和の私はやはり「魔法」。
そして、T氏の魔法から繰り出されるカクテルは、ノンアルコールなのに、その味と色彩で確実に私を酔わせてくれる。メインを食べ終わる頃には、T氏の魔法のカクテルに酔いしれフワフワと幸せに満ち溢れるのだ。そして、最後にデザートと濃い目のブラックコーヒーで、魔法が少しだけ解け、お店を後にする。
 
でも、どうせなら最後まで酔いしれたままお店を出たい。そこで、先日とんでもないリクエストをした。
「次回は、デザートにもカクテルを合わせて下さいね」。
ワイルドイケメンのT氏の顔が放送事故になった。
 
デザートと魔法のカクテルのマリアージュ。
経験したことはないが、想像するだけでうっとりとする。T氏が、したり顔でデザート共にカクテルを出してくれることは間違いない。宇宙の世界へ導いてくれることも間違いない。
次にお店に行くのはいつにしようかと、夢の世界を繰り広げ、既に魔法に掛かった中で手帳を眺める。
そして、今、口いっぱいに頬張っている、うまい棒の明太子味に合うカクテルを作ってくれとお願いしたら、どんなカクテルが出てくるのだろう……。
そう思うと魔法が笑いに変わった。
 
 
 
 
***
 
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2023-08-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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